第 七十四 話
だけど、このままだとハルトは、キヨカの仲間を見殺しするみたいなことになってしまう。それが、現実。だとしても、やっぱ嫌だな。
ハルトにそういう風なこと、させるの辛いな。それは、私がハルトのことを特別に好きだからだろうか。それでも、それを嫌って、今、思っている私も現実じゃないか…。ハルト…。
その時だった、道に出ていた私たちに、ビュッオゥー。突風が、びっくりするぐらいの勢いで吹いてきた。どこからか運ばれて来たのか、土煙が立つ。
すると、キヨカが「皆…」
土煙から出てきたのは、内部調査官のキヨカの、仲間たちだった。
な、何で、こんなことが…。私は、ドキドキして身体を震わせた。
それを見たハルトが「アキ…」と私へ呼び掛ける。
「アキがやったのか?」ハルトが聞く。
「分からない…」
魔法を使っても、誰が使ったのか分からないこともあるんだ。と、私は思った。
ただ、右肩が凝っている。何か、疲れた感じだ。
ハルトが、「もっと意識して…。これは、転送魔法だ。機械の力を借りた、転送装置なしで出来るなんて…。アキ、手を意識して。
手から、俺が働いている時に着けているエプロンをお店から出してみてくれ」
「えっ…。出来るかな…。んっ、よいしょっと」私の前に、両手がちょっときつめに入る程度の、細かい鏡を貼り合わせたような筒のような空間が現れた。
「うっわ、ええっ!!」それを見て、皆驚いている。
鏡は、凄く細かくなったり、ある程度の大きさに自然な感じでくっ付いたりしている。奥の方は暗くて見えない。
手前の方の鏡にハルトが映っている。映す法則を無視した鏡だ。
ハルトを、何だか盗み見しているような気がして、ちょっとドキドキとした。
その空間に手を突っ込み、ハルトのエプロンをイメージする。
続く
キヨカの仲間たちを救った、この魔法は偶然使えた、奇跡なのだろうか?それとも、使いこなせる魔法なのだろうか?




