第 十六 話
撥水の力が付いている魔法グッズの敷物を敷いて、ハルトと二人でしゃべる。ご飯の時間にはまだ、早過ぎるからだ。一昨日の化物人間のお婆さんの話に、なった。
思えば、ハルトはこの時、悲しい匂いを出していた。
「アキ。俺、今までで、化物人間をやっつけたって話はたまに聞くことはあった。だけど、治したって話は聞いたことがないんだ」ハルトは、大事な物を、つい踏んだ時のような表情だ。
「…それは、私もだけど」
私は、ハルトに追い詰められているような気分になりながら、しゃべる。
「俺、アキを連れて、王様を説得に行きたい」
私は、驚きのあまり、緊張で身体が硬直してしまいそうになった。が、何とか動いて平静を保つ。
「えっ…え……王様って化物でしょ。人間ですらない」
「でも、王様を治せたら、全てが変わる気がするんだ」
「ハルト。な、な、なんか素早いどころか、焦ってるよ…。どうして?ハルトは魔法だって使える。嫌なことなんて何もないはずだと思うんだけど…」
もう、普段のハルトじゃない。
別の…よく分からない何者かになったような気がする。ちょっと怖いけど、悪魔のような感じもする。
「お、俺は…。昔、あることが原因で死んだんだ。俺は、百十二歳なんだ。累計で数えるなら、本当は」
ザ―――ッ。何の前触れもなく、突然、強めの雨が降ってきたのだった。
続く
ハルトは、死んでいた。一体、どうなるんだこれから?




