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第98話 『地下牢 その1』 (▼ルーニpart)





 

 シャノンと数人の賊達に拘束され、ダーケという村に連れて行かれた。その村の宿屋に監禁された時に、助かるにはどうすればいいのか一生懸命考えた。そして、きっとルーニの事を助けに来てくれるだろう誰かへヒントを残した。


 部屋のメモ帳から紙を1枚拝借して、賊とメイドのシャノンが話していた内容に耳をやる。これから向かう場所、トゥターン砦という名前を聞いたので、手に入れた紙に書き記して隠した。ペンは、持ってなかったから咄嗟に口の中を噛んで、自分の血で書いた。


 もちろん泣きそうな位につらくて怖かったけど、アテナお姉様やモニカお姉様の事を考えると自然と勇気が湧いた。だって、あのお姉様達はどんな時だって絶対に諦めないし、とっても強い。ルーニも日頃から、そんなお姉様達のようになりたいと思っている。


 それに今のこの悲惨な状態が、そんなお姉様達のようになる為の試練だと思えば耐えられる。


 ダーケ村に1日程いた所で、騒ぎがおきた。村に半人半狼の魔物ウェアウルフが、やってきて村人が何人か殺されたらしい。ルーニはずっとお城暮らしだったけど、お父様や爺からも魔物の恐ろしさは聞いて知っている。


 私を攫った賊とシャノンは、その騒ぎを聞いて急いで村を出る事に決めた。シャノン達が話していた、トゥターン砦という場所にむかうのだ。


 砦に向かう途中、そこから迎えに来た兵士の馬に騎乗して、大きな湖を迂回した。湖には、サヒュアッグという半魚人の魔物が大量に生息しているみたいで船で渡るのは極めて危険らしい。


 トゥターン砦に到着するやいなや、いやらしく笑う男達がルーニを取り囲んできて、来ているドレスを脱がそうとしてきた。男がルーニの上に、覆い被さる。恐ろしくて抵抗しようとした時、シャノンがやってきて男達を追い払うと、ルーニを小部屋へ連れ込んだ。


 そして、それまで着ていたドレスを脱がされて代わりにボロボロの服を着せられた。それは、シャノンが賊の仲間ではあるけれど、幼くはあるけれど同じ女である者へ対しての哀れみだと感じた。



「シャノン…………」



 二人きりになり、シャノンに呼びかけてみたけどシャノンは、ルーニと目も合わせようとせず、一言も喋らなかった。


 ボロボロの汚い服に着替え終わると、シャノンと賊の砦の兵二人に連れられて地下三階まで連れて行かれ、そのフロアの奥にある牢に入れられた。


 牢の中は、吐きそうな位に悪臭が漂い、そこら中には人の汚物のような物が散乱している。ゴキブリや鼠。環境は最悪だった。だから、なるべくマシな場所を探して、そこに座った。



「う……う……」



 牢の端の方で、何か聞こえた。辺りは薄暗くてよく見えないけど誰かいるの? 



「うう……」



 やはり、誰かいる。



「誰かいるの? 誰?」



 その声の方へ近づいた。すると、そこには一人の少女が横になっていた。顔を見ると、自分と同じくらいの年齢の少女。



「この子も、ルーニと同じ誘拐されてここへ連れてこられたのね」


「み……水……」


「大丈夫!! お水? あなたお水が飲みたいのね!!」



 顔は痩せこけていて青白く身体も、痩せ細っている。きっと、この子はずっと食べ物も飲み物も与えられていない。


 その辺を見ると、汚物の中に骨のような物を見つけた。それを手に取るとやはり骨だった。それを牢の鉄格子に向かって何度も打ち付けた。更に叫ぶ。



「ちょっとーー!!!! 誰かーー!! 誰かきなさーーい!! 誰か来なさいって言っているのよーー!!」



 10分程だろうか? 骨で鉄格子を叩き続け叫んでいると、鬼の形相で兵士がやってきた。



「じゃかましいわ!!!! いったいなんなんだ!! 大人しくしろ!!」


「ちょっと!! ルーニはこの国の第三王女なのよ!! こんな恐ろしい所に閉じ込めて、ただじゃ済まないわ!! 早く、ここから出しなさい!!」


「アホか。わざわざクラインベルト王国の王都まで行って、やっとの思いで拉致った王女を開放する訳ないだろ? それにここは、おまえの国じゃねえ。ドルガンド帝国領だ」



 ――――ドルガンド帝国⁉ その砦。


 もしかして、ルーニを攫ったのは、ドルガンド帝国。



「じゃあお水と食べ物をくださる? このままじゃ、お腹ペコペコで死んじゃうわ。ルーニがこのまま死んじゃっていいの?」


「ああ?」


「だって、帝国にとってルーニは、大切なはずでしょ? 何かに利用するのでしょ? じゃあ、お水とご飯をくださるかしら。そうでなけば、ルーニは地獄の苦しみを味わい続けるよりは死を選びます」



 そう言って、持っている骨の尖った方の部分を自分の喉に突き付けた。決して脅しではないぞと、睨み付ける。



「わかった!! わかった!! ちょっと待ってろ!! すぐに用意する!! …………ったく、クソガキめ!!」



 少し待つと、男が言ったように本当に水と食べ物が運ばれてきた。それを受け取ると、まずその横になっていた少女に、水を飲ませた。



「うっうっうっ……ゴホッゴホッ! …………水? あなたが……ありがとう…………」


「これ位、どうって事ないよ。だってね、ルーニはね、クラインベルト王国第三王女なのよ」


「…………王女様?」


「そう! 王女なの! だから安心してルーニに任せて。あなたの事は、ルーニが絶対に助けてあげるからね」



 そう言うと少女は、気を失った。


 少女を膝枕してあげると、その少女の頭に耳がある事に気がついた。尻尾も。少女は獣人だ。その少女の尻尾を少し触ってみるとサラサラして気持ち良かった。


 それから辺りを見回してみると、多少目が慣れて来たのか少しは見えるようになってきた。


 このフロアには、他にも牢が並んでいて中には捕らえられている人が何人もいるようだった。


 できれば、ここに閉じ込められている人達全員を助けてあげたい。お父様やお母様は絶対にルーニを助け出してくれる。だから、ルーニはそれまで絶対に強くいなきゃダメだと思った。



 そう、アテナお姉様やモニカお姉さまのように!








――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇シャノン 種別:ヒューム

クラインベルト王国の王宮メイドで、テトラの同僚。巨大盗賊団組織『闇夜の群狼』に手を貸し、テトラを利用して王宮から第三王女ルーニを誘拐した。ダーケ村を経由して北上し、ルーニ誘拐の依頼主であるドルガンド帝国のトゥターン砦に向かった。


〇ウェアウルフ 種別:魔物

人型の狼の魔物。ワーウルフとも呼ぶ。ダーケ村を襲っていたが、テトラたちが退治し村と村人を救った。


〇サヒュアッグ 種別:魔物

半魚人の魔物。ルーニの連れ去られたとされるトゥターン砦に向かう為、ホーデン湖をテトラたちは渡った。しかし、そこでその湖を住処にしていたサヒュアッグと遭遇し、テトラたちはサヒュアッグを撃破しつつも前進した。


〇骨 種別:武器

トゥターン砦の地下牢でルーニが入手した骨。ルーニは、何かあれば戦えるようにとその骨を手に取った。もしかしたらと言うか、人骨の可能性が高い。


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