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第800話 『大技、再び!』



 死――一瞬、そんな言葉が脳裏をよぎった。しかし私は最後の時まで……いや、最後の時なんてない!! 微塵も諦める気はなかった。


 クラインベルト王国の誇り高き騎士だから――まあ、それもあるだろう。陛下から下った任務を、道半ばで投げ捨てるという事などできないから――その通りだ。しかしそれだけではない。


 今までの私は、誇り高きディフェイン家の騎士でそれに恥じない働きと、輝かしい功績を積み重ねる事。日々鍛錬をし、セシル国王の剣とならんがため。それだけにすべてを捧げて、糧としてきた。


 だが、今はそれ以外に楽しみができた。


 任務の為、大義の為とは言え、テトラやセシリアと出会えた事を幸せに思う。つらい思いをする事もあり、思い通りにいかない事もあるが、仲間との旅はとても楽しい。



「さああ、どんどん私のミスリル製ワイヤーがお前の首に、喰いこんでいくぞ!! 絶望は、一瞬だ、さあ早く楽になれ」


「ぐぐぐ……」



 まだまだ私は楽しみたい。それに約束がある。アテナやルシエルと、また再会してキャンプをするんだ。一緒にキャンプをしたり冒険すると、約束をした。それを私はとても楽しみにしている。


 アテナが約束をしてくれたというのは、必ず果たされる。アテナとのキャンプは確約されたのだ。ぐふふふ……そ、そしたらその時の事を、色々今から考えているが……その時は、アテナにわがままを聞いてもらって一緒のテントに入れてもらって……


 そうだ!! わざと毛布とか寝袋とかそういう余計な物は忘れて行こう。


 そうすれば、慈悲深く慈愛に満ちたアテナの事だ。きっと「もうローザったら。でも仕方がないから、こっちへいらっしゃい」と言って、一緒の毛布に入れてくれて、そして忘れられない一夜に……とうぜん、私は「寝る時は自分はいつも、裸ッス」って言うから……アテナと……でゅへへ……でゅへ?



 ブブーーーーーッ!!



「うぎゃああああ!! な、なんだ!? 何事だ!! 大量の鼻血だとおおお!!」


「アテナーーーー!!!!」



 叫んだ!! これは、断末魔じゃない。自分に気合を入れる為!!


 いきなり突然の鼻血噴火と雄たけび程度で、ローグウォリアーが私の首に巻き付けたワイヤーを解いて、私から離れるとも思えない。だが、ほんの僅か一瞬の動揺でも誘うには、十分だったようだ。



「うがああっ!!」


「なっ!! 貴様、無茶苦茶だぞおお!!」



 ローグウォリアーを背負ったまま前転、そして先程ローグウォリアーと打ち合っている時に叩き落とした彼女の持っていたダガーを手に取ると、それを背中に張り付いているローグウォリアーの太腿に突き刺した。悲鳴。



「ぎゃああああっ!!」



 ワイヤーが緩んだ隙をついて、抜け出す。そして間髪入れずに拳を強く握って、ローグウォリアーの顔面に打ち込んだ。


 ローグウォリアーはそのまま派手に吹っ飛び、私はその隙をついて自分の剣を拾い上げるとそれをローグウォリアーに向けた。



「ハハハ!! 形勢逆転だ!! あのドルガンド兵士はまたしても逃がしてしまったが、このリベラルにいると解った以上、また見つければいい。それよりも、ローグウォリアー。貴様との決着をようやくここでつけられるな!!」


「くっ!! それはこっちのセリフだ!!」



 ローグウォリアーに向けて駆けると、剣を振った。同時にローグウォリアーも太腿に刺さっているダガーを引き抜くと、それを手に構えて私の攻撃に備える。


 二十合は打ち合った。だが傷はローグウォリアーの方が重く、足を負傷しているので素早く動いたり、得意なアクロバティックな動きはできない。一方、私は腕力で圧倒できる。



「ここだ!! チェックメイト!! ソードスラッシュ!!」



 ローグウォリアーが怯んだその時を狙って、渾身のソードスラッシュを放った。肉食獣のように姿勢を低くして、力を溜めて瞬発的に爆発させる。思い切り地面を蹴って、振り抜いた。



「たああああああ!! ソードスラッシュ!!」



 ローグウォリアーと交差する所で、横一線に剣を振り抜く。


 ……つもりだったが、また身体が何かによって静止させられた。剣が振り抜けない。



「なっ!! 今度は、なんだ!!」



 振り返るとローグウォリアーと同じ仮面、ボロボロのローブを来た筋肉質の女が、私が振り抜こうとしていた剣を握る腕を掴んでいた。



「ビーストウォリアー!!」


「はっはっはっは!! よくもまあ、私の名前も覚えてくれていたとはなあ。ありがとよ。そしてさようなら。ふはは」


「何⁉ ま、まさか!!」



 ビーストウォリアーは私の腕を掴んだ所から、タックルを入れて組み付いてきた。まさか、あれがくる!!



「よっしゃーーいくぞおおおお!! ついてこーーい、ローグウォリアー―!!」


「っしゃああああ!!」



 二人に腕やら捕まれ、身動きできないように組みつかれる。そこから、力任せに二人にフワっと宙に持ち上げらると、そのまま地面目掛けて叩きつけられた。



『喰らえ、必殺ううう!! ビッグザマウンテンボム!!!!』



 リーティック村で、私がこの二人にかけられた大技。この技を喰らって私は、負傷をして暫くテトラ達と行動を共にできなくなった。


 身体を抑えられ固定されて、完全に受け身ができなくなっている所を、二人がかりで背中から思い切り地面に叩きつけられる大技。喰らうと、大ダメージを受ける上に、叩きつけられた衝撃で息ができなくなる。


 もう二度と、喰らわないと思っていたが……


 ドドーーーーンッ


 とんでもない衝撃が身体に走る。


 建物の屋上で戦っていた私は、その屋上の地面を突き破って下のフロアへと落ちた。

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