表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/42

EPISODE 1-1

「…く、…こ…く、お…きて。こ〜は〜く〜!朝だよ!」


「…さ、寒い…」


まだ4月ということもあり、肌寒い。

いや、むしろ寒いと言ってもいいぐらいだ。


「もう。琥珀もすぐ起きてよ。ほら朝ごはんだよ。」


「もう少し起こし方ってないのか?いきなり布団を取ると寒いんだが…」


と文句も言っているうちに空はそうそうにリビングに行ってしまった。


「さて、俺も用意しないとな。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「遅いよ、琥珀。早く食べないと間に合わないよ?」


「そういうセリフは待ってるやつが言うセリフだ。いただきます。」


毎朝朝食を空が作ることになっていたので、今朝もそれを食べる。

最初こそ人が食べられるようなものではなかったが、今では立派なものだ。

日々の楽しみになりつつある。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


食事を終え、空と共にこれから通うことになる学び舎に向かう。

これから3年間空と一緒に通うことになる国立魔法学園

高校ということにはなっているが、実質は魔法の習得がメインになっている。

高校としての役割はいわばおまけである。


2人は学園に着くと、まずその大きさに改めて驚いた。

試験の時に訪れていたが、いざ通うことになって見てみると驚くほど大きかった。


「体育館はどこだ?」


琥珀と空は入学式が行われる体育館を探し始めた。

あまりにも校内が広く、体育館ひとつ探すのも一苦労だ。

研究棟や、特別教室の部屋が多くあり、空は楽しそうに歩いていたが、琥珀はこの広さにいいかげんうんざりしていた。

探し始めて10分ぐらい歩き回って、やっと目的の建物を見たとき驚きよりもまずほっと一安心した。

次にまた体育館の広さに驚いた。


「じゃあ、私は挨拶しなきゃいけないから行くね。」


空は琥珀に手を振って、近くにいた教師らしき人に話しかけていた。


(疲れたし、さっさと座ろ。)


手近にいい席を見つけたので、琥珀はそこに座ることにした。

まだ時間も十分にあったので、ポケットから携帯端末を取り出してニュースなどを見始めた。


「ん」


気がつくと体育館も大勢の人で席が埋まってきていた。

(もうすぐ始まるな。)


手の端末をポケットにしまった。

一度伸びをして座りなおした。


「隣、いいか?」


突然話しかけられて、声の主を見る前に答えた。


「どうぞ。空いてるから。」


(少しそっけなかっただろうか?)



「さんきゅ。俺、三島明ってんだ、よろしくな。」


そう言われて初めて顔を上げた。

明は琥珀のそっけない態度を気にすることも無く続けざまに話しかけた。

(なんと言うか…ワイルドな奴だな)

背は高く、180は余裕でありそうな身長と、ごつごつした体が特徴的で、肌の色も少し浅黒かった。


「…冴原琥珀だ。」


とりあえず名前は名乗っておいた。

そうしているうちに入学式は始まった。何年たっても、どれだけ年月を経ても校長の話とは長いものだ。

そんなくだらないことを考えていたら、ふと聞いた声が聞こえてきた。


「なぁ。」


となりの、三島から声をかけられた。


「今スピーチしてる奴って新入生代表だよな?」


空に目線を移してから


「あぁ、そうだな。」


「すっげぇかわいくね?」


「…ん、そうだな。どちからと言えばそうだと思う。」


元気よくスピーチをしている空を見た。

周りの男子が少しそわそわしているようだった。

それは琥珀の気のせいかもしれないが。


「お前って理想高いな。十分すぎるほどかわいいだろ。」


(相変わらず空は男子にウケのいい奴だな。)

こんなことも相変わらずである。

背はそれほど高くなくて、160ぐらいで、髪の毛はセミロング程度の長さで下ろしている。

顔立ちも整っていて、しかし年相応の幼さも残っていた。


「三島はタイプみたいだな。」


「明でいい。そりゃあんだけかわいけりゃ誰だってそうだろ。」


「おいそこ、静かにしないか。」


しゃべっていた俺と明は近くの教師に怒られた。

空は目線を少しこちらにやっていた。

式が終わるまで俺と明は一応怒られた手前、静かに座っていた。

それは必ずしもまじめに話を聞いていたとは言えないが…


「よっし、琥珀行こうぜ。」


明の声を合図に立ち上がった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「琥珀のクラスはどこだ?」


「Fみたいだ。明は?」


「俺もFだ。どうやら俺たちは落ちこぼれみたいだな。」


そう言って明は豪快に笑った。

琥珀にだけそう見えただけかもしれない。

(ワイルドだな。)


「琥珀!」


名前を呼ばれて振り向くと、空が走ってきていた。


「おっ、おい琥珀。あの子と知り合いなのか!?」


隣で明が焦っている。

今にも額から汗が出そうだ。

(見かけよりシャイなのかもしれないな。)

琥珀は明に対してそんなことふと思った。


「あぁ、空か。あいつは幼馴染だ。」


「くっそ〜、なんだその18禁ゲームのような設定は。」


本気で明がうらやましそうな目をしている。

明はそんなゲームをしているのか、という疑問を口に出さずに空に向かって話しかけた。


「どうした、空?」


「どうしたじゃないよ。琥珀は何組だった?」


「ん、予想通りFだった。空はSだろ?」


「えっ、違うクラスなの!?なんで!?」


(なぜ空が驚いているんだか。)

明は隣でジトッとした目で見ている。

それに気が付きながらも、気にしないように空に話続けた。


「なんでも何も、実技がダメだったからに決まっているだろう?」


(何をいまさらそんなことを。)


「だって琥珀は…」


「空、早く行こう。明も行こうぜ。」


「おう。あっ、俺は三島明だ。よろしくな。」


「あっ、うん。一条空だよ。よろしくね。」


どうやら二人はうまくいきそうだ。

廊下を歩きながらそんなことを考えていた。

明はその持ち前の明るさが存分に発揮されていた。


「なぁ、琥珀。空ちゃんの笑顔がまぶしすぎる…」


こっそり明が話しかけてきた。


「明はバカなんだな。」


はっきりと言い切った。

言い過ぎたかと明を見たが、聞いちゃいないようだ。


「じゃあ私はここだから。」


教室の前で空が話しかけてきた。


「わかった。がんばれよ」


「琥珀もね。帰りは門のところにいるから。」


そう言って空は教室の中に入っていった。

空のことだ、すぐに友達もできるだろう。


「琥珀…なぜ一緒に帰る約束を…」


「ん、まぁ家が近いからな。」


あながち嘘ではない。

だがまったくの真実ではないが、今は黙っておこう。

今の明には危険すぎて言えない。


「くそぅ、俺にもあんな幼馴染がいれば…」


(まったく、何を考えているんだか。)


「おっ、ここみたいだぜ。」


校舎の階段を2階上り教室に着いた。

空は1階だったから、どうやら1階がS、2階がA、3階がFということのようだ。

落ちこぼれは苦労しろってことか。


「20人か、少ないな。」


明はそう言ってから自分の席を探し始めた。

(確かに明の言うとおり、20人は少なく感じられた。

他のクラスはもう少し多いのだろうか。)


冴原と言う名前のおかげで一番窓側の席になった。

どうやら三島は、最前列のようだ。

(運がないんだな。ご愁傷様な奴だ。)

琥珀は明に対して勝手に判断していた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「…話は以上だ。明日からは授業があるから気を抜かないようにな。では解散だ。」


初回というだけあって、簡単な自己紹介や諸注意で終わった。

帰るか。空を待たせると大変だからな。


「琥珀、帰るのか?」


「明も一緒に帰るか?」


「マジで?もちろんだよ!」


(すごい笑顔だな。

そんなにうれしいのか。

誘ってよかったかもしれないな。)

明の顔は誰が見ても分かるぐらいに晴れ渡っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ