第 六十八 話
「そんなの、暇つぶしに決まっているじゃないですか…ハハハハハッフッハッヒャッ」
「ひ、暇つぶしのためにこんなことを。そ、そんなの、あんまりだよ。本当に、酷い」
「ちょっと。本当に、酷いってどういう意味ですか?僕は、国王の政治を邪魔する人を本気で、現実的に真面目に人殺ししようとしているだけですよ。
ふざけないでください」
「ジヤタ…。本気で、言っているの?」
「僕は、本気です。僕は、僕なりに、この国に貢献しようとしているだけですよ。暇なんでね。
でも、真面目です。真面目に、人殺しです」
「オジさんの国政審議機関長は、どういう考えで動いてるの?」
ジヤタはしばらく無言になった。アレコレ思い浮かべて、整理をしているようだ。イメージがまとまったのか、ジヤタは話した。
「叔父は、お金のことしか考えていません。それが、僕には嘆かわしいんですけど。だから、その分、僕が正しいことをしようとしただけです。どこかおかしいですか?」
「な、何で、そんな、お金のことしかない機関長の考えのやり方を、取り入れたの…?」
「えっ?」
急に、ジヤタの顔が青ざめたように、私は感じた。
「だって昔、お金のこととかでお世話になったし。お世話になったなら、お返ししなきゃ、酷いでしょ…」
「私が、殺されるのは、いいんだ…」
「アキさんが殺されるのは、お気の毒ですけど。…自業自得でしょ。無茶苦茶な話ですが」
「ほら、今、言った。無茶苦茶って。酷い」
すると、ジヤタは段々、顔が険しくなった。
「うわ――っ!!」ジヤタは着ている上着を、地面に叩きつけた。
「僕だって、そりゃ、本当はアキさんの方が、正しいと思ってますよ。そうだ。そうです。僕は、ただ叔父に借りを返したかっただけだ」
ジヤタは、頭の毛を掻きむしって、自分の顔を、まるでこの現実にいるのは自分なのかを確かめるように触った。
ジヤタは、さらに、しゃべる。
「借りたままじゃ、気持ちが悪いから。僕の家は、昔、叔父にお世話になったから。僕の家の人間は、性格の悪い叔父に頭が上がらなかった…。
そのままじゃ嫌だったから。もっと、対等な関係にしたかっただけだ。ただ。
そのために、僕は人殺しを、しようとしたんだ、僕は」
続く
ジヤタは、国政審議機関長に借りを返したいだけだった。きちんと、冷静に物を考えないといけない。




