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第799話 『あの時とは、違う!』



 剣を掲げて、真上から攻撃を仕掛けてきたローグウォリアーの一撃を防ぐ。衝撃。そこから反撃。攻撃を受け止めてから、弾き飛ばしそのまま突いた。


 しっかり胸元を狙って素早い突きを放ったのに、ローグウォリアーは宙で身体を捻って、器用に私の突きをかわした。素早い動きの上にアクロバティク、そして小柄なので攻撃も当てにくい。


 だがしかし、ここで会ったが百年目!! 今度は、私がお前を倒す番だ!!



「ぐっ!! 鋭い突きだ!!」


「ローグウォリアー!!」



 ローグウォリアーが着地すると同時に、剣を構えて一気に距離を詰める。すれ違いざまに、横一線に剣を振り抜く。



「ここで仕留めてやる!! 喰らえ、ソードスラッシュ!!」


 ギイイインッ



 ソードスラッシュは、剣士にとってはスタンダードな技で、瞬発力で相手に突っ込んですれ違ういざまに横一文字に相手を斬り裂く技。だがこの手ごたえと金属音。ローグウォリアーは、見事に私の一撃を防いだ。


 私は直ぐにローグウォリアーの方へ向き直ると、更に剣を振って踏み込む。



「やあ! たああ!! とりゃああ!!」



 当たらない。ローグウォリアーの軽やかな身のこなしは見事なもので、私の攻撃を全て避けている。



「フッフッフッフ、むきになると余計に攻撃は単調になり、あたならくなるぞ。追い詰めていたつもりらしいが、今は追い詰められているのはお前だな。ローザ・ディフェイン!」



 ボロボロのローブに、仮面。そしておそらくは魔道具なのだろうが、声も変えていて、もとの声質どころか年齢すら解らない。唯一解るのは、胸がある事から女という事。あとは、『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』からの刺客という事。


『闇夜の群狼』には、それぞれ幹部がいて組織の利益の為に様々な事に担当しているグループがいると聞いた。奴隷売買に、武器の密売。麻薬の栽培と販売。略奪や誘拐。そして暗殺――


 間違いなくこのローグウォリアーは、暗殺専門チーム。だからこんなにも手ごわい。



「うおおおお!!」



 どうせ、ちまちまと攻撃していてもこのローグウォリアーには、通用しない。身のこなしだけじゃなく、洞察力も物凄いし、私の攻撃を避けるだけでなく、弾いたり受け流すこのテクニックはかなりのもの。


 ならば!! この一撃にかけて、思い切り素早く剣を振る。



「たああああ!!」


「今度はかなり素早い一撃だ。しかしな」



 今度は避けられない。捉えたと思った。身体の大きさから言っても、きっと私の方がパワーはある。避けられずにこの攻撃を受け止めるなら、その手に持っているダガーをこのまま弾き落として、そこからとどめてやる。


 ギイインッ!!


 ローグウォリアーの持っていたダガーを弾き落とした。素早い動きやテクニック、そして軽やかな身のこなしに関しては、私は彼女に及ばないかもしれない。だが、どうやら腕力は私に分があったようだな。



「一つ言い訳をさせてもらうとだな。あのリーティック村での時は、本調子ではなかった。これが私本来の力だ。たああああっ!!」



 ローグウォリアーに向かって、剣を振り下ろす。狙いは、脳天。そこから仮面を両断するつもりで剣を振った。ローグウォリアーの身体が一瞬沈む。どちらかに跳んで回避するつもりなのだろうが、そうはいかない。いくら素早くとも、今度は私の剣速の方が早い!!


 ここで殺してしまう事になれば、それは仕方ない。あいつを逃がすよりは……ちらりとドルガンド帝国兵士の方を見る。するとあの男は、この場をローグウォリアーに任せて隣の建物へと飛び移っている。


 ローグウォリアーを真っ二つに……したと思った。



「なっ、なんだ!?」


「フッフッフッフ、どうした? 今日は本調子なのだろう? もしかしてこれが本調子なのか? もしそうだったら、お前の本調子と言うのは、調子が悪い時と特に何も変わらないな」



 ローグウォリアーを両断しようと振った剣が、そのローグウォリアーの顔面寸前の所でピタリと止まっている。何らかの力で、剣が止められているのは確か。いったい何が起こっているか――



「解らないか? もしかして、これが見えないとか?」


「何が見えないって……」



 ローグウォリアーは、両手を私の方へ掲げるように前に突き出していた。そしてその手は、何かを握っているような……線!?


 私とローグウォリアーの目前に、何か光る線が見えた。



「やっと気づいたか。ワイヤーだよ。それもミスリル製の特注品、絶対に斬れない」


「くっ!! こざかしい真似を!!」



 再び剣を振ってローグウォリアーを攻撃した。しかし、完全に体勢を整えているローグウォリアーは、私の攻撃を軽く避けると、私が大振りになったタイミングに合わせてジャンプして後ろに回り込んだ。



「ぐああっ!!」



 ワイヤーが首に巻き付いている。ローグウォリアーは、私の背後を取ると同時に、極細のミスリル製ワイヤーを首に巻き付けるという技をやってのけた。首にワイヤーが深く喰い込む。



「ぐああああっ!! くそ!!」


「咄嗟に首とワイヤーの間に、持っている剣の柄を入れてガードするとは……やるな、ローザ・ディフェイン。クラインベルトの平和ボケしているそこら辺の騎士団長なら、これでもうポンって首が飛んでしまっているだろう。流石は『青い薔薇の騎士団』の団長と言ったところか」


「うおおおお!!」



 右手に持つ剣の柄に加えて、左手の指も首とワイヤーの間に突っ込む。どうにか抜け出さないと、これは本当に首を飛ばされる。



「ゲームオーバー。ローザ・ディフェイン。お前はここで、この私に首を刎ねられて、メルクト共和国を平定する為の任務から脱落する。だがお前が美しく、強い剣士だという事は私の記憶に永遠にとどめておこう。それではさようなら」



 背後にいるローグウォリアーの脛を思い切り蹴って脱出しようとしたけれど、脛を狙って放った蹴りは空振り。


 ローグウォリアーは避ける動作と共に私に負ぶさった。ローグウォリアーの体重で、私の首に巻き付いているワイヤーは更にキリキリと音を立てて締め上がった。

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