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第854話 『熱いお風呂で雑談タイム』



 ざぷーーーーんっ


 身体を綺麗に洗って、湯舟に4人で仲良く入る。



「ああーーーーー」


「はあーーーーー」


「うーーーーーー」


 ワウーーーーー。


 

 唸ってしまう。結構熱めだけど、この後にルシエル達も続くし、このくらいでちょうどいいかも。でもこれ、超絶気持ちいい。ああーーー、どうしてこういう気持ちのいいお風呂に入ると、こんな身体の奥から漏れ出るような声が、溢れてくるんだろう。


 タオルを手に取ると、畳んで自分の頭に乗せる。ついでに同じようにして、クロエとカルビの頭にも乗せた。



 ワウ?


「ええ!! 私も!! アテナ、私もそれしたいです!!」


「えーー。やってみていいよ」


「アテナが乗せて下さい! クロエにしたように!!」



 縋りつくような表情で、駄々をこねるみたいに頼みこんでくるルキア。私はルキアのタオルを手に取ると、畳んで彼女の頭の上に乗せた。



「わあ、ありがとうございます」


「いえいえ、どーいたしまして」



 大きなお風呂。暫しそこで、ルキア、クロエ、カルビと4人で仲良く並んで、同じ方向を向いて湯につかる。皆、マッチ棒みたいに目を細めている。すると窓から、風呂場の方へ夕陽が差し込んできた。



「はあーーー、いいよね。こういうの、最高」


「はい! とても気持ちいいです。生き返るみたいです。リアやルン達にも、こういうお風呂の事を教えてあげたいです」



 お婆ちゃんが言ったらさまになるんだろうけど、9歳のルキアが「生き返るみたい」ってセリフを言うなんて……思わず笑ってしまう。


 そういえばルキアの妹のリアは、私の妹のルーニや、エスカルテの街のギルドマスターのバーン・グラッド達と協力してカルミア村の復興を行っているらしい。


 ルーニが絡むとなると、お父様も絡むだろうし、カルミア村は盗賊達に破壊された以前よりも遥かに発展していそう。



「ルキアは、こういうお風呂に入った事ないの?」


「はい。うちは焚火でお湯を沸かして、大きな桶に注いで、そこに入って身体を洗っていました。カルミア村の近くには、川もありましたし、そこで身体を洗う事も普通でしたから」


「そうなんだ。それじゃーさ、リアとルーニにこのお風呂の事を話して、カルミア村にも大きなお風呂を作ってもらったらどうかな?」


「え? 大きなお風呂ですか?」


「うん、とびきり大きいのもいいね。そしたら、公衆浴場にしてさ、カルミア村の皆がお風呂を楽しめる場所にするとか」


「そ、それ、凄くいいです!! そしたらリアやルンやクウ、ミラールにロン! 皆、喜びますね」


「公衆浴場なんて、エスカルテの街にもなかったからね。きっと他の街や村から、カルミア村に人が押し掛けるかもしれないね。あっはっはっは」



 笑い話も含めていたつもりだったんだけど、話しているうちに結構アリだなって思った。



「本当はカルミア村に温泉があれば、もっといいんだろうけどね」


「温泉……ですか? アテナは入った事があるんですか?」


「残念ながら、まだないかな。クラインベルト王国にも、探せば天然の温泉ってあると思うんだけどね。残念ながらまったくそういった情報を、手に入れられなかったんだよ。でも何処かにあると、私は思っている」



 そういうと、ルキアは急にはっとしてポンと手を叩く。



「あれ? そういえば、今思い出しましたけど、私達温泉に入ってますよ!」


「え? 何処で? そんなの入ったっけ?」


「はい、ドワーフの王国で」


「ド、ドワーフの王国……っあ!! もしかして!!」


「はい。ベップさんとユフーインさんの宿。あそこは、天然温泉ってユフーインさんに聞きました。ファムも、何かの時にポロっと言っていたような気がします」


「あーー、確かに。確かにあそこの湯は、温泉だったと思う。そうだね。それじゃ、私達温泉に入っているね。はははは」


「はい、入っていましたね」



 ルキアと笑う。すると、クロエが小さな声で呟いた。



「わ、わたしは温泉に入った事がないです……」



 はっとする、私とルキア。そういえばクロエは、ブレッドの街から一緒になったから、もちろんその前に旅していたノクタームエルドや、ガンロック王国での事を知らない。


 旅の道中、今までの事を話したりはしたけれど、一緒に経験はしていないのだ。


 …………


 熱めのお湯。のぼせたのか、カルビがスイーっとお風呂から出ようとする。クロエはそんなカルビを両手でキャッチすると、自分の方へ引き寄せて抱きしめた。なんとか脱出しようとするカルビ。それでも抱きしめたままのクロエ。やがてカルビは力尽きて、項垂れてしまった。



「そうだ! そういえば、私が入りたいって思っている天然温泉があってね。その手のそういう温泉好きな人たちの間では、秘湯とかとも呼ばれているんだけど、本当に山とか森の中とかに天然の温泉があったりするんだって。いつか、皆でそれを探して入りに行こうか」


「は、入りたいです!! わたし、入ってみたいです!」



 カルビを抱いている腕に、ぎゅっと力を入れるクロエ。カルビから何かが出るかもしれない……



「それいいでね! 私も! 私も入ってみたいです。でもそういう天然の温泉って、どういう感じでしょうね」


「源泉だからね、熱いと思うよ。それにその場所場所で効能とかもあってね、美容にも良かったりするみたいだよ」


「び、美容ですか」


「そう。ルキアとかクロエは、ただでさえピッチピチだから、そんな温泉に入ったらもうプルンプルンになっちゃうかもね。ええーーーいっ」


『きゃああああ』



 そう言ってルキアとクロエ、二人をいっぺんに抱きしめた。悲鳴をあげるも、楽しそうに笑う二人。これはもう、パテルさんに沢山感謝しないといけないな。


 ガラッ


 4人でゆっくりとお風呂を楽しんでいると、急に戸が開いた。そこに立っていたのは、真っ裸のルシエル。



「やーやー、やっとるかねーー」


「どうしたの? もう出るから、ちょっと待っててくれる」


「嫌だ、オレらも一緒に入る」



 ら?



「らってなんなの?」


「そうれい!! 皆仲良く入るぞーーう!! オレ様に続けーー!!」


「仕切るなよ」


「わーーーい」



 ルシエルが拳を振り上げて風呂場に入ってくると、その後ろからノエルとマリンも飛び込んできた。



「ちょ、ちょっと待って!! いくら広めのお風呂って言ったって、7人じゃ入れないでしょーが!!」



 だけどルシエルとマリンは、話を聞かない。ノエルもちゃっかりとついてくる。



「はいーー、ちょっとそこ詰めてくださーーい」


「はあーー。これはいいね。端的に言って、とても温まるよ」


「端的に温まるって、おかしいだろ」



 っもう!! 皆!! いくらなんでも、折角ののんびり入っていたお風呂が台無し。


 だけどこの状況に、ルキアやクロエは大笑いしていた。


 ……フフフ……うん、私も笑っている。

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