第 十一 話
結局、黒い玉をお婆さんに返すことになった。ハルトは壺の栓を抜く。
お婆さんの顔が嬉しいのか、緩んだ。
その時、ハルトは黒い玉の一つを掴み、ギュッと力を入れて握った。お婆さんは痛いのか、辛そうに涙を流した。
「お客さん。なぜ、泣くんだ。俺は魔法を使っていますが、さっき、そこの女の子のアキにしようとした攻撃よりも、全然弱い。ダメージなんて、しばらくジンジンする程度だ。なのに、なぜ泣く」
「痛いものは、痛いんですよ。…馬鹿者」お婆さんは、闇のオーラを出し始める。
また、角や牙がある状態に、なっている。
それでも、栓を抜いて出した黒い玉は、ハルトの光のオーラの中に捕まって動けないでいる。
「アキはな、当たったら、もっとボロボロになったんだよ。お客さんの無自覚でな」
ハルトは、思いっきり、お婆さんに向かって黒い玉を投げた。
この人が、普通のお年寄りなら、あり得ない行為だっただろう。
お婆さんは、顔の前で止めた。力で、キャッチした感じだ。
「お客さん、シチューは食べられますか?」ハルトは、真剣な顔をして、聞く。
「た、食べられるわい…好物じゃ」お婆さんは、微妙に、ビクビクしながら答える。
グーッ。お婆さんのお腹が、鳴った。
私は、あまりの空気の違いがおかしくなって、笑った。他の三人も、何となくおかしかったのか、同じく笑った。
「直ぐ、用意しますね。パンも付けますから、お待ちください」
ハルトは、お婆さんに優しく話し掛けた。さっきまでのハルトと全然違う。でも、こっちの方が、ホッとする。
ハルトは丁度来ていた、コヨに話し掛けて注文をお願いしている。まあ、私たちは地べたに倒れ込んだりして、汚れてるもんね。
ハルトは、こっちへ来た。戦士の持ち主に言う。
「お客さん。俺、素早いだけで、周りが見えてなかった。でも、さっきみたいにして何とか守るし、今度は絶対見逃さないから、信じてほしい…です」
「分かった。君を信じるよ。つい…気になってね」
戦士の持ち主は、ニッと笑った。
ちなみに、今さらだが戦士と馬の見かけは、鎧を着ている。戦士の鎧の兜は、真ん中の辺りが真っ直ぐ、ラインで、毛が生えているものだ。
つまり、騎士みたいな格好で、ある。
だけど、騎士のような、どこかきちんと、軍隊に所属しているぞという雰囲気がない。
どっちかと言うと、傭兵のような感じがしたので、戦士と表したのだ。
続く
ハルトは、アキのことを…思っていた。




