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第791話 『ローザとシェルミー』(▼ローザpart)



 シェルミーとファーレが用意してくれた超高級ホテル、グランドリベラルは最高だった。


 食事や宿泊した部屋も大変なものだったけれど、何といってもボディーケア。あれはかなり、癒された。


 普段から私は騎士団の任務だけでなく、それをこなす為のトレーニングを欠かさない。剣の稽古もそうだ。凡人よりも圧倒的な強さを誇っているから、正義を貫く事ができる。力なき正義は、単なる無謀だ。


 だからこそ、我がクラインベルト王国の為に、陛下の為に……モニカ様やアテナ様、ルーニ様にエドモンテ様の為に私は、剣を振るうのだ。クラインベルトを守り、支える為には強くあらねばならない。


 だがここのところはメルクトでの旅、そして賊との戦いもあってか身体がずっと本調子ではなかった。傷も負った。


 なのにそれがあの、いったいいくらするんだというような、リッチでゴージャスなボディーケアをうけてからは、まるで背中に翼が生えたように身体が軽い。


 これはシェルミーや、ファーレには感謝しなくてはいけないな。


 ……だがあえて……もう十分、満足しているのだけれど、だがあえてこれ以上の欲を一つ! ただ一つ言わせてもらえば……


 アテナとも、ここへきて共に宿泊したかったなという事。


 アテナはキャンプが大好きだから、ホテルに泊まると言えばちょっとううーんってなるかもしれない。でもあの超高級ホテルを目にすれば、一泊は絶対するはず。そうすれば、アテナとも一緒に、あのボディーケアを受けていたはず。


 ボディーケアでは、テトラが真っ裸だった。流石にバスタオル位、身に着けて施術を受けると思っていたけれど、まさか真っ裸で受けるとは思わなかった。


 だが、どうだろうか。ちょっとここで、頭を傾けるとある考えが浮かんでくる。


 もしも! もしもあの時、アテナが一緒にいて、この私もテトラと同じく真っ裸になっていたら!! それが自然であるとしたら!!


 一緒にいるルシエルは、きっと何を言わなくてもテトラと同じくもう真っ裸になっているに違いない。セシリア……は、嫌がりそうだが、裸の付き合いもいいものだぞと説得する自信はある。


 そうすれば、アテナも我らと同じく真っ裸になり、あのいい香りのするオイルだらけの小部屋や岩盤浴などで……デュヘヘヘヘ……デュヘ……じゅるるる……


 ありがとうございます!! なんとありがたいことか!! アテナ王女殿下、私はこの日の為にあなたに剣を捧げ、これからも――デシュヘヘ……



「おおーーーい!!」


「!!」


「さっきから話かけているんだけど、ちゃんと聞いていた? ローザ」



 シェルミーは少し頬を膨らませた表情で私にそう言った。無論、聞いていなかった訳ではない。


 だが、私の心にそっとしまっていたアテナへの思いが油断した途端に漏れ出して、妄想へと変化してしまったのだ。


 アテナの王女として、人間として、冒険者として、そしてキャンパーとしての魅力を考慮すればそれはどうしようもないこと。私ごときが、どうにかなるものでもない。


 結果、暴走してしまってもそれは、全てアテナの力によるものなのだ。


 ああーー、早く、アテナと再会したーーい!!



「それでちゃんと聞いている?」


「ああ、勿論だ。あれだ、これから十三商人に会いに行くんだろ。テトラはダニエル・コマネフ、セシリアはデューティー・ヘレントに会いに行っているからな。我々も会いに行く、妥当だと思うぞ」



 そう言うと、シェルミーの目は、横一本線になった。



「ふーーん、それで聞いてたんだね」


「え? おい、どうしたシェルミー。ちゃんと私は聞いていたぞ。ああ、本当さ」



 シェルミーはそう言って今度は少し意地悪気な顔つきになった。


 どうも、こういうシェルミーの所……やはり少しだけだけど、アテナに似ているような気がする。テトラもそんな事を言っていた気もするが……



「それじゃ、私達はこれからどこへ行くでしょうか? さっきローザがよだれを少し垂らして、だらしない顔していっちゃってた時に私言ったよねー?」


「おいおい、だらしない顔でいっちゃってたって……私はいつも極めて精悍な顔つきをしているぞ。まったく可笑しなことを言うな、シェルミーは?」


「じゃあ私は、これからどこへ行くって言った?」


「え? えーーと、そうだ! ボム・キングだ!! 私達はこれから十三商人が一人、興行師のボム・キングのもとへ行って彼を調査する。そうだったな! はっはっはっは」


「違うよー。朝ご飯まだだし、これからちょっと食べて、それから考えようって話していた所でしょ」


「ああーー!! そうだった、そうだった! その通りだ!! はっはっは」



 じーーっとこちらを見つめるシェルミー。私は彼女に(こうべ)を垂れて謝罪した。



「すまない、ちょっと別の事を考えていた」



 シェルミーは突然笑い出す。いったいどうした事かと、あわあわすると彼女は涙を流す程に笑い転げていて、目を擦りながらに言った。



「あはははは!! ごめんごめん、ローザってさ」


「え?」


「ローザって王国騎士団で、一見堅物そうで……なにより規律を重んじるタイプに見えたんだけどさ。ガンロック王国でもそういう人はいるんだけど……あはは、ローザはその人達とはちょっと違うなって思って」


「え、何が? 何が違う」


「そうねえ。真面目で、王家に使える忠誠心が厚いからそう見えるだけで、本当はとてもお茶目で可愛い女の子なんだってね」



 お茶目とか可愛いだと!? この私が? 


 一気に顔が赤くなった。


 リベラルの人通りの多い、商業地区を歩く。シェルミーは、自分が入りたい飲食店を見つけるとそれを指さした。



「ほら、ローザ。あそこ。あそこに入ろうよ」


「ほう、カフェ……のようだが、食事も普通にできそうだ。しかも、パスタが押しの店か。いいな、入ろうか」



 とりあえず私達は、朝ご飯を食べてから、今日これからどうするか、予定を話し合う事にした。今頃は、テトラ達も上手くやっているだろうか。


 セシリアにはファーレがついているが……テトラは、今日は一人で行動しているはず。それが少し心配になった。

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