第 九十五 話
「アキ、お父さんはね、自分が誰だか分からなくなってから、助かるということを信じられない部分も、あった。悪魔が私を闇の世界から出してから、バスの用心棒の記憶がぼんやりとだけ、あったから。仕事の情報を取って来て、これならというとこで傭兵をやっていた。
しかし、これなら、なんて言っていても、誰が正しいかなんて、お父さんは今のところ、分かっていないかもしれない」
「分かる…」
お父さんが、不思議そうな目で、私を見ていた。いつか、お父さんの生き方が否定されるかもしれない。でも、今だけは…今しばらくだけは正しかったって、伝えたい。
「アキ…」父は、回数多く、瞬きをしながら言った。ドキドキ、しているのかもしれない。
「お父さんが、必死で、何が正解か分からなくても、明日を生きようとしていたこと」
手で顔を押さえながら、父は「私は、弱いんだ。アキが、思っているような父親じゃない…」
「そんなことないよ。私が、お客さんのお婆さんに黒い玉で攻撃された時、記憶がないのに、守ってくれた。それに、お父さんの闇の世界の入口は、ある気配はあったけど、開いてはなかった。
充分、強い部分もあるよ」
続く
何が正しかったかより、自分がどう行動したかが、胸を張って生きられるポイントになるかもしれない。




