第 十九 話
「あの、どちらさんですか?」
ハルトは、蛇皮ジャケット男に、尋ねて様子を取り敢えず見るようだ。まあ、そうするしかないよね。
危なそうな感じがする人だけど、もしかしたら、ちょっと変な人なだけかもしれないし…。
「死ねっ」男はハルトに、指を差してきた。何て人だ…本当。
ただ、この時、私は何か違和感を感じたので声を掛けた。
「ハルト…」
ハルトは、ジャンプをした。その先で、落ちていた石を拾う。直径十センチぐらいの、手に簡単に載るような大きさの石だ。
雨が、少し治まってきた。
私も、安全のためちょっと、移動する。男が気が変わって、こっちを襲おうとしてきたら、危ないからだ。
「石よ。百倍の大きさになれ」
ハルトは、そう言うと、それをポイッと前に放り投げて、サッと後ろに下がった。すると、直径十メートルの岩のようになった。
そこを男の人差し指の爪が、金属っぽくなったと思ったら、それが広がって、まるで腕全体を三周り大きくした、電動ドリルのようになった。本で読んだことあるが、その威力はもの凄いというのは私は、知っていた。
巨大石が四分の一程、砕かれた。
人間の肉体だったら即死だ。
男はまだ、不気味な笑みを顔に張り付けている。
続く
男が何をしたいのか、細かいことは謎のまんまだ。




