第 四 話
客は、ハルトを追い掛けていく。
ハルトは、客が近づいてくると、離れ、また近づいてこられたら、上手く離れている。
ハルトは、「お客さん、あんまり、おふざけになるのはよしてくださいよ」とか、「そんな風なことをやっても、人生の何のプラスにもなりませんからね」といったことを言って、上手く逃げている。
「黙れ。お前を必ずや闇の世界へと、連れて行ってくれる」と、男は怒りの言葉で攻める。
とうとう男は、走り出した。
ハルトはエプロンの、深いポケットから巾着袋を取り出し、中から手のように枝分かれをした手みたいな枝を出した。
ピョイ――ンッとハルトはジャンプをした。かなりの高さまで跳ぶ。テントの天井近く辺りまで、跳んだ。枝を落とすと、それが巨大になった。枝の切断部分の方に、ハルトはピョイと乗る。枝の手で、客を掴む。「グッワーッ」男は思わず、呻き声を出した。
「クッ。だがお前を、この腕を伸ばせば、闇の世界に落とせる」
ハルトは、緊張の高まった顔になる。
ハルト大丈夫なの?私が心配した次の瞬間、ハルトは平気そうな顔をする。
「伸ばしてみたらいいんじゃないですか?その瞬間、お客さんの腕は、枝が伸びて巻き付かれますけど」
「えっ…」私は想像していなかったことなので、つい、声が出た。
よく見ると、枝の端が〈ここだよ〉といった感じで、チョイチョイ動いている。
「おっ、お客さんの牛肉料理とビールが運ばれてきましたよ。水も、あります。馬鹿なことはしないで、食べてはどうですか?」
お客さんは、光の刃で頭を突かれたみたいな、衝撃を受けた反応をした。
「そうだな。俺は大人だからな。そうすることにするよ」
男は、毒気を抜かれたようになって、普通の人間の姿に戻り、大人しく食事を始めた。
私は、この店に来て初めて化物人間が襲うのを見た。
こんなことをして、何の罪にもならないというのはおかしい。だが、そうならない理由がある。
それは、この国を化物の王が治めているからだ。
だから、化物人間に甘いのだ。
それが原因で、子供が働く理由にもなっているのだ。
続く
一まず戦いは、収まった。ナイスだ、ハルト。




