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第796話 『ローザとシェルミーの予定』



 シェルミーからもらった、リベラル十三商人全ての名前の入ったメモ。それを見つめる。



「我々は、誰から調べるか……だな」


「そうねー。とりあえずアーマー屋、コンサルタント商、薬屋はテトラに任せたでしょ。それでもってセシリアは、フルーツディーラーのデューティ―・ヘレントのもとに行ってくれているから……」


「リッカーとボム・キングもだ。リッカーはアローが調べてくれているし、ボム・キングについても、テトラの知り合った冒険者レティシア・ダルクが調査してくれている」


「そうなんだ。それじゃあ、結構絞れてきたんじゃない?」



 絞れてきた……っと言っても、良くて接触するだけだろう。そこから怪しいと思った者の正体を暴いていく訳だが、それでは時間がかかりすぎる……でもだからと言って、今のところはこれしか方法が浮かばない。



「そう言えば、やっぱり情報屋のリッカーが怪しいよね。私達ももめたし、彼の住処に最初に行ったけど……その時の事、覚えている?」


「ああ、覚えている」



 リッカーの住処は、街のまともな者なら、けっしてうろつかないような路地裏にある、廃墟のような場所にあった。そしてとても正常とは思えないような子分達を連れていた。目のくぼみ、やせこけた身体、紫がかった唇に、こけた頬。まるで死人のよう……


 あれらは、以前にクラインベルトの王都にあるスラムで一度見たことがある。最初は、煙草や水煙草を吸ってただ転がっているように見えたが、あの感じはそれによるものだけじゃない。(ドラッグ)だ。



「麻薬中毒者が沢山いたな。それもかなり重度の者もいた」


「セシリアは気づいていたのかどうか解らないけれど、テトラはただ単にガラの悪い連中位に思っていただろうね。だけど流石、ローザだね」


「ずっと前、王都のスラムで中毒者が出て問題を起こした。極めて中毒性の高い麻薬だと解り、それが蔓延しないように陛下は私達騎士団に早急なる対処を望まれてな。それで王都及び、クラインベルト王国に麻薬が蔓延るのを未然に防ぐ事ができた」



 麻薬――クラインベルト王国は、奴隷売買の他にも麻薬なども禁じている。罪としても、とても重い。なぜなら麻薬は人を変える。その人をその人でなくし、快楽と共に絶望を与え、場合によっては理性を消失させ幻覚を見せ凶暴にし、やがては死に至らしめる。決して、幸せにはならない魔の薬――魔薬。



「麻薬は奴隷売買や武器の密売の他、『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』が大きく取り扱っている商売なの。だから私は、リッカーが一番怪しいと思っている。リッカーの子分には沢山の中毒者がいた。きっとリッカーは、中毒者を増やして自分の言うこときく駒を増やし、交易都市そのものに麻薬を蔓延させ、次第に自分の思う通りになる都市にして乗っ取るつもり……なんて可能性も高いかなって思って」



 シェルミーの言う通りだ。リッカーは、まともじゃない。住処にいた子分達も、まともだとは思えないし、可能性としてはかなり高い。



「あとは、ババン・バレンバンも怪しいかな。単純に、悪役ってキャラクターでしょ、あの武器屋のおじさん」


「それはまあ……」



 確かに見た目は悪者だった。でもそれを言うなら、ダニエル・コマネフもそう。太った身体に薄くなった髪。そして髭。控えめに言っても山賊のようだった。だけど物腰は穏やかで、身なりはとても綺麗だった気もする。



「ローザは、誰が怪しいと思う? それで、今日私達が会う相手を決めようよ」


「そうだな。さて、誰が怪しいか……皆が今、調べている相手は除いてだよな……ふーーむ」



 私達が食事をしていた今座っている席は、窓側だった。


 シェルミーから受け取ったメモに、また目を移して羅列している名前に目を通して、今一度考えようとした刹那、窓の外を歩く一人の男に目が止まる。


 あ、あいつは!!!!


 ガタンッ



「ほえ? あれ、どうしたのローザ。急に立ち上がったりなんかして。もしかして、おしっこ我慢していた?」


「すまない、シェルミー! ちょっと行ってくる!!」


「え? ええ!? どうしたの、ローザ!! ちょ、ちょっと待ってよローザ!!」



 私は訳を説明する間もなく、シェルミーを置いて慌てて店を飛び出した。 


 今、窓の外――通りを歩いていた男を探す。さっきまでいたはずなのに……人が結構、多い。



「くそう! 何処に行った! だが、確かに今ここを歩いていた。あの顔は忘れない。絶対さっきここにいたはずなのだから、見つけられていないだけだ」



 そう、覚えている。顔をしっかりと覚えている。


 私はきょろきょろと、辺りをくまなく見て回った。後ろ姿。必死に探して回っていると、10メートル先の人が何人も歩いている個所であの男をまた見つけた。今度は見失わない。


 徐々に近づいて行くと、男は何か気配を察知したのか急にこちらを振り向いた。目が合う。



「貴様、動くな!! 話がある!!」



 言った途端、男は慌てた。そして私がいる方とは反対側を向いて、全力で走り始めた。つまり、私を見て逃げたのだ。


 しっかりと顔を覚えてはいたが、これで確定だ。あの男は、メルクト共和国に入ってから立ち寄った盗賊達に占拠されていた村、リーティック村で目にしたドルガンド帝国の兵士だ。


 あの時は邪魔が入って怪我まで追わされたが、今度は逃がさんぞ!!

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