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第802話 『シェルミー奮闘』



 ロドリゲスは、ビーストウォリアーを床に叩きつけると、更にその上から何度も豪快なパンチを打ち込んだ。


 パンチの軌道はしっかりと顔面を捉えてはいるものの、ビーストウォリアーは両腕でしっかりとロドリゲスの連打を防いでいる。



「ロドリゲス、下がれ!! そいつらは危険だ、私が相手をする!!」


「うがあっ!!」



 聞こえていない! ビーストウォリアーは、ロドリゲスの隙をついて彼の足を掴んで引っ張る。体勢を崩すロドリゲス。ビーストウォリアーは、素早く立ちがるとロドリゲスの顔面に、お返しとばかりに大ぶりなパンチを放った。


 バシイイン!!


 木片が粉砕する位の勢いで、頭に投げつけられてもビクともしなかったロドリゲスの身体が大きく揺れる。シェルミーの悲鳴。振り向くと、シェルミーが倒れており、彼女と戦っていたローグウォリアーが物凄い勢いでこちらに駆けてくる。これはまずい!!



「だあああああっ!! うおおおお!!」



 ロドリゲスのピンチだと悟った私は、渾身の力を出して、身体の上に乗っていた瓦礫を押しのけた。そしてよろよろと立ち上がった。刹那、二人の刺客の雄たけびが、再び(こだま)した。



「ビーーストウォリアーーー!! そのデカイのから始末するぞおおお!!」


「よっしゃ、行くぞーーーおおお!!」


「うがあ……?」



 まだ少しよろめいているロドリゲス。私は慌てて加勢に入ろうとした。だが二人の刺客の方が若干早かった。



『喰らえええ!! 必殺!! ビッグザマウンテンボム!!!!』



 ローグウォリアーが、ロドリゲスの腕と首を掴んで拘束すると同時に、ビーストウォリアーが組み付いて彼の巨体をぶっこ抜く。宙に持ち上げると、二人掛かりでロドリゲスの身体を頭部から床に思い切り叩きつけた。


 バギャアアッ!!


 またもや破壊される床。刺客二人の合体技の破壊力は強力で、ロドリゲスの上半身は、床を突き破って体半分が地面に突き刺さっているような状態になった。ピクリとも動かないロドリゲス。



「ロ、ロドリゲス……」


「うああああああ!! お前達、ロドリゲスを!! 決して許さないわ!!」



 いつの間にやら復活していたシェルミーが逆上して、三日月刀(シミター)をブンブンと振って刺客2人を攻撃する。まずい! このままでは、シェルミーもあの『ビッグザマウンテンボム』とかいう合体技の餌食になってしまう。


 直ぐに助太刀しようと剣を拾い、シェルミーの方へ駆けよろうとすると彼女が叫んだ。



「ここは任せて!! 今ならまだ間に合うから!!」


「え? いや、しかし!!」


「いいからっ!! こう見えて、私なかなか強いんだから!! それよりも、後を追って!!」



 後を追う! つまりシェルミーはあのどさくさに紛れて逃げた、ドルガンド兵の事を言っているのだと思った。見られていたのか……だが、時が経ちすぎている。もう完全に見失ってしまっている。


 それをシェルミーに言おうとしたら、シェルミーとロドリゲスが入ってきた部屋の入口から、別の誰かが顔を覗かせている事に気づいた。その姿は黒づくめで、頭には黒いターバンを巻いている。シェルミーの護衛だ。



「早く、こっちへきてください! あのあなたが追っていた帝国兵士は、別の者が追っています。直ぐに後を追えば、きっと捕まえられますよ」


「わ、解った。だが……」



 振り向くとシェルミーが、刺客二人に奮闘している。このまま彼女をここに放っておいていいのか。そんな私の不安を感じとっているかのように、護衛の男は言った。



「大丈夫です。ここへはシェルミー様とロドリゲスが先に突入しましたが、間もなく他の者達も雪崩れ込んできます。むしろ、不利になるのはあの刺客2人ですよ」


「……解った! それじゃ、あの男のもとへ連れていってくれ!」



 護衛の男は頷くとこっちだと手招きをしたので、それに従った。部屋を出ようとした所で、そうはさせまいとシェルミーと死闘を繰り広げているはずのローグウォリアーが、隙間を狙ってナイフをこちらに飛ばしてきた。



「逃がさん!! スローイングダガー!!」



 狙いは急所。私の喉元に跳んでくるナイフを、護衛の男が横から飛び出してきて剣で見事に払い落とした。



「さあ、早く!」


「ああ、解った! シェルミー、どうか耐えてくれ!!」


「ここは任せて、早く行って!! 直ぐにまた追いかけるから!!」


 ギイイン、ギイイン!!



 ビーストウォリアーは、部屋に置いてあった金槌を手に取り、それでシェルミー目掛けて襲い掛かっていた。そして、ローグウォリアーも両手に持つ二刀のダガーでシェルミーを狙う。


 護衛の男にまたも急かされて私は部屋を出ると、そのまま廊下に出て階段を一気に下まで駆けおりた。ここはどうやら、集合住宅だったようだ。


 階段を下りて行き、一階へ到着するという所で、逆に物凄い勢いで階段を登ってくる黒づくめの男達とすれ違った。すれ違うだけで解る、相当腕の立つ男達。これならシェルミーとロドリゲスは、きっと大丈夫だろう。


 建物の外に出ると、またそこは沢山の人が行き来している通りだった。


 私を案内してくれる護衛の男が、露店が沢山並んでいる方を指さして言った。



「あちらです!! ついてきてください!!」


「案内すまない!」



 露店が沢山並ぶ道。往来する沢山の人を避けながらも、その道を進んでいき抜ける。すると今度は、少し落ち着いた場所に出た。護衛の男がまたもや指をさす。



「あそこです。見えますか、あの店」



 Bar『無法酒場』。



「ドルガンド帝国兵士。奴を仲間がつけましたが、それに気づいてあの店に入ったようです」


「さ、酒場にか」


「ええ。しかも見張っていましたが、男はあそこに入ったまま、まだ出てきていないそうです」



 なるほど、つまりようやく追い詰めた。袋の鼠という事だ。


 待っていろ。間もなくお前を捕まえて、リーティック村で何をしていたのかとか、メルクト共和国になんのようだとか色々と聞き出してやる。


 そうすれば、きっとこの国を救う為の、何か有益な情報が手に入るはずだ。

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