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第 四十三 話

「〈こうして、年の離れた毒愛好家の友達が出来ました。

 あたくしは、知らなかった本を読んで知識を溜め、毒をネズミで試して、毒を使う練習をしました。

 その友人の名は、トルヤといいました。

 トルヤのお陰で知識も、実際に毒を使うイメージもしっかり出来ました。そして、トルヤは毒の密売をしてくれる人も教えてくれました。

 それで、そうしているうちに毒関係の友人、知人が出来ました。トルヤより、凄い書物を持っている者も何人かいました。そして、その人たちに共通していたのが、皆、後ろ暗い犯罪を犯していることでした。それで、トルヤよりも酷い犯罪を犯していた人は八十人程いる友人、知人の中、十人ちょっといました。

 今は、それから五十年ぐらい経ってますから、四倍ぐらいいますけどね。

 トルヤと出会って十年ちょっとの時、あたくしにとってトルヤは、最早、邪魔になっていました。もう、書物を読む場所や実験する場所も何ヶ所もありましたし、もっと人に知られにくいやり方で家などを訪ねる手を使うようになっていたからです。

 なので、丁度、家の中の物が残らずに、燃やし尽くす薬品があったので使いました〉

 俺は、この大臣を虫が好かないという理由で、殴りたくなった。人の命を落ち葉程度にしか考えていないのだ、この完全に狂った男は。

 キュウサブロウは、話を聞いている途中で尻餅をついて、口を開けたまま、固まってしまっていた。

 そりゃあ、自分の祖父がこんな酷いことをしていたら、ショックでこうなるだろう、普通。

 もう、怒りが出てきても、何とか耐えるしかなかった。自分が、どんどん弱っているのを感じていたからだ。…時間が、ない。

〈トルヤは、トルヤの家は、綺麗に燃えてしまった…。あたくしは、すっきりするのを感じました。

 トルヤは、殺人を犯してしばらく、調査官に怪しまれていたそうなのです。しかし、特にこれという証拠もなかったようなので、直ぐに調べの対象から外され、自殺ということになったけれど。

 ちなみに、殺した上司の妻も、少し本能的にちょっと何かを感じたのか、トルヤのことをお葬式で睨んだ瞬間があったそうです。何も、分からないようでも、少しは何かを感じたりするんでしょうな。それっきり、何も起こらなかったそうなので、結局、何も分からなかったのでしょうけど。

 それでも、ちょっとは危なかったのです。

 そんな、完璧じゃないトルヤを殺すことで、凄く安心出来たのです。後、トルヤのことですが、あたくしの『国王操縦のための計画』とは全く違う殺人ですから、毒殺でなくても良しということにしました。

 そして、予定通り、この事件は、魔法薬学の研究者であるトルヤが、薬品を家で取り扱っていて、うっかりミスを犯したということで、調査は打ち切られました。

 こうやって、あたくしは、知られるとまずい人間には、毒の知識がたくさんあるのを知られずにすんだのです〉

〈おい、大臣…。何で、お前はそんな人間なんだ。子供の時、何があった…?〉

 俺は、このまま、この大臣が、意味分からない人間というイメージのまま、知らずに死ぬのは嫌だった。どうせ死ぬなら、聞いてから、死にたいと思った。



          続く

大臣は、なぜ、こんな人間になってしまったのだろう…?

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