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第909話 『そういえばそのテント、使い続けているよね』



 まずは、テントを張ってキャンプする場所――サイトを決めないと。


 何処にしようかなーーって辺りを見回していると、ルキアが声を上げた。



「アテナ! あそこはどうでしょうか?」


「え? どこどこ?」



 木々が少し生い茂っている場所。


 特に何にもない、草だけののっぺりした平原でキャンプっていうのも、開放感があっていいのかもしれないけれど……それだとちょっと、開放感マックスし過ぎな気がして落ち着かないかも。


 でもルキアの指した場所は、いい感じに木々もあってとてもいい。



「うん、いいね。それじゃそこに、テントを張ろうかな」


「はい! 準備しますね!」



 ルキアは元気よく返事すると、ノエルと何やら組み合って、ふざけているルシエルの背中に飛びついた。目的は、ルシエルの背負っている荷物。



「うわっと!! なんだよ、ルキア!! いきなり、ビビったじゃねーか!! 急に後ろから来たから、魔物に襲われたと思っちまったぞ!」


「サイトを決めたので、テントを張るんです! ルシエルも遊んでないで、手伝ってください!」


「なんだー? 偉そうにしよってからにー、この可愛い猫娘め!!」


「きゃああっ! やめてー! っもう!」



 ルシエルが抱き着いてくると、ルキアは素早くルシエルの荷物からテントだけ奪って逃げた。


 流石、獣人って言っていいのか、ルシエルにこうやって日ごろから鍛えられているからもしれないけれど、ルキアの動きがどんどん俊敏になっていく。


 姉としても師としても、嬉しい事だけれど、ちょっとあのまだ弱々しくて守ってあげたいって思っちゃうようなルキアが、そうでなくなってしまうのは、少し寂しいような気もするけれど。でもやっぱり冒険者としては、格が上がっているって事だし喜ばしい事なのかな。



「ルシエルからテントをもらってきました。それじゃ、早速張りましょうか」


「うん、張ろう」



 ルキアはにこっと微笑むと、後ろを振り返って大きな声で呼びかけた。



「クロエ、手伝って!」


「ええ、ちょっと待って!」



 クロエがルキアの方へ行くと、カルビもそこへ駆けていき加わる。ムフフ、うちのパーティーのプリティー三姉妹だね。ってカルビは、男の子だけど。


 ルキア達がルシエルのテントを広げて、設置をし始めたので、私も自分のテントを設置した。


 よくよく考えてみると、もうパスキア王都に到着するから、まあいいんだけれど……私達のパーティーって、今6人なんだよね。それに対してテントは2つ。


 うーーん、この後マリンは、セシリアとテトラの後を追うって言っていたし、少なくともまた王都を旅立つ時かそれまでには、別れる事になる。


 そしたら、5人か。その時にクロエが、自分の目を治療する為に、それが可能な魔法を探し求めて私と一緒に行動を共にするか、治療に関する知識に明るいマリンについて行っちゃうのかは解らないけれど、私と共にきてくれた場合は、5人な訳だしその場合……やっぱりテント2つだけっていうのはなー。少ないよねー。


 更に思うんだけれど……


 ルキア達がせっせと頑張って設営しているテントに、チラリと目をやる。



「あれ、私がルシエルにあげたテントなんだよね」



 まだルシエルと知り合って間もない頃、ゴブリンの強襲でテントを破かれた。それで新しいテントを購入したんだけれど、ルシエルがテントを持ってないっていうので、それまで使っていた物をあげた。


 修繕すればまだもう少し使えるだろうって、そうしてズルズルと使い続けているけれど……そろそろ限界だよね。遠めに見ても、年季が漂ってくる。



「よーし!! 決めた!!」


「え? 何を決めたんですか?」



 ルキアが目を丸くして聞いてきた。



「パスキアの王都へ着いたら、私がルキアにテントを買ってあげよう」


「えええ!! で、でも私……それなら自分で……」


「えーー、テントって結構高いんだよ。だから冒険者って、だいたいテントも使わずに毛布だけ持って、野宿とかするんだよね。でも私は、キャンプが趣味だからテントを買うの。ルシエルのテントもそろそろもう寿命だから、私がプレゼントするわ」


「えええ!? でも、それはちょっと!!」


「嫌?」


「嬉しいです!! でもアテナには、ドワーフの王国で太刀をプレゼントしてもらいましたし、本当なら私の方が色々してもらっているアテナに何か……」



 そうだった。そう言えばルキアとルシエルには、太刀をそれぞれプレゼントしたんだった。想像していたよりも、二人とも気にいってくれたみたいで、とても嬉しいなって思っていた。



「いいの、いいの! ルキアは、私の大切な可愛い妹なんだから」



 そう言ってルキアの頭を撫でると、ルキアは顔を赤くしてもじもじとした。隣にいるクロエの表情に気づいて、私はクロエの頭も優しく撫でた。



「もちろん、クロエも私の可愛い妹だからね」


「え? わたしがアテナさんの……」


「そうだよ。お姉ちゃんって呼んでもいいよ。あっ、そうだ! ルキアに買ってあげるテント、なんならクロエと一緒に使えばいいんじゃないかしら!! 各々で使いたいっていうのなら、クロエにも買ってあげるけど」



 ルキアとクロエの顔が、ぱあっと明るくなる。



「そうします! 私、クロエと一緒にテントを使いたいです。いいよね、クロエ」


「わ、わたしと一緒でいいんですか? ルキアは一人で使いたいんじゃ……」


「私はクロエと使いたい。一緒に使いたいんだよ!」



 手を取り合って、嬉しそうに向かい合うルキアとクロエ。うんうん、なんて可愛い娘っ子達だろうね。


 ふと向こうへ振り返ると、ノエルに馬乗りになって何か騒いでいるルシエルと、マリンの姿が目に入った。私は、そんなものは見ていないと記憶を瞬時に消して、再びルキアとクロエの方へ視線を移して、可愛い二人に癒された。

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