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第918話 『久々の弟 その2』



「パスキア王国、第二王女のメリッサです。この度は、クラインベルト王国からわざわざお越し下さいまして、ありがとうございます」


「こ、こちらこそ。お会いできて光栄です。メリッサ王女」



 彼女は、微笑んで挨拶をしたので私も応えた。


 パスキア王国へは、子供の頃にお母様と一緒に来たことがある。けれど直ぐに用事を終えて帰っちゃったし、それから何年も経っていて、この国がどういう国かも憶えていない。


 とりあえず、メリッサ王女はいい人そうには見えるけれど……こちらのおじ様は……



「アテナ王女、お久しぶりでございます」


「え? ど、どちら様でしたっけ?」



 駄目だ。パスキア王国に来てから、ずっと戸惑っている。だけど王家の事で、ルシエルやルキア達に助けを求める訳にもいかないし……こういう時に、セシリアがいてくれたりすると、上手く助け舟を出してくれたり、いい方向へ逃がしてくれたりするんだけどなー。助けてー、セシリアー。



「お忘れですか? っと言いいましてもお会いしたのは、アテナ王女殿下が幼少の頃に一度でございますが。私は、ロルス・ロイスでございますよ!」



 ロルス・ロイス……お洒落で清潔感のあるお鬚……それに立派な服……そんな人、会ったっけ? 駄目だ、覚えとらん!


 でもロルス・ロイスという人は、明らかに私を一目見るなり、懐かしんでいる様子で目に少し涙まで浮かべているようだった。こ、これはまいったよ。えーーと。



「アテナ様? ロルス・ロイスですよ。もしかして、お忘れになりましたか?」


「ああっ!! 思い出したわ!! ロルスね、ロルス! ちゃんと、思い出したわよ! あははは」


「思い出した? もしかして、この私の事をお忘れに……」


「そんな訳ないじゃないの! ロルスね、きっちりばっちり思い出したんだから。確か、パスキアの宮廷大臣。そうでしょ?」


「いえ、外務大臣です」



 …………暫し、沈黙。


 ロルスは肩を落とし、本当に残念な目で私を見つめた。やん! やめて、そんな目で見ないで!


 だって、ロルスと会ったのって、まだ何も解らない位程に、私が小さかったころじゃないの! そんなの覚えていないわよ。しかもその後は、直ぐにクラインベルトへ帰っちゃったし……


 逆にそれだけでよくロルスは、私の事をこんなに思ってくれることができるなんて……その方が驚きを隠せない。エドモンテが、面倒くさそうに口をはさむ。



「あーねーうーえー」


「はいはい、なによ」


「ロルスとの思い出話は、また城に到着してからでも? メリッサ王女を、このままここに立たせているおつもりですか? さっさと馬車に乗ってください。先を急ぎましょう」


「だから嫌だって言っているでしょ! 先に行ってよ! 本当に申し訳ありませんが、メリッサ王女と、ロルス大臣もお先に行って頂けますか? 私には、仲間がおりますので仲間と共に後ほど参ります」



 そう言うと、メリッサ王女はルシエル達に目をやる。



「あれが、アテナ王女の護衛の者達ですか」


「いいえ、彼女達は護衛ではありません。私の仲間であり、友人です」


「仲間……?」


「あ、あの者達が、アテナ王女殿下のご友人ですと? ど、どうみても冒険者のようですが……」



 メリッサ王女と、ロルスは目を丸くして驚いた。



「対等な存在で、大切だと思える人達って事です。私は彼女たちと、一緒に参ります。ですから、お願いです。お先に行って頂けませんか?」



 唖然とするロルス。でもメリッサは、ウフフフと笑った。



「可笑しいですか、メリッサ王女」


「ごめんなさい。可笑しいというよりは、驚いて、うっかりと笑ってしまったのかしら。アテナ王女の事は、こちらへいらっしゃると聞いてから、少し調べさせて頂きました。とても興味のつきない人、それが私の印象でしたが……本当に変わった方なのですね」


「えへへ、よく変わり者だと言われます」


「ウフフ、解りました。それでは、後ほどお会い致しましょう。エドモンテ様、先に参りましょうか」



 メリッサとロルス大臣が馬車に乗り込むと、エドモンテも続いた。そして乗り込む時に、一度こちらに振りかえって私の顔を見るなり、舌打ちをした。


 それで終わり。いきなり物々しい感じになっちゃったけど、メリッサ王女は納得して先にお城へ戻った。


 馬車と鎖鉄球騎士団がいなくなったのを見計らって、ルシエル達がこちらにダバダバと駆けてくる。



「ようよう、どうだった? どうだったのよ! なあ、聞かせておくれよ、なあ!」



 まとわりついてくるルシエル。



「もう、やめて! ちょっと落ち着いてよ。今、説明するから」


「ようようよう、いいじゃねーか! 早く教えておくれよーう!」


「本当にやめて! 怒るわよ」


「は、はい。ごめんなさい」



 ルシエル、ルキア、カルビ、ノエル、マリン、クロエ。全員に、今のエドモンテとの醜いやり取りの所を大幅にカットして、説明して聞かせた。


 ルシエルやノエルは、それほどみたいだけれど、ルキアとクロエに至ってはさっき馬車から出てきた女の子が、パスキア王国の第二王女だと知って、かなり驚いたようだった。


 わざわざ王女が迎えに来るなんて思ってもいなかったから、まあ、私も驚いたんだけどね。


 ルシエルが言った。



「それで、どうする? 城にはオレ達、ついていけないもんな」


「うん、一緒に来てくれたら、どれ程気持ちが楽になるかなって思うけれど、やっぱりちょっと厳しいかな」


「解った。それじゃ、オレ達は王都まで一緒に行って、そこで一度アテナと別行動する事にするよ。それでいいだろ?」


「うん、ありがとう。それじゃ、予めその後の合流する段取りとかそういうのも、今のうちに決めておかないといけないね。もちろん、こっちの用事が終わる目処がたったらだけど」



 ノエルが馬車と、それを引いている牛も指さした。



「あれも一旦、どうにかしないとな」



 うーーん。ちょっともったいないけれど、パスキアにどれくらい滞在する事になるかは解らないし、馬車は諦めるしかないかな。

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