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第911話 『クロエのスープ料理初挑戦』



 途中、立ち寄った村で、購入した食材を並べる。



「ふう……水を汲んできたぞーーい!!」


「はあ、はあ……重い。水ってなんで、こんなに重いんだろう。はあ、はあ、はあ……ボ、ボク、もう駄目だ……体力は、ないよって言ったのに……なぜこんな……ぜえ、ぜえ」


「はーい、二人ともごくろうさまー」



 ルシエルとマリンが、水を調達してキャンプに帰ってきた。


 私はルシエルとマリンから、まず水がたっぷりと入った鍋を受け取ると、その水を別の鍋に少し移した。そしてその鍋を、焚火にかける。



「クロエ、それじゃまず水の入った鍋を火にかけたから、それに食材を入れていってくれる?」


「は、はい。でも、食材というのは?」


「えっとね……今クロエの目の前にある、石のまな板の上に並べたから、それを投入して欲しいかな。鶏のお肉もあるから、それは調理用のナイフで、食べやすいサイズにカットしてね。よく斬れるナイフだから、くれぐれも気を付けて」


「わ、解りました」



 クロエは手さぐりで、私が準備しておいた石のまな板と、その上に乗っている食材を見つけると調理をし始めた。頑張って、クロエ。


 まあでも、調理と言っても、大きな食材を食べやすいサイズにカットして、お鍋に入れるだけだから手を切らないようにだけ気を付ければ、大丈夫。



「アテナ!! 次はオレ達、どうすればいい?」


「そうだね。それじゃ、暫く待機していてくださーい。手を借りたくなったら、お願いするから」


『はーーーい』



 ルシエルとマリンが、揃って返事をする。そして早速マリンに至っては、焚火の横に転がってくつろぎ始めた。そんな所で転がって、ローブに火がついても知らないから。


 ルシエルも近くにカルビがいる事に気づくと、カルビを鷲掴みにして自分の方へと引き入れる。そのまま嫌がるカルビを抱きしめて、いい感じにまったりとし始めた。



「アテナ! できたぞーー!! これどうするんだ?」



 ノエルは、兎の皮を剥いで、すぐ調理できるように解体まで済ませていた。


 何処かで見つけてきた大きな葉に、二羽分の兎の肉を乗せてこちらへ差し出してくる。私は、それをクロエの方へ持って行ってと指をさした。



「クロエ。ノエルが兎の肉も準備してくれたけど、それはもうカットしてあるから、そのままお鍋に入れてくれる?」


「え? ええ、はい!」



 カットしてあるなら、なぜそのままノエルに鍋に投入してもらわないのか? そんな事を突っ込んでこないクロエを見て、今は調理にいっぱいいっぱいになって、それどころじゃないんだなと思った。夢中になっている。


 だけど折角クロエに頼んだのだから、クロエがやった方がいいと思うし、これは私の場合だけど、調理をしている時に別の誰かにあれこれと手を出されてしまうと、アレがコレでどうだったかな? と混乱してしまう場合がある。段取りもあるからね。


 最初から複数人で作る場合は、役割分担を最初から決めてそれを各自でやる方が、やりやすいと思っているし。なので、クロエにはスープを作ってもらおうって思ったので、その作業に関しては、全部任せようと思った。


 今まで料理という料理をした事がないのだろう。クロエの調理を見ていると、直ぐにそれは解った。だけど必死にはなっているものの、何処か楽しそうに見える。


 鶏肉に兎肉まで鍋に入れる。更にそこへ野菜。野菜は、火の通りにくいものから順番に投入し、加減を見る。仄かにいい香りがしてきた所で、私は調味料をクロエに手渡した。



「それじゃ、クロエ。頑張って美味しいスープを作ってみて。って言っても入れる物は入れたし、後は味付けしてしっかりと煮込むだけだけど」


「で、でもわたし、お料理なんてやった事なかったから」


「じゃあ、できるようにならないとね」


「で、でも……もし失敗したら、皆食べるご飯なのに……」



 クロエの頭を撫でる。


「最初の一歩を踏み出していかないと、美味しい料理もいつまでたっても作れないよ。それにクロエは料理の才能はあると、私が保証します」


「ほ、本当?」


「うん、本当! そのうちクロエに好きな人ができたら、その人に美味しい料理を作ってあげる事もできるもんね。覚えておいて、損はないよ」


「す、好きな人って……わたしを好きになってくれる人なんて……そんな人……」


「そう? じゃあ確かめてみよっか? ここにいる人で、クロエの事が大好きな人ーー、手を挙げて返事をしてくださーい!」


『はーーーいっ』


 ワオンッ!



 カルビも含めて、全員が返事をして手を挙げた。照れるクロエ。



「そ、そんなの駄目だわ。だって、皆女の子じゃないですか!」



 ルシエルがキシシと笑った。



「カルビは、おのこじゃぞ」


「……で、でも」


「でも皆、クロエの事が好きなんだよ。これだけ票が取れるなら、この先クロエの事を思ってくれる男子なんていくらでも出てくるよ、きっと」



 ルシエルが腕を組んで唸る。



「なるほど、流石は数多くの男を、さながらサキュバスのように誘惑してきたお姫さんは、違いますな」


「って、そんな事してないわよ!!」


「ほほう。さては、パスキア王子にもアテナのラブラブ料理を作ってやる寸法だな」


「作らないわよ!! ってルシエルの私のイメージってそんななの⁉」


「……うーーん、違うかな」


「じゃあ、なによ」


「オカッパプリンセス」


『ぶっ!』



 ルシエルのセリフに、ルキアとクロエまでもが俯いた。間違いない、笑いを我慢している。ノエルとマリンは、噴き出して笑い転げているし。



「こらーーー!! ルシエル、ちょっと待ちなさい!! オカッパプリンセスってなによ、もう!」


「ひいいいい!! 捕まったら、オカッパにされるうううう!! 長い髪が自慢なのに、オカッパエルフは嫌じゃあああ!!」


「こら、ルシエルーー!! これは、ボブカットっていうのよ!! オカッパじゃないってば!!」


「ひいいいい!! にっげろーー!!」



 またしても、ルシエルのせいで料理が脱線。こんな事をしていたら、晩御飯がとんでもなく遅くなっちゃうよ。


 だだっ広い平原を走りに走り、ブンブンと腕を振り回してルシエルを追いかける。兎に角とんでもなく早い。追いつけなかった。


 ルシエルめーー。戻ってきたら、お仕置きしてやるんだから!



「って、いけないいけない。クロエと料理の途中だったわ」



 はっと、我にかえる。慌ててキャンプに戻り、クロエと調理を再開した。

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