第 二十六 話
「うーんと、結局さ、ハルトが王子っていう話があったお陰で、皆、無事隙を見つけて逃げられたんじゃない」
私は、素直に感じたことを言った。
「ハハハハハハッ。確かに、そうだな。この兄ちゃんの存在でびっくりさせて、多分、皆逃げたんだろうよ。たまたまだとは、思うがなっ」蛇皮ジャケットの男は、なぜか喜んで、楽しげに話す。
久々にしゃべったかと思ったら、そんなに嬉しそうに…。悪趣味だな。
ハルトは、そんな男に、付いていけないといった感じで、しばらく呆然として男を見ていたが、気を取り直して話を始めた。
「とにかく俺は、城に連れていかれた。その頃の、比較的、新しい技術。血の繋がり魔法鑑定で、本当に王子であるかを調べるためだ」
「ちゃんと調べてくれたのは、幸いだったね…」無視して、殺す場合も、なくはない。幾ら、他の兵士が見ているとはいえ。考えのない人だったら、殺していることも、あるかもしれないと、私は思った。
「本当の父親。国王はまだ、生きていた。だが、国王の様子がおかしかった」
「えっ……?」国王は、ハルトに対して何か悪いことでもしていたのだろうか?
「国王は、徐々に弱らされて、死ぬ薬を盛られていた。そして、俺の兄は事故で死んでいた。危険な場所で馬に乗っていて、崖から落ちて亡くなったのだ。十四年前の俺がいなくなる三週間前に。俺の弟は、元気だった。俺の、本当の母親は、三年前に病を拗らせて、亡くなっていた。母も様子がおかしくなっていたというから、もしかしたら国王と同じ毒を盛られていたのかもしれない。毒の効き具合は個人差があるというから。兄が死んだのは、偶然、上手くいったのかもしれない。そっから、悪事はスタートしていたんだ。俺の下の弟は、腹違いだった。俺の、本当の母さんは王妃で、弟の母親は側室だった。そして、大臣の娘で、あったのだ」
ハルトは、苦しそうに話した。そりゃ、辛いだろうな。こうして聞いてみると、百年前のこととはいえ、ドロッドロだ。
「後から熊人間の父が、忍び込んで話してくれたんだが。俺が赤ん坊の頃、夫婦で城の宝を盗むために忍び込んだんだ。それで、盗んで逃げようとした時に、偶然、王妃に見つかってしまった。その時、王妃の母さんが抱いていたのが、俺だった。最初は、騒ごうとした王妃だったが、急に落ち着いた様子になって、〈宝は、差し上げます。その代わりに、この子を連れて行ってください。大臣が狙っています。これ以上、子供が死ぬのをどうしても見たくないんです〉と、話したそうだ。まあ、俺としては、王妃の母さんの愛情を知ることが出来たのは嬉しかった。それから、熊人間の父さんと母さんが、何の考えもなくただ子供を盗むような人間でなくて良かった」ハルトが、熊人間のお父さんから話を聞いた時の様子が、何となく想像出来るな。と、私は想った。
続く
大臣…!ドロッドロだったな、結構。




