第 三十四 話
「〈キュウジロウ王子。ジュウビョサイ大臣が父上に毒を盛った食事係の世話をしていたぐらいで、部屋を検査するなんて、やり過ぎだ。直ぐに、出ていくべきだ!〉
手続き上のことをいえば、この検査は、あまり良くはないだろう。キュウサブロウは、祖父の大臣への感情的判断を、そうすることが当然といった感じで話す。
キュウサブロウは、跡継ぎとしてきっと、何不自由なく育てられたんだろう。でも、時々、心が死んでしまっているような瞬間が感じ取れてしまう。それは、何となく大臣から発せられる普通じゃないおかしさを、どこか感じているからじゃないのかと、俺は思った。けど、きっと本人は大臣を信じていたいんだろうな何とか。恐ろしいことを、知りたくはないのだ、多分。
〈キュウサブロウ…。お願いだ、この薬を調べさせてくれ〉
俺は、呼び捨てで呼ぶことで、何とか兄弟の関係で、この事態を収束させたかった。
正直、跡継ぎの話し合いがもし、されるなら、三対七で、怪盗に育てられ、ずっと城でなく森で育った俺より、キュウサブロウが次期国王に選ばれるという、感覚があった。だから、発言力はキュウサブロウの方が強いのだ、どうしても…。
〈そんな呼び方で呼んでも無駄です。この、薬は、父上の毒とは関係ありません〉
〈キュウサブロウ王子も、こう、おっしゃっております。どうか、薬を置いて、部屋へとお戻りください〉
大臣は、元気を取り戻して俺に、言った。
冗談じゃなかった。俺は、大臣の悪事のために、本当に考えられないくらい心を乱された。俺は、心、穏やかに過ごせる場所をこの大臣のせいで、全て取られてしまったのに。
もし、今出ていけばこの薬は別の物とすり替えて、俺の追及の落ち度を責められるだろう。国王も何かしらで、また死が近づくようなことをされてしまうかもしれないし、俺だって何かの手で、殺されそうだ。
そういうことが頭に浮かび、俺は焦っていた。
だから、俺は、〈うるさい!もらう〉
その薬を、自ら飲んでしまった。
〈の、飲んでしまわれたか…〉
そう言って大臣は、膝を突いた」
続く
ハルトは、大丈夫なのか……?




