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第920話 『急にできちゃった二人の妹』



 マリンは、魔導書の類だとは思うけれど、以前から本を探していると言っていた。


 目的は、知識に関する探究心と好奇心だって本人は言っているけれど、本当の所はどうなのかは解らない。もしかしたら、強力な古代魔法を修得して、世界を己のものに……って、そりゃないよね、あはは。


 だけど最近は、理由の一つにクロエの目を治療する魔法の手がかりを探す、というものも加わったのは知っているし、私もその為に何かできるのなら協力を惜しまないつもりでいる。


 まあ、それに関しては、ルシエルやルキアやノエル、カルビだって同じ思いである事は間違いないけどね。


 つまり、こういう事――



「マリン、私の事を心配して……って言っているけれど、もしかしてパスキア城にある書庫が狙いなんじゃないの?」


「ち、違うよ」



 そう言って急に押し黙るマリン。泳ぐ目。大量の汗。私達は揃ってジト目でマリンを見つめると、マリンは慌てだした。



「すいません。違うというのは、嘘でした。ボクは、本が読みたいです」


「ほら、やっぱり!」



 マリンを突っ込み、彼女が認めると皆笑った。


 マリンは、クラインベルト城でも書庫に入り浸っていたみたいだし……爺からもその話を聞いたし、ひょっとしたらって思ってはいたけど……


 ノエルがポンと手を叩く。



「まあ、でもいいんじゃないか。だってマリンは、あの魔導大国オズワルトで、天才魔法使いって呼ばれていたんだろ? あたしは言ってもせいぜい冒険者止まりだけど、マリンはそれ程の名声があるのなら、アテナと一緒に城に入ってもおかしくはないし、建前もつくんじゃないか」



 確かにそうだけど……



「どうかな、アテナ。ボクもついて行っていいかな?」


「うーーん、じゃあ一緒に来てもらおうかな。でもマリンは、セシリアとテトラのもとへ行くつもりなんだよね?」


「うん、もう少ししたらね。心配しなくても、黙っていなくはならない」



 私は、クロエの手を握ると、こちらへ引いた。



「え? え? アテナさん?」


「それじゃ、クロエも連れて行こうかな。マリンがお城の書庫で目を治せる何か手がかりや方法を見つけた場合、直ぐ近くにいた方がいいかもしれないしね。本当はルキアも連れていきたいけれど、それだとちょっと心配だしね。見張りがいないと」



 そう言って、ルシエルとノエルに目をやった。


 ルシエルは、何かまた変な事に首を突っ込んだり何かしでかしそうな気がするし、ノエルはルシエルとまた何処で喧嘩するかも解らない。


 だからルキアとカルビがいてくれれば、安心。ルシエルとノエルは、そんな私の気持ちに気づいてかプンプンに怒った。



「どういうことだ⁉ ルキアはオレのお目付け役か!! そ、そんなのいらねーってばよ!! オレの自由にさせやがれってんだい!!」


「そんな事を言うから、余計にこうなるんだろ! もっと大人になれよ、ルシエル!」


「オレはノエルよりも、ずーーーーーっと大人だよ!! 114歳だよ!! だからこれからオレに、何か話す時は敬語でな。ノエル君」


「なんだと、このバカルシエル!! 大人ってのは、何も年齢だけじゃねーんだぜ。精神年齢の事を言っているんだよ!!」


「なーーーにーーーをーーーー!!」


「ちょ、ちょっとやめてください!! こんな時に……っもう!! アテナが行っちゃいますよ」



 やっぱりあの二人は、ルキアに任せておくのが正解だね。カルビもいるし、大丈夫でしょ。



「それじゃ、ルシエル、ルキア、ノエル、カルビ。ちょっと行って野暮用を片付けてくるね」


「おう!」


「はい!」


「解った」


 ワウッ


「先に話したけれど、少なくとも今日は戻れないと思うから、適当に好きな所で宿を取って泊まって。代金は、後で全部私が持つから好きな所で泊まってくれていいから。またこちらから連絡するから、それまで王都を楽しんでいて」


「りょーかい。因みに飯もアテナのおごりかな?」


「はいはい、いいわよ。でも悪いけど、請求は、あとでまとめてでお願いね」


「うっす、ボス! わかりやした!」



 宿泊費に、食事代、それをおごってもらえると思うと、急に上機嫌になるルシエル。なんか気持ち悪い笑い方をしているけど、大丈夫よね。ルキアがついているし、まさか豪遊したりするって事はないとは思うけれど。


 ルシエル達に手を振ると、私はマリンとクロエと共に、お城の方へと歩き出した。クロエは目は見えないので手を繋いであげると、反対の手をマリンも握ってきた。



「なにこれ?」


「え? だってなんか、ボクだけ仲間外れみたいじゃないか」


「うーーん、まあいいけど」



 なんか、新たにできた妹二人を連れて歩いているみたいで笑える。クロエがまた不安そうに言った。



「あの……アテナさん?」


「なーに、クロエ」


「あの、これからお城に行くのですよね」


「そうよ」


「あ、あの……わたしのような者がお城に……アテナさんと一緒に行っても、大丈夫なのでしょうか?」


「え? ルキアやカルビ達と一緒にいたかった?」


「いえ、でもなにか恐れ多くて……」


「フフフ、大丈夫大丈夫。心配しなくても私もマリンもいるから、大丈夫よ。それよりも何かあったらクロエが私を助けてね」


「え? わたしには、アテナさんを助ける力なんて……」


「あるよー、傍にいて元気づけてくれるだけでいいんだよー。ファイトーってね、フフフ」



 そう言って笑うと、マリンが「ボクもボクもー! ボクも元気づけるよ! モリモリと元気づけてみせるよ!」っと言って騒いだ。


 私はクロエとマリンの肩に腕を回すと、二人を引き寄せて笑った。


 一人で行くつもりでいたのに、まさかマリンとクロエまで連れて来る事になるだなんて。でも凄く心強くて嬉しいけどね。


 さてと。それじゃー、行きますかー!

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