第 一 話
「すぐに、動く。迷ってはいけない」少年は、そう言った。ハルトという、名前であった。ハルトは、私の一つ上の年齢で十四歳。
とはいっても、もう十五年も前の、話ではあるが。
布張りの屋根がある、外の飲食店での仕事で出会った。
「アキは、仕事を一気にしようと、し過ぎだ」
ハルトは、私が勤務を始めて、二日目の最初に言った。
テーブルカバーをした長机や椅子を、倉庫から出すところから仕事はスタートする。そこに蝋燭と蝋燭立てを置いていく。
「たくさんのチェックポイントへ、小走りで行く感じでやるんだ」
どう、動いたらいいか分からない私を待っていてくれたかのようにいて、ハルトはそう伝える。
なるほどとは、思った。このイメージでやる人みんなが出来るかといったら、分かんないけど。
私は、『魔法使いの国』へ行ったお母さんに会うために、かなりの額の旅費がいるのだ。稼がないといけなかった。
ある拍子に化物の姿がチラッと出ている、化物人間たちがたくさんお客さんで来る店だ。うっかりすると『闇』の世界へと連れていかれるかもしれない。
そんな不安とも闘いながら、私は働いた。
続く
素早い少年は、どんな存在なんだろう?




