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第925話 『二人の王女』



 私とマリンとクロエの3人は、部屋で集まっていた。


 とてもゴージャスな部屋で、王宮内にある。そしてその部屋は、私達3人にそれぞれ用意してくれたのだけど、クロエが1人じゃ不安だと言ったので、クロエとマリンは一緒の部屋を使う事になった。


 本当は私もクロエと一緒にいたかったけれど、ここはパスキア王国でありエスメラルダ王妃やエドモンテもいる。いつ誰が私に会いにくるかもしれないし、クラインベルトの王女としての立場もあるので、1人で一部屋を使わせてもらう事にした。


 でも、今は3人で寄り集まってひそひそと会話をしている。クロエがとても心配そうな声で言った。



「ほ、本当にこのパスキア王国の第二王子と決闘をするのですか?」


「あはは、違うよ。決闘じゃなくて、試合。それに戦うのはセリュー王子じゃなくて、四将軍よ」



 マリンが眉間に皺をよらせて、難しい顔で言う。ちょっとわざとらしい。



「ロゴー・ハーオンか。彼は剣の使い手で、短剣を用いた双剣の使い手でもあったんだよね」


「そうね、でもロゴー・ハーオンだけで済むのかなーって、ちょっと不安に思っているんだけど」


「アテナは、他の四将軍も出てくるかもしれないと思う?」


「うん……でもいいんだ。ああ見えてエドモンテがなんとか上手い事するだろうし、セリュー王子は、面目が丸潰れかもしれないけれど、この際一斉に四将軍が全部向かってきてくれてもいいかも。それでどちらが強いか白黒はっきりするだろうし、それで終わりにして欲しいし」


「ほう、つまり端的に言ってしまえば皆殺し戦法って事だね」


「それは違うから」


「でもアテナは、戦うの好きだよね」


「それもなんだか語弊があるよね。私が好きなのは、暴力じゃなくて武芸ね。あとキャンプ。そして食べるのも好きだし、旅したりも……」


「食べるの、大好きだもんねアテナは」


「あなたに言われたくないわよ!! っもう、さっきからマリンは、なによ!! コチョコチョコチョーー!!」


「あはーーー、やめろ!! プフーーー、プフーーー!! やめてくれ、アテナ!! 笑い死ぬ、プフーーーー!!」



 誤った考えをしているマリンを、こちょこちょして思い知らせてやった。って、なんだかルシエルみたいな事をしているよね、私。


 でも私がマリンに抱き着いて、こちょばかしていると、先ほどまで不安でいっぱいになっていたクロエは、声をあげて笑ってくれた。



「だってー、もう面倒くさい事、嫌なんだもん。こういういちゃもん的なのとか、縁談もそうだけどチャチャっと済ませて、またもとの冒険に戻りたいよね」


「もとの冒険にですか」


「うん。でもとりあえずは、クロエの目の治療かな」


「え? わたしの?」


「そう。そっちの方が私の縁談なんかよりも、もっと大切な事だからね」



 そう言ってウインクする。クロエには、私のウインクした顔は見えないけれど、気持ちはしっかりと伝わっている。



「そ、そんな……ふ、普通は、わたしのような者の目の事よりも、王女様の縁談の方が大切なのではないですか?」


「そんな事言わない。クロエは、私の妹みたいなものって言ったでしょ。縁談なんて嫌だし、これは借りを返すために仕方なく今は従っているだけだからね。心配しなくても直ぐに縁談はご破算になるから、そしたらまた冒険者家業に戻れるからそしたら、本腰を入れてクロエの目の治療に関する手掛かりがこの地にないか調べるのと、お父さんの情報もあるかは解らないけれど、探してみよう」



 クロエは、とても複雑な感じというか……申し訳なさそうにして俯いた。



「でも、わたし一人の為に……」


「言ったでしょ。冒険者家業に戻るって。冒険も旅もする。キャンプだってもっとしたい。でもいつも行くあては、その時その時だから。とりあえず今は、私の好きな冒険者が書いている本があって、リンド・バーロックって人なんだけど、その人の旅した道をトレースしてみたりしているだけだから」


「なるほど。そのついででも、情報は集められるって訳だね、アテナ」


「そうね。それで、マリン。早速クロエの治療に関する宛はあったりするの?」


「焦らないで欲しい。ボクは焦らされるのが、苦手だから。とりあえず、この王宮内には書庫があるみたいだから、なんとかそこへ侵入して、色々と気になる本を探してみて読ませてもらおうと思う」


「そうなんだ。でも無策で侵入して見つかるなら、ちゃんと手順を踏んで合法的に書庫に入るようにしてね」


「うん、解ったよ。迷惑はかけないようにするよ……たぶん」


「こら!」



 マリンとのやり取りに、またクロエが微笑んだ。そこで誰かが、ドアがノックした。


 コンコンッ



「はい、どうぞ」



 ドアが開くと、そこには女の子が二人立っていた。とても可愛い女の子。


 よく見るとその二人は、見覚えがある。第一王女ミネロッサと、第二王女メリッサと並んでいた子達。っていう事は、この子達は第三王女と第四王女……



「アテナ王女、少しお邪魔していいかしら?」


「ええ、どうぞ」


「あら、お部屋で仲良く3人で集まって!! もしかして、やっぱりセリューお兄様ご自慢のパスキア四将軍と試合することになって、震えておられたのですか!! 可哀そうに……もしもよろしければわたくし達が、試合をしなくてもいいように、セリューお兄様の許しを頂いてきてさしあげましょうか?」



 え? ああ、そうだった。途中からクロエのお父さんと、目の治療の話になって忘れていた。うっかり、うっかり。そう言えば、あと1時間程で私は試合をするんだっけ?



「ありがとうございます。えっと……」


「第三王女のイーリスですわ。そして、こちらのさっきから、もじもじして落ち着きの無い子が……」



 この子がイーリス・パスキア。パスキアの第三王女……ってあれ!? そう言えば今更だけど、フィリップ王とメアリー王妃の子供は全部で7人じゃなかったっけ?


 4人の王子に3人の王女……ミネロッサ、メリッサ、イーリス……あれ、王女が4人いるよ!!!!

 

 でもこの子は、玉座の間で他の子供達と並んでいたのを覚えているし、今になって思い出してみれば、あの場には王子は3人しかいなかった。


 っていう事は、この子は……


 そんな奇妙な事に気づいた私の顔を、イーリスは覗き込んで無邪気に大笑いした。

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