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第812話 『袋小路 その2』



 ローグウォリアーに向かって、剣を突き出す。そして打ち合った。


 幅の狭い路地での戦闘。剣は、大きくは振らずに、素早くコンパクトに振る。対してローグウォリアーは、ショートソードを使用していて、この路地での戦闘にまさに適していた。しかもビーストウォリアーのような怪力もないが、この私よりも小柄な身体だがそれに伴って素早い動きと、正確な攻撃を仕掛けてくるのが厄介だった。


 ギン!! ギイイン!!


 路地に響き渡る金属音。火花。ローグウォリアーの攻撃は、まるで小さな竜巻だった。


 私とシェルミー、そしてシェルミーの護衛の男、計3人の攻撃をたった1人で凌いでいる。


 やはり剣術や戦闘技術においては、奴の方がビーストウォリアーよりも圧倒的。本当に警戒するべき敵は、ローグウォリアーの方かもしれない。


 僅かに隙が見えたので、私は剣を振りながらも叫んだ。



「シェルミー!! 今だ、いけ!! そしてあのドルガンド帝国兵士を捕まえてくれ!!」


「うん、まっかせて!!」



 剣速をあげる。高速での連続攻撃は、私の得意とする所だ!!



「たあああああ!!」


「ほう、剣速が上がってきた。この分だと、まだまだ早くなりそうだな。しかし!」



 ローグウォリアーがたじろぐ程に、打ち込む速度を上げる。その隙をついてシェルミーと護衛の男が、上手くすり抜けた。ローグウォリアーを、後に走り抜ける。よし、これでローグウォリアーを私が抑えれば!!



「ローザ・ディフェイン。流石はクラインベルト、国王直轄の騎士団長というだけの事はある。正直、それは単なる名誉職だと思って侮っていたよ」


「そうか。それなら、クラインベルト王国の騎士団の更なる力を見せてやろう!!」



 名誉職と言われて、内心はドキリとした。図星だったからだ。


 アテナの口添えがあってそうなった事は、この私が一番理解していた。だが私は、アテナや国王陛下直轄騎士団として、役目を与えてくださった陛下の期待に、お応えしたい。


 ローグウォリアーに振るう剣に力が入る。どちらにしても、これでドルガンド帝国兵士は、追い詰めた。


 しかし次の瞬間、ローグウォリアーの脇を駆け抜けるシェルミーと護衛の男の動きが止まる。そこから2人は、まるでズッコケたかのように派手に転んだ。


 二人の足には、ローグウォリアーが咄嗟に放ったロープが巻き付いていた。


 更に後方から、とてつもない殺気。



「うおおおお!! やっと追い付いた!! そうそう逃がさんぞ!! お前達、逃がさないからな!! ちょっと待ってろ、直ぐにそっちへ行く!!」



 私達が路地に入り込んだ方から、大声でそんな言葉が聞こえた。振り向くと、猛烈な勢いでビーストウォリアーがこちらに向かって突進してくる。これは、まずい!!



「ビーストウォリアー!! ここは、任せたぞ!!」


「うおおお!! 任されたあああ!!」



 ローグウォリアーは相棒にそう言うと、倒れているシェルミーと護衛の男を軽く跳び越える。そして疾風のように路地の更に奥、ドルガンド帝国兵士がいる方へと駆けて行った。



「シェルミー!! ロープを斬って直ぐに、ローグウォリアーの後を追いかけて!! ここは私が防ぐ!!」



 頷くシェルミーと、その護衛。



「何処へも行かさん!! 全員、ここで私に叩き潰されるのだ!!」



 ビーストウォリアーは、鉄の棒を手に持っていた。それを思い切り振りかぶると、目前まで迫ってくる。


 私は、ビーストウォリアーに向かって行くと、振り下ろされる鉄の棒を剣で上手く弾いた。


 まともに受ければ、剣を折られかねない。しかし少し芯を外して弾き返せば、反撃のチャンスが生まれる。



「たああああ!!」


 ガキイインッ



 斬った!! っと思った。だが直ぐに、十三商人のアーマー屋、ダニエル・コマネフの商品をビーストウォリアーが身に着けている事に気づく。


 この剣で、ビーストウォリアーを斬るならば、アーマーで守られていない場所、もしくはアーマーそのものを斬るしかない。だがこれ程固いアーマーを斬るならば、咄嗟の攻撃じゃとても斬り裂けない。


 せめてここが広場ならば、もっと大きな攻撃ができるのに!!



「はっはっはっは!! どうした、ローザ・ディフェイン!! その剣は、ナマクラではなさそうだが、アーマー屋ダニエル・コマネフの販売するアーマーには通用はしなかったようだな。いや、ただ単にお前の剣術が未熟なだけかもしれない。だって、そうだろ? お前はここで、名刀でも伝説の剣でもなく単なるそこらで拾った鉄の棒に、打ち殺されるのだからな」



 強打!! まともに正面からビーストウォリアーの攻撃を受けてしまった。衝撃で、身体が後方へずれる。なんて怪力だ。


 しかし……


 咄嗟に振り返ると、シェルミーと護衛の男の足に巻き付いたロープを斬る。2人は振り返りもせずに、ローグウォリアーの駆けて行った方へと一直線に駆けた。


 私は、ビーストウォリアーにニヤリと笑ってみせる。



「これでシェルミー達は、あの男を追い詰めてきっと拘束する。お前はここで、足止めだ」


「うおおおおおお!! あじなまねをしやがってええ!!」



 激高するビーストウォリアー。鉄の棒が折れるのではないかという位に強く握り、私めがけて振りかぶる。


 この攻撃は避けた方がいい。バックステップでさっと避ける。今度こそビーストウォリアーを斬り倒してみせる。


 剣を構えて迎え撃つ。


 だが頭上から一つの影が、ビーストウォリアーの上に降りてきた。ビーストウォリアーは、その影に斬りつけられて雄叫びにも似た悲鳴をあげると倒れた。



「どうやら間に合ったようでやんすね」



 目を向けると、そこにはなんと私達の仲間のメイベルがいた。メルクト共和国のAランク冒険者、メイベル・ストーリ。彼女がいきなり私の目前に現れ、なんとビーストウォリアーを倒したのだ。



「メイベル!! どうして、ここへ⁉ ボーゲンやミリス達と共に、ビルグリーノの一団に加わってテラネ村へ向かったんじゃ……」


「話はあとでやんす。それよりも、追いかける方が先でやすよ。察するに、ローザたちが追っている男、あっしがリーティック村で不審に思って声をかけたドルガンド兵士でやんしょ」


「この国に入り込んでいる間諜だ。きっと、『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』と組んで、この国で何かよからぬ事を企てているに違いない。追いかけて情報を聞き出すんだ!」



 頷くメイベル。そして倒れているビーストウォリアーに目を向けた。



「ここはあっしに任せて、先を急ぐでやんすよ。ここはそういうストーリーでやんしょ」


「解った。じゃあ、メイベルに任せる」


「それじゃ、俺もここに残ろう」

 


 ビーストウォリアーは、メイベルとシェルミーの護衛に任せ、私とシェルミーはドルガンド帝国兵士を捉えるべく、もっと路地奥へと進んだ。

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