第 十五 話
なら、私の父を奪った化物人間をもっと深く怨みそうなものだけど、不思議と少し冷静だ。それは、人間の歴史が生んだ負の結果だからかな。
まあ、でも結局、まだ父は生きていると信じられるから、落ち着いていられるんだ。
これが、もっと望みが薄かったり、間違いなく死んだと分かったら、取り乱すだろう恐らく。
ここの国が、子供の働き手が多い訳は、化物人間に闇の世界へと親がさ迷わされていたり、その影響で経済がねじれて、生活が厳しかったりするからだ。
それに化物人間も子供相手なら多少優しくするだろうという大人の考えもある。
まあ、それは実際その通りなのだが、少し優しいくらいじゃ子供も闇の世界へいってしまうので良くない結果だ。
後、子供の化物人間もいるのだ。
でも、こんな厳しい感じで仕方ないが『魔法使いの国』に行けば、闇の世界から救いたい人を救える魔法を勉強することが出来るようなのだ。
だから、私も行きたかった。魔法の力を使って安い値段で、魔法使いの国に行ける転送装置がこの国にはあった。
そこで、魔法鑑定人に見てもらうと、私は魔法を使える可能性が低いと言われた。
十ヶ月前に。
そこで母が一人で行くことになり、私は叔母の家にあずけられることになった。
そして、手紙で状況を教えあっていた。
ところが少し前から、母の手紙が悲観するような内容が多くなった。
要約すると、『自分一人では、無理だ。もう一人、魔法を使えて父をよく知る人がいれば、捜せるのに』のような、内容だった。
父の友人たちにも連絡をしたが、なぜか力になれないと、全部返ってきたそうだ。
叔母も、魔法を使える可能性は低いそうだし。小さな子供だっている。
それに、転送装置じゃない行き方は、旅費が十倍掛かる。叔母の家の手伝いをしているが、それだと、到底無理だ。叔母の家はさっきも述べたが、小さい子供がいて、お金の余裕はほとんどない。近くに丁度いい勤め先もなかった。
だから、寮がある飲食店で働き始めたのだ。化物人間相手の接客は、リスクが高いというのはあるけど。
叔母以外、頼れる親戚もいない。
私が魔法を使える可能性は低いけど、側にいれば、母を元気づけることが出来るかもしれない。
そういう可能性を信じて、私は働いていた。
続く
アキの、過去が、語られた。




