第 五 話
「ハルトは、魔法使える人だったんだね」
私は仕事が終わって帰る用意をしながら、ハルトに話し掛ける。二人で、最後の片付けをしたから、他の人も、いない。
「出来る魔法は、限られているけどな」
ハルトは、堅い表情で言った。
もっと、嬉しそうに言えば、いいのに。いや、どんな感じでも苛ついてしまうのか…。
私は、堪らない気持ちになった。この、少年には分からない。私の悔しさなんて、きっと想像出来ないんだ。
そう思うと、なぜか悲しくなった。
「ハルトは、なんでここで働いてるの?魔法が使えるならもっと、給料が良くて安全な仕事選べるんじゃないの?」
「…ここの……」
何か、このお店にあるんだろうか?私が知らないこのお店の秘密が……。
「…何?」
「…ここのお店、味がいいから、賄いも美味しそうだろ!」
ハルトは、ハルトであった。のん気だ、ちょっとホッとしたけど。
「確かに美味しいけど」
「だよなっ」
私は、少し気になっていたことを聞く。
「ここのお店、他に魔法を使える人は?」
ハルトは、「うーん」とちょっと考えて、
「いることはいるけど、俺が一番使えるかな。何で、そんなこと聞くんだ?」
ハルトは、もっともな疑問を、言う。
「それは、このお店で働くから。化物人間にどの程度、対処出来るか気になって」
「化物人間か…」
ハルトは目をつぶって化物人間について、色々と考えている様子だ。悪魔より人間ぶって、厄介な相手だなって、思う。ハルトは、何を考えているんだろ?
「まあ、大丈夫。俺は、負けないから」
私は、ハルトを頼もしく感じた。あの客が襲った時、素早く動いて何とかしてしまったんだから、大丈夫かもしれない。
「今日の戦い。枝を大きくして操作する魔法を使ってた。それから、かなりの高さまでジャンプしてた。あれも、魔法の力?」
「まあな…。アキは魔法使えないのか?」
嫌なことを、聞かれた。
続く
この世界の魔法は、どんな存在なのだろうか?




