第 七十三 話
さっきまで怒っていたハルトに気を遣うように、離れていたジヤタは驚いて、私を見た。
「僕がいても、大丈夫なんですか?僕、裏切るかもしれないですよ」
「いいんだよ。こっちには、もうトツタもいるしな」そう言って、ハルトは愉快そうに笑った。
「と、なると、キヨカは大丈夫かな…?」
私は、今度は内部調査官のキヨカが心配になった。
「そこは、明日まで自分で何とかしてもらうしか、ないな。
いや、待てよ。監視するヤツらは、ずっと俺たちを見ているのか…」
ハルトは今、気付いた風な感じで、店の外の方へと、向いた。そして、外に行き、大声を出した。
「キヨカ!!いるんなら、ここへ来てくれ!!」
しばらくすると、キヨカが出てきた。
「何でしょうか…。って、まあ、もう分かってはいるのですが。アキ様が、キュウジロウ様に、話しているのを聞いていたので」
キヨカはハルトの監視の方に、いたのかな?
「キヨカ…さん。大丈夫ですか?」
「キヨカでいいですよ。私は、アキ様と、呼ばせてもらいますが。
私は、城に帰ります。時間が来たら。他の仲間の内部調査官が、監視の交代をしているんで。身が、心配です」
「諦めろ…。仲間のことは…」ハルトが、言った。
「そ、そんな…」
「内部調査官なんて、大変な仕事の役職に就いていて、そんな覚悟もないのか…」ハルトは、容赦ない感じで、厳しく言った。
「……」
キヨカは何もしゃべられなくなっている。確かに、こういう役職に就いている人は、そういう覚悟がある人というイメージがあるけど。そういうことで、割りきれないのが、人間なんじゃないだろうか…。なるべく仲間を助けたい。そういうのが、出てしまったのだ。キヨカは…。
続く
ハルトは、嫌な選択をした。
しかし、ここでキヨカを帰したら、キヨカまで危険なのだ。
仕方ない選択の時も、ある。




