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第 二十五 話

「その頃は、ほとんど魔法も使えなかったし、本当にまずいよね」

 ハルトは、柔らかく話す。私に、あまりショックをあたえ過ぎないようにしているのだろう。

「兵士の一人が指揮官の命令で、俺に銃を向けた。そして、俺は他の兵士に取り押さえられて撃たれそうになった…」ハルトは、血の気が引いた顔になって、語る。

「うん…」私は、本当は逃げたいような気分になっていたが、頑張って聞く。

「その時に…。父親が、〈待ってくれ、この子は、十四年前にいなくなっただろう?王子が。その、キュウジロウ王子なんだ〉〈何っ……!!?〉指揮官は驚いてたな。その瞬間、父と母はパッと煙玉を投げて逃げた。そして、ほとんど同時に近いタイミングで、熊人間の村の人たちも煙玉を投げた。それで、俺以外の皆は、熊人間の村の人しか知らない幾つかある秘密の道を使って逃げた。村の人は、バラバラになってしまった。逃げるので、必死で。それっきり会ってない人もいる。まあ、皆、父や母の仲間で怪盗の技術をもっていたんだ。俺も、教わっていたけど、あの場の状況じゃ、しっかり取り押さえられていたし、まさかの話を聞いて、頭が回らなかったのも理由にあると思う」

 ハルトは、自分だけ逃げられなかったのをちょっと言い訳するように話した。

 まあ、それは運が悪かったんだと、思う。

 それにしても、ハルトの素早さは、怪盗の技術もあるんだなと、感じた。



               続く

ハルトのこの後の運命は、どうなるのだろう…。

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