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第 三十七 話

「俺は、苦しくなってきた。

 飲んだ、多分毒薬が効いてきたのかもしれない…。

 本当は、吐こうとした…。だけど、大臣がこんな絶望的な様子で、自分のしでかしたことを白状するのを見て、これはもう、助からないんだと、確信をもった。

 本当は、最後まで、望みが全くのゼロでも諦めずに何とか吐こうとすればいいんだけど。これが、自分じゃなくて他の人だったら、吐かせようと努力したかもしれない。

 実際、心優しい兵士や世話係が、〈吐いてください、王子!〉と、言ってくれた。

〈すまないが、やめてくれっ。もう、いいんだ。それより、大臣の話を聞く〉

 俺にとっては、大臣の話から、真相を知ることが何より大切な、自分の生きた命の価値を知る機会だった。…これを聞かずに死ぬことは、自分の命を何の価値もないものとして、ゴミ箱に捨てることと同じなんだ。

 もう一回、同じような状況になったら、もっと生きようとするだろうけど。

 さっきの、大臣との会話へと話は、戻る。

〈あたくしは、人の誰かを助けようとする心が、『闇の世界』を作り出し、人を化物人間にしたという事実を小さい頃に知りました。

『世界』の事実なのに、誰も何とかしようとしません。その現実にあたくしは、許せない心が起きました。

 そして、なぜこのようなことになるのかと思った時、この世界の頂点の王は、いないので、取り敢えずこの国の王がいけないんだと思いました。

 だから、あたくしは自分が操縦出来る王を作らないといけないと、理解しました。自分が、王になれる身分に生まれていないのは、分かっていたので。

 そんな時、素晴らしい毒の存在を、知りました。何が、素晴らしいかって、毒は確実にあたくしが想った通りに、仕事が出来る力があるのです。

 だから、邪魔な人にふさわしい毒を用意すればあたくしの、望みは達せられます〉」



              続く

大臣の心が、少し、見えてきた。果たして、ハルトは何を想うのか?

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