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第91話 『デスマッチレース その2』





 レースが始まった。騎手を乗せた総勢30羽のクルックピーが一斉に走り出す。クルックピーの鳴き声。砂煙が巻きあがる。


 早速レース開始初っ端から、3羽が先頭に躍り出た。後続と一気に距離を離していく。その顔触れは、先頭からチャンピオンのボルト・マックイーン。ガルドの所から出てきている、チギー・フライド。そして、まさかのルシエル・アルディノアだった。


 そして続いて、真ん中位にいる集団のトップに、ヘルツ・グッソーと私がいて、もっと後ろの方にジェニファー・ローランドがいた。ジェニファーは、まずは様子見といったところで、後からきっと追い上げてくる事は予想できた。


 レース会場を駆け抜け、カッサスの街から荒野へ飛び出す。――爆走。早くも、一番先頭を爆走しているボルト・マックイーンが第1チェックポイントを通過した。それに、チギー、ルシエルも続く。


 このレースは、レース場からスタートするとそのまま街から荒野へ走り出て、計10カ所のチェックポイントを通過してレース場へ戻ってくるとゴールになる。その際、第4チェックポイントを通過すると、そこから第10チェックポイントまでは武器の使用が許可されている。つまり、第4を抜けた所で、騎手同士の格闘戦が始まるという事なのだ。これが、この特別レースがデスレースと言われる由縁。


 あれこれ考えていると、第2チェックポイントも通過した。先頭は変わらず、今のところ不動を貫いている。その後続は抜いたり抜かれたりと白熱したレース展開を繰り広げている。クルックピーで駆けながらも荒野の遠くの方を見ると、ブラックバイソンの群れが一丸となって走っている光景が見えた。


 第3チェックポイントを通過。そこでヘルツが、隣に寄せて来た。



「気を付けろよアテナちゃん! ここまでは通常のクルックピーレースだけど、次の第4チェックポイントを越えたら、もはや選手達の間で、乱闘戦が始まるぞ」


「フッフッフ。楽しみね。私は、大丈夫だけどヘルツの方こそ大丈夫なの?」



 すると、ヘルツはゴソゴソと何やら武器を取り出した。――ボウガンだ。なるほど、ジェニファーもチギーも槍を持っていた。チャンピオンは、ランス。皆、騎乗戦になる事を想定して適性のある武器を用意しているんだ。



「いつかのグレイトディアーを狩った時の剣裁きを思い出すと、アテナちゃんとは、絶対に戦いたくないねー」


「じゃあ、とりあえずは共闘する? トップ入賞1位~4位まで私たちで、総取りできれば、一番な訳だし」


「ほっほー、いいね! 確かにそうだ! じゃあ、よろしく頼む! そうこうしているうちに、第4チェックポイントの立て札が見えてきた。行くぜー!!」



 第4チェックポイント通過。行く手は荒野が延々と広がっているが、所々に大きな岩山があって、それらを避けながら進む形になる。


 よそ見して岩にぶつからないように十分注意する。その事を、隣にいるヘルツに話しかけようとした刹那、近くを走る3人の騎手がこちらに向かって一斉に襲い掛かって来た。――槍。避ける。



「危ない!! ヘルツ、大丈夫?」


「おおっと! おっぶねーー! ……ああ、大丈夫! このレースでの死は、全て事故とみなされている。それで、多額の賞金だからなー。奴さんたち、俺っち達を殺すつもりで襲ってくるぞーー」



 さっき襲い掛かって来た男達……3人が再び、距離を詰めて来た。しょうがないか。応戦しよう。私も、剣を抜いた。



「やりゃああああ!!」



 同じく槍で突いてきた。その攻撃に剣を合わせていなす。そのまま、相手の脇へ剣を滑り込ませた。服に血が滲む。その男は、徐々に駆けるスピードをおとしていった。動脈近くを狙った。レースをリタイアしてすぐに治療しなければならない事を悟ったのだろう。


 それを見送ったあと、残りの二人に接近してあっさりと倒した。クルックピーから落っこちて、転がっていく姿が実に痛そう。


 私がそんな小競り合いを繰り広げている間に、私達の前を走る3人をヘルツがボウガンで狙って倒す。



「ちょっと、ヘルツ。いくら敵だからって後ろからボウガンって、ちょっと卑怯じゃない?」


「そんなこと言ったって、アテナちゃんはめちゃくちゃ強いからいいけど、俺ッちは、こういう戦い方でもしないと、とても生き残れねーぜ。それに、ホラ」


 

 ヘルツは、ボウガンに装填している矢を私に見せた。矢じりがついておらずそこには、布がグルグルと何重にも巻かれていて殺傷力を殺していた。


 なるほど。ちゃんとできる限り、相手の命は奪わないようにしているし、確かに言われてみればこれがヘルツの戦い方なのだから、一眼に非難する事はできないか。それに加えて矢を放つ時は、急所を避けて矢を放っているみたいだし。


 ――――第5チェックポイント通過。

 

 向こうの方や、あちらこちらで騎手通しで戦闘が繰り広げられ始めた。やられて、転がっていく者も多い。本当にデスレースだ。こんな感じで、ゴールまで駆けるとなると果たして何人が残っているか。


 爆走する中、私は声を張り上げてヘルツに言った。



「この分だと、先頭集団も戦闘を繰り広げていると思う。ルシエルが、心配だから私は、このまま先頭の方へ行くね」



 ヘルツは了解とばかりにボウガンを持つ手を上にあげた。



 走れ! 走れ! もっと早く走って!! 私のクルックピー!!


 第6チェックポイントと書かれた立て札の横を、私は猛スピードで駆け抜けて行った。


 







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇チェックポイント

カッサスの街のクルックピーレース。特別レースで、設けられた10カ所のチェックポイントがあり、第4チェックポイントを抜けた所で武器の使用が認められたデスレースとなる。レース中は魔法禁止だとか、騎乗するクルックピーへの攻撃は反則だとか、レースをより盛り上げる為の工夫がされている。


〇適正武器

要は得意な武器。皆、それぞれ自分にしっくりくる武器がある。


アテナ  = 剣

ルシエル = 弓

ヘルツ  = ボウガン

ジェニファー = 槍

チギー    = 槍

ボルト  = ランス

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