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第795話 『リストアップ』



 私はすっかりと、ウニクリームパスタの虜になってしまっていた。もちろん他にも好物はあるが、ウニクリームパスタはそれらのリストに新しく加わったのだ。


 シェルミーがハンカチを取り出すと、それを差し出してきた。



「はい、どうぞ。口の周りにウニクリームがついているよ」


「え? ああ、ありがとう。でもハンカチを汚してしまう。そう言えば、私もハンカチ位は持っていた」


「いいから!」


「むぐぐっ」



 シェルミーのハンカチを汚すのは、ちょっと。そう思って自分のハンカチを取り出そうとした瞬間、シェルミーは差し出したハンカチで強引に私の口を拭いた。



「アハハハ、これで綺麗になったねー」


「いや、シェルミーのハンカチが汚れてしまっただろ」


「いいの、いいの。それじゃ、ランチも済んで、お腹いっぱいになったし、これからの計画を決めないとね」



 店員を呼んで、パスタとサラダの入っていた皿を下げてもらった。そして注文したアイスオレに手を伸ばして一口飲む。美味いな、おい!


 朝からこんないいものを食べて、食後に美味しいアイスオレを頂く。こんな事をしていると、動きたくなくなってくる。まったりとした一日、読書でもふけりたくなってしまう。しかし、そういう訳にもいかない。


 シェルミーは、また自分のショルダーバッグに手を突っ込んで、ゴソゴソと漁り始めた。それを見て、もしかしてアテナの写った別の写真が出てくるのではと期待してしまっている自分に気づく。それを察してしまったシェルミーは苦笑した。



「言っておくけど、アテナの写真じゃないからねー」


「わ、わわ、解っている!! そ、そそ、そんな事は解っている!!」


「アッハッハッハ、やっぱりアテナやルシエル、それにルキアも面白かったし、テトラやセシリアも面白いけど、ローザもかなり面白い性格しているよねー。もう間違えない」


「それはお互い様だ。私から見れば、シェルミーもだぞ。唯一真面目なのは、ファーレ位なものか」


「それは皆、騙されているねー。ファーレだって……って、あまり言うと後で怖いからなー。それじゃ、おふざけ話はここまでにしてっと」



 シェルミーはそう言って、メモを取り出してテーブルの上に置いた。私はまたアイスオレに手を伸ばし、一口。それからそのメモにも手を伸ばした。



「これは……もしかして」


「そう。ロドリゲスや、他の皆に頼んで調べてもらったリベラル十三商人の名前(リスト)。十三人もいるから、全員の名前を全て知っているって人がいたり、いなかったりってだけで別に皆、身分を隠している訳じゃないからね。いや、面倒ごとに巻き込まれるのが嫌な者は、隠していたりはするのかな。でも調べるのは、簡単だったみたいだよ」


「そうなのか。でも、これは助かるな。この中に、『狼』が潜んでいる訳だ。




<リベラル十三商人>


・ダニエル・コマネフ【アーマー屋】

・ミルト・クオーン【コンサルタント商】

・リッカー【情報屋】

・ゴケイ【交換屋】

・ゴーギャン・レイモンド【美術商】

・ババン・バレンバン【武器屋】

・イーサン・ローグ【薬屋】

・ボム・キング【興行師】

・キラウ【魔獣商】

・ロレント・ロッソ【嗜好品専門家】

・デューティー・ヘレント【フルーツディーラー】

・アバン・ベルティエ【宝石商】

・ビッグマーサ【売春屋】


・ジャーニー・デプス【市長】




 以上、13人……いや?


「シェルミー、このメモには14人の名前があるようだが」


「ああ、最後のは市長。リベラル市長で、交易都市で最も偉い人。でもデプス市長が表向きには一番偉くても、実際は十三商人の方が上なんだよね。『狼』はきっと権力者になりすましている。その線では、十三商人が一番怪しいって話なんだけど、それをいうのなら市長も考えられる……かもしれない。『狼』は潜んでいる訳だから、そんな一番偉いポジションで、公の場にも顔を出す市長である事は考えにくいんだけどね。それでも一応、名前を載せておいた」


「なるほど、そういう事か。このメモはもらってもいいのか?」


「いいよ。既に映して何枚か作っておいたし、今日の夜にまたテトラやセシリアとも集まったら、情報交換の時に一緒に渡そうと思って」


「今日の夜に情報交換か」



 確かに考えてみれば、今日一日でここに乗っている名前、全員を調べ上げるなんて不可能だ。


 会うのだって、きっと大変だろう。すると、これはリベラルに長期滞在も覚悟するしかない。


 ボーゲンやミリス達だって、首都グーリエ奪還の方で頑張っているのに、我々だってこのまま手をこまねいている訳にはいかない。時間がかかっても、一歩一歩着実に歩みを進めて、メルクトに攻撃を仕掛けてきている親玉を倒すしかない。


 シェルミーは、唸りながら自分の考えを言った。



「テトラはダニエル・コマネフでしょ。しかも調査を頼んだ護衛から聞いたんだけど、ダニエル・コマネフのもとへ向かう前……っていうか、ホテルを出た後にミルト・クオーンやイーサン・ローグと一緒にいたらしい」


「つけさせていたのか?」



 シェルミーは頭を摩った。



「いやー、だって信用していない訳じゃないけどさ。だからホテルを出て、ちょっとだけだよ、見守らせていたのは。私はローザとコンビだし、ファーレだってセシリアと一緒だったから……テトラ一人でちょっと心配かもーって思って」


「なるほど、そういう事か。納得した」


「でも早速十三商人を二人と接触して、仲良くしているんだもんなー。テトラって意外と、男を手玉に取るタイプかもしれないよね」


「ははは、まあテトラは物凄く美人で可愛い。それに魅力的な身体をしているし、もっと自分に自信をもって、あのオドオドした感じがなければ、男達はもっと押し寄せるかもしれないな」


「だよねー」



 これから大事な計画を話し合わなければならないのに、絶品ウニクリームパスタと食後のアイスオレで、すっかりこういう和やかなムードになってしまっていた。


 いかんな、そろそろ気合を入れないとな。

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