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第975話 『パスキア王都冒険者ギルドでございます その2』



 流石はパスキアの王都にある冒険者ギルドというだけあって、物凄く沢山の依頼があった。その中から、ルシエルとノエル、2人とよく相談してどういう仕事がいいか選んだ。


 受付のお姉さんは、ルシエルとノエルの冒険者ランクを確認して驚いた。



「えっと……うわっ、凄いですね! Aランクの冒険者様お二人に、Cランクの冒険者様お一人。そして使い魔が一匹。このパーティーなら、ほとんどの依頼を受注する事ができますよ」


「そ、そうですか! どうしましょうか、ルシエル、ノエル?」


「とりあえず、なんでもいいけどなー。でもやっぱ、報酬額がそれなり高くて、チャチャっと達成できる奴がいいよな。結果的にまだまだ時間はかかるとしても、オレ達は一応アテナが用事を終わらすのを待っている身だし」


「そうだなー。それならやっぱり魔物退治とかでいいんでないかい? 直ぐ金を稼げるし、解りやすい内容、そしてオレの得意分野でもあーる」


「大丈夫でしょうか? それって、討伐依頼なら対象の魔物がいる生息地……つまり王都の外へ行かなくちゃじゃないですか?」


「ん? まあ、そうだな」



 ルシエルがポンと私の背を叩く。



「逆に考えるだ、ルキア。王都から、別に出てもいいさと!」


「え? なんですか、それは?」


「要はだな――王都からは、それ程遠くない場所に生息している魔物を選んで、倒しに行けばいいじゃねーか。な」


「まあ、それはそうですけど……そんなに都合良くいくかなあ」



 こうして、私達は魔物の討伐依頼を請け負った。


 王都周辺に異常繁殖しているスライム達の討伐。近くの山付近に出没する、オークの討伐。王都に来る旅人を襲ったゴブリンの群れの捜索と討伐。あと結構な報酬額のもので、マンティコアが王都近くの村手前で出没したとの事で、早急に行って退治もしくは追い払って欲しいというのもあった。


 私達はそれらの依頼を、あっという間に片付けた。私なんかが、これだけの討伐依頼をちゃんとできるのかなって思って不安に思っていたけど、やっぱりルシエルとノエルは凄かった。ノエルも地元ノクタームエルドでは、若くてもベテラン冒険者で有名というだけあるなと再認識させられた。


 因みにマンティコアは、追い払わず倒してしまったので、もともと高い報酬に更にボーナス報酬が上乗せされた。


 こうしてお昼過ぎには、あれだけ問題になっていた、私達の金銭問題は解消されていた。


 とりあえず、数ある討伐依頼を達成し続けたので、ここら辺で少し休憩したいのと、お昼過ぎになってお腹が空いたので、一旦休憩を入れる。王都にある飲食店へと入った。


 お店の入口には、『軽食&喫茶』と表記されていたけど、置き看板には美味しそうなメニューが書かれていたので、そこへ入る事にした。


 お財布の氷河期時代も抜けて、上機嫌のルシエル。なんだか晴々している。すっくと元気よく挙手すると、店員さんを呼んだ。



「すっみませーーーん!! 注文おなっしゃす!!」


「はーーーい、どうぞ」


「えーーっと、このAランチをお願いします。あとねー、えとねー。それで、どうする?」



 ルシエルが、私とノエルに目を向けた。



「決めた。それじゃ、あたしはこっちのBランチだ。これにする」


「私はCランチ。それを二つもらえますか?」



 ルシエルと、ノエルが驚いた顔をした。



「ルキア、食うなあ……意外と大喰らいだったんだな。知らんかったぞ。流石は食いしん坊プリンセス、アテナ一番の子分だなー」


「なんですかそれ! 違いますよ。もう一つは、カルビの分です」


 ガルウウッ



 ノエルとルシエルは、カルビを見ると「なんだ、そういう事か」「ふう、驚かせやがって」っと言って笑った。因みにルシエルは、汗を拭うしぐさをする。



「お待たせしましたーーー」


「やった!! 来たぞ来たぞーー!! オレ様のAランチ!! AランチのAは、Aランク冒険者様のAだぜー!! キャッキャッ!!」



 オーダーしたものが、運ばれてくる。Aランチ。見るとそれは、生姜焼き定食だった。お味噌汁と、ご飯とお漬物もついていてとても美味しそう。しかもご飯は、大盛り。



「もう我慢なんねー!! たまらんですたい!! そんじゃお先に、いっただっきまーーーす!!」


「ちょっと駄目ですよ。少し待ってください! 折角だし、皆揃ってから食べましょうよ!」


「あん? そんなん別にいいだろー。兎に角、オレの腹はもう、ペコペコペコリンで我慢できないのーー!! あーーーん」


「ルシエル―!! 駄目ですよーー!」


「って、ホラ。皆の分も来たぞ」



 振り向くと、店員さんが私達の注文分を運んできてくれた。


 ノエルが嬉しそうな声をあげて、待ってましたと手を叩く。



「はは、来た来た! あたしが注文したのは、ステーキ丼セットだ。使用しているのはブラックバイソンの肉らしくて、ちょい値段高めだが、それでもランチ価格。これしかないと思った。しかも野菜スープとサラダ付きだ」


「うわあ、本当に美味しそうですねーー」


「どれ、ルキアとカルビのセットはなんだっけ?」



 ノエルが、私の注文したCランチを覗き込む。



「おお、こっちも美味そうだな。あたし好みだ。こっちにしても、良かったかもしれなかったな」


「はい、焼き肉定食です。これが食べたかったっていうのもありますけど、カルビも大好きかなと思って」



 そう言うと、ノエルは笑った。とても可愛い、無垢な少女の笑顔。いつもなんとなく、むっすりしているような感じがするので、こういう表情をたまに見るととても嬉しくなってしまう。



「さあさあさあ、冷めちまうぞ!! 食べようぜ食べようぜ!! カルビももう一心不乱に喰ってるぞ! お前らも負けるなーー!! ムガムガ! モッチャモッチャモッチャ……うめーー!!」


 ガツガツガツ……ワウ?



 本当に美味しそうに食べているカルビ。そんなカルビやルシエルに私も触発されて、焼肉定食の焼肉から箸を伸ばす。パクリッ。



「もぐもぐ……わっ、おいしーー!!」


「ほう。やっぱり当たりだったようだな。でもあたしのステーキ丼セットも最高だぞ! ちょっと喰ってみないか?」


「わーーい、それじゃ一口。もぐもぐ……わあ、美味しい。ノエルも私の焼肉、食べてみてください」


「そうか。じゃあ、もらう。パク、モッグモッグ……うん、美味いな」



 ノエルと笑い合う。一心不乱に食べ続けているカルビ。ルシエルは、目を細めて私達を眺めている。あれ? もう食べ終わっている?



「も、もう食べ終わったんですね。ルシエル」


「うん。まあ、そんな事はどうだっていいんだけどさ。さっきからお前ら二人、とても仲良さそうにしているが……オレもそのなかにまぜてみないかね?」


「え? どういう事ですか? 私達仲間だし、もとから一緒にランチしていますよね」


「そんなこたあ、どうだっていいんだよ!! 二人が食べているその美味そうなやつ、オレにも味見させろーーーーい!! って言ってんだ!!」


「うわあああっ、なんだこいつ!! ルキア、絶対にその焼肉定食を守れ!!」


「きゃあああっ!!」


「うへへへ、ちょっとでいいんだ。ちょっとだけ、味見させろやああああ!! ただ、先に言っておくが……オレの一口はかなりデカイぜー」



 ルシエルが飛び掛かってきて、それをノエルが押さえつける。


 ちょっと騒ぎになって、私達は店員さんに怒られてしまった。


 でも、焼肉定食はとても美味しかったな。

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