第 三十一 話
「腰掛けているって…。それって、『腰掛けの国』の国名の由来の元になった伝説になんかちょっと似ているね」私は、伝説を思い出して、言った。
この地に、千八百年前、巨人が別の世界からやって来た。
そして、そこの土地にいた人たちと一緒に、協力をして国作りをした。巨人は優しい性格で、この地の人たちの言うことをよく、聞いてくれた。
神様がそれを見て喜び、現地の女性と恋に落ちていた巨人に子供を授けてくれたそうだ。
それから巨人が亡くなると、よく巨人が腰掛けていた岩の場所に巨人を感じさせる大きさの城をまず、作った(今は、大分建物が増えている)。巨人が、現地の人と楽しそうに談笑をしていたのが、印象的だったからだ。それで、『腰掛けの国』という、国名になったのだ。
これが、現在も続いている王家の始まりと、されている。
「ハルトは伝説の巨人の子孫だから、その関係で魔法の力が優れているのかな?」
巨人の子供は、こっちの世界の人間と同じような、普通の大きさだったそうだ。
「そんな、凄くなんかないよ。俺は、簡単な奇跡の移動しか出来ない。出来ても物を大きくすることや、動かしたりすること。後、物質の材質を変化させるぐらいで。現状をちょっと、自分の想いで、変化させるだけだ。
他の、魔法を使う者たちのような専門性はない。
だから、蛇皮ジャケットと戦うのだって、下手したら危ないし、そこまで強くない」
「ハルト。俺の名前はトツタだ」
蛇皮ジャケットの呼び名では、満足するのが無理だったのか、名乗った。
「ああ、トツタさん」
「なぁ―――、頼むから、さんなんて付けないでトツタって呼んでくれよ。さん付けて、かしこまられると、どうも落ち着かないんだよ」
ありゃりゃ、こりゃハルトと同じような感覚がある人なのかな?
「ああ、なるほどトツタ」
「俺、決めた。俺、ハルトたちの味方になるよ。なんだろう、直感で。お前たちと、友達になる方が、俺、自分が好ましいんだよね。
俺、自分を好きでいたい人だから、頼むぜ!」
う――ん。そう言われると、断る理由もないような…。いや、出会ってちょっとで殺そうとしてきた人だもんな。…断る理由は大いにある。
けど、憎みきれない感じもある。
「お前、仕事で俺たちを殺す気だったんじゃねーのか?」
「もう、辞めるよ。あんな仕事」
聞けば、人を殺す仕事は今日が初めてで、それまでは喧嘩の助っ人をしていたらしい。何となく今まで、働いていたって、感じなのかな。
いきなり、ヤバい仕事し過ぎだと思うけど、喧嘩も暴力なら、酷いくらい充分ヤバいか。
「俺たちの仲間になるのは、危険だと思うぞ」
「大丈夫だ」
うーん、ハルトがいいって言うなら、ちょっと不安だけど仲間でもいいかと、私は思った。
続く
トツタが、仲間になった。




