第 九十一 話
「えっ、アレッ?影って、何?」私は、よく分からなかったので、聞いた?
「影というのは、悪魔の触手のようなものだ。
闇の世界もうっすら明るいんだ。まあ、周りの人がそこそこ程度見えるぐらいに。
茶色と紫が混ざった部分も見えるが、白く光る、コウモリがいるんだ。
とにかく、悪魔の世界から闇の世界にいる人間の影に指の触手を伸ばして、暇潰しになるようなことは、ないかと探しているんだ」
「何で、お父さん、そんなこと分かんの?」私は、はっきりと父であることは、認めた。ただ、知っている情報が怪しいけど。
「目の前に現れたから、悪魔が」
お父さんは、たった今、思い出しているみたいに、話した。
「悪魔は、言ったんだ。
〈暇だから、遊ばせてもらうよ。触手で影を読み取った。お前は、闇の世界に来ても、希望を忘れないでいる。
そこで、お前とお前を知っている全ての者から、お前がお前であることを分からないようにしたら、どうなるだろうな。もちろん、この記憶も誰かが本当の正体を見破るまで、思い出せないように記憶の隅に閉じ込めさせてもらうがな。
俺は、本来の自分を忘れている人間をずっと、見ていたいんだ。俺たち、悪魔と同じ存在をな。
そして、希望の想いが消えるのを見て、力を増幅させたい。まあ、失敗したっていい。
お前は、悪魔の遊び道具なんだからな〉」
「何、それ。酷い」
「人間の父上と悪魔のジャビコの子、トキノジョウが生まれた時。人間の世界で悪さをしていた悪魔たちは、神の力に似た強力な、希望の力が一緒に生まれたので、恐ろしくなって、悪魔の世界から、ほとんど出ることがなくなったんだ。
アキのお父さんは、悪魔が興味をもつ程の、希望の心をもっていたんだな」ハルトは、感心した風に言った。
続く
トキノジョウが生まれた時、一緒に希望も生まれていた。そして、化物人間が現れるようになった。一緒に希望も生まれていたのに、それが切ない。




