EPISODE2-2
人知れず山奥の、さらに幻術に守られた森の中に、巨大な西洋作りの城が建っていた。
大きさからも、その見た目からも城といっても申し分ない建物である。
その中は、巨大な入り口を抜けると、広いじゅうたんの敷かれた広場のようなところがまず現れる。
それはさながら映画に出てくるような作りになっていた。
二又に分かれた階段を部屋の両側に備えている。
その階段を上りさらに奥へと続く廊下を2人の壇上は歩いている。
廊下は幅5メートルほどの広さで、その両側には壁に不気味な灯火が灯されていた。
迷路のように複雑に入り組んだ廊下を2人はなんの迷いも無く進んでいった。
女の容姿は美しく、ブロンドの長い髪を揺らし、細い右手にはシルバーの腕輪がはめられていた。
彼女の放つ独特の冷たいオーラを横に携え歩く男は、中年の男で死んだはずの男の顔をしていた。
「それで、今回主様のシュバリエであるお前が出向いた用事はなんだったんだい?杉下せんせ。」
わざとらしく男に言った女は、男のその姿に不快感を覚えた。
それを気にするでもなく、杉下と呼ばれた男は隣を歩く女の問いにどこから答えるべきか悩んでいた。
「刻印を刻む土地を調べていたんだ。」
「そんなことは分かっているよ。今さらあんたが出向く必要はないだろう?」
男の答えに不満げに女は続けた。
「3年前の生き残りがいたんだ。それを見に行っていた。と言う方が正しいのかもしれんな。」
男の口からでた"3年前の"という単語に、女は大げさすぎるほどの同様をあらわした。
2人にとっても、3年前の事件は苦い思い出でしかなかった。
すべてのプロセスは完璧であった。
にも関わらず、計画は失敗に終わった。
「それで?その2人をどうしたんだい?」
思わぬことに不満をあらわにした口調で、男に詰め寄った。
「殺してはいないさ。それは俺の信条に反する。やるなら来るべき時にやるさ。」
2人は見た以上にながい廊下を歩きながら、話し続けた。
廊下には2人の歩く音だけが響き渡り、それ以外は静寂に包まれていた。
「今度の計画に失敗は許されない。それだけは覚えておきなさい。」
「ああ、分かっているよ。それで、実行は何時ごろになりそうなんだ?」
「主様の体調しだいだが、冬までには行われるさ。」
女の言葉を最後に、2人の間に言葉は交わされることは無かった。
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「ま、ええわ。俺はお前とやりあうことだけに興味があるんや。」
西野は不意に厳しい表情を崩した。
椅子に座りなおして、琥珀に背を向け外の景色を眺めながらお茶を飲んでいた。
琥珀のほうからは彼の表情は見えなかった。
「俺にはあなたに勝つ以外の選択肢は無いわけですか。」
その言葉を聞いて、西野は満足そうな顔を琥珀に見せた。
「そうや。本戦でまってるから、くれぐれも予選なんかで負けるんやないで。」
その言葉を合図に、2人は会話をすることを辞めた。
昼食がまだであることを琥珀が思い出し、早々にこの部屋から辞することにした。
ドアを開けて、再び西野に身体を向けて一礼した後教室に戻っていった。
部屋に1人取り残された西野は、次なる客人の到着を待ちわびていた。
外の桜を見つめつつ、お茶を飲んで。
待ち人は思いのほか早く到着した。
「よお、さっちゃん。わざわざ呼んでもろて悪かったなー。」
へらへらと笑う男に、さっちゃんと呼ばれた少女は怒ることを通り越して呆れてしまった。
手近な席に腰を下ろして、男に向けていつものセリフを言うことにした。
「私のことをさっちゃんと呼ぶのは会長だけですよ?」
聞きなれたセリフをBGMに西野はまたお茶を飲んだ。
「それに、さっきの冴原くんは私のことを会長だと勘違いしてますよ?」
「いいやんか。それだけさっちゃんに会長がにあってるってことやで。」
またへらへらと笑って、少女の方を向いて答えた。
少女は再び呆れて、それ以上男に何かを言うことは辞めた。
そして、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴るまで、2人は何も話さず外の景色を眺め続けた。
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琥珀が教室に着いた時には、時計の針はすでに昼休みが終わる10分前を指していた。
自分の席に座ると、かばんの中から朝のうちに買っておいたパンを取り出した。
袋をあけ、ぱんを口に運び始めた。
教室に居た、明と東条は琥珀の帰ってきたのを見ると近くに行った。
そして明がすぐに疑問を口にした。
「何の用事だったんだ?何かしたのか?」
「いや、何もした記憶が無いのに疑わないでくれ。ただ西野という先輩に闘技大会に出るように言われたんだ。本戦で戦うためにな。」
そう言って、手にあるパンを再び口に運んで租借し始めた。
琥珀の発言に、2人は動揺を隠せないようだった。
今度は東条が問いかける番だった。
「西野って、3年のあの西野先輩だよね!?」
東条の言葉には、憧れと不安がミックスされていた。
その様子を見た琥珀はどういうことかわからなかった。
「東条さんのいう"あの"西野って人かはわからないが、たぶんその西野だろう。」
同業者ならば、学園内でも多少有名であってもなんら疑問ではない。
と琥珀は考えて、結論を下した。
その言葉を聞いて、2人はさらに驚いた様子になっていた。
「どういう繋がりがあってそういうことになるんだ?」
明の問いかけにどう答えるか迷ったものの、昔のこともあり2人には申し訳ないと思いつつ誤魔化すことにした。
そして、生徒会室から教室までの歩いて戻ってくるまでの間に考えておいた理由を話すことにした。
「俺にはわからない。もしかしたら何か気に障ることでもあったのかもしれないな。」
そう言って、食べ終わったパンの袋を丸めてゴミ箱に向かって投げた。
ゴミは一直線にゴミ箱に向かって飛んでいった。
二人はそれで納得したのか判断がつかなかったが、とりあえず気になることを聞いておくことにした。
「そんなことより、交流戦ってどんなものなんだ?」
明が初めに説明し始めたが、どうにも要領の得ない話し方で理解しずらかった。
そこで明に代わって、東条に説明してもらうことになり、要約するとこうだった。
交流戦は毎年4月の入学式の2,3週間後に開催される。
全校生徒は1人1競技以上の参加が義務付けられている。
その競技は、闘技大会を除いては
4大属性の特徴を生かした競技が行われることになっているそうだが、毎年当日まで内容が発表されない。
そしてもうひとつ。
闘技大会では毎年けが人が続出で、ひどい年には死人まででるそうだ。
「それで、明と東条さんはどの競技にでるんだ?」
「俺はもちろん"土"属性が存分に生かせるところだ。」
先に答えたのは明だった。
東条は明の横で少し悩んだ様子を見せて
「私はまだ決めてないんだ。」
「そっか、じゃあとっとと決めて、放課後にでもエントリーしに行こうぜ。」
明のそのことばで、その日の放課後にエントリーに行くことになった。
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午後の授業もすぐに終わった。
相変わらず琥珀にとっては退屈な授業でしかなく、終始外の景色を眺めていた。
授業が終わるや否や、明と東条が琥珀の席までやってきた。
「東条さんはもう競技決めた?」
そう話しかけた琥珀の言葉に、少し不安げに
「うん。私"水"の競技に出ようかなって思って。」
「そっか、東条も決めたのか。ならさっさとエントリーしに行こうぜ。」
そう言って3人でエントリーするために、受付がある実行委員の教室まで行った。
そこには空と泉も来ており、一緒にエントリーすることになった。
空はもちろん"火"の競技で、泉は登場と同じ"水"の競技に出ることになった。
競技日まであと1週間
お久しぶりになってしまいました。
ここ最近は過去に投稿したものの修正してました。
あらためて見るとすごい誤字脱字でした。
読んでくれた人、すみませんでした。
以後気をつけます。
それでは~