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第 四十四 話

「〈子供の時のあたくしは、皆から嫌われ、たくさんの人に笑われました。

 何が、いけなかったのでしょうか?

 そもそも、親の性格が嫌らしかったのです。

 父は、人に憎まれ、(ののし)られてもヘラヘラ笑って、その人が二度と笑えなくなるくらいの悪さをして、最後は理由を付けて、殺すような人でした。他人の不幸が、楽しかったところがあったそうです。殺すのも、結構正当な手段と考えていました。それは、あたくしも引き継いだとは、思いますけど。

 とにかく父は、他人を不幸にするのに忙しい人でした。

 その、当時の国王は民のためを想って政治をする民衆にとって、特に普通より優れた国王だったといえます。しかし、あたくしの父の大臣は、その良さを無しにするぐらい酷い大臣だったのです。

 あたくしも、人のことをそんなに言えませんが、それでも酷い大臣だったと思います。けれど、自分の敵をいなくなるようにするのが、上手かったので、そういう意味で、大臣になれたのです。

 そして、母は、ただただ、楽しければ良い人でした。

 とにかく、あたくしは小さい頃から、親からほとんど構ってもらえなかった。まあ、世話をしてくれる使用人はいっぱいいましたけど。

 それで、自分が何をすればいいのか分からず、ぼんやりとしている子供でした。だから、他の貴族の子と遊ぶ時も、ぼんやり皆の様子を見ているだけで、何もしませんでした。それを貴族の子の保護者や周りの人が見て、笑い、それを見た子供たちも段々笑うようになったのです。

 まあ、しかも親が理由で、自然に保護者たちから表面的には優しくても嫌われ、その子供たちにも嫌われました。

 そんなあたくしも、化物人間を、醜くて、迷惑な存在だと、五、六歳の頃に思い、大事な目的が出来ました。『化物人間が住めない世界にする』という。そのために、邪魔な者を殺すのです。どうです、美しい殺意でしょ?〉

 俺は、何も言えなかった…。

 身体が、弱っていたせいも、あるが。

〈そして、最近になって、キュウジロウ王子、あなた様が城へと帰って来た。

 あたくしは混乱しました。その混乱が手下たちにも伝わったのか、キュウジロウ王子を毒ではなく事故に見せ掛けて殺すアイディアを手下があたくしに持ち掛け、あたくしも咄嗟(とっさ)に乗ってしまいました。あたくしが華麗な毒を選ぶ予定がまた、狂ってしまったのです。そのアイディアを出した手下を殺して、もう大丈夫だろうと安心しましたけど〉

〈可哀想だ、手下が。酷い奴め…〉

〈ハハハッハハッ。優しいですなキュウジロウ王子は。あなた様を殺そうとした者に〉

〈クッ…〉

〈結局、計画が本当に、狂いに狂った結果、あなた様はこの部屋へと来てこの毒を飲んでしまったのです〉」



            続く

酷い、環境。それでも、温かい人が側にいれば大臣だって、もしかすると……。

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