表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
789/1347

第789話 『デューティー・ヘレント その6』



 王国でない、共和政のメルクト共和国には、王はいない。対して私の本来いるクラインベルトや、ガンロックやドワーフの王国などは、王がいた。ここメルクトは、それらの国とは違った形を成している国とも言える。


 そして交易都市リベラル。リベラルは、交易都市であると同時に、自治都市でもあって、都市自体が一つの国みたいなものになっている。更にいうと、メルクト共和国の内に存在するもう一つの国。


 市長がいて、その役職の通り交易都市の最高地位ではあるけれど、実際のトップは十三人の商人。その十三商人と呼ばれる者達が、最高権力者でリベラルを仕切っている。市長はきっとお飾り。


 それでデューティーの言っていた気になる事なのだけれど、それはメルクト共和国のその国のトップの事だった。


 メルクト共和国には、現在ヨルメニア大陸最大の犯罪組織『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』が乗り込んできて、他の盗賊団も上手く操って、国を乗っ取ろうとしている。


 既に首都グーリエは賊の手に落ちて、メルクト共和国の中枢にいて国を動かしているトップである5人の執政官のうち、コルネウス執政官以外は殺害しまっているとの事だった。


 コルネウス執政官は、生きてはいたもののトリケット村にて賊達に捕まっていた。それをテトラやボーゲン達が救いだした。

 

 その後は、コルネウス執政官はボーゲンやミリス達、メイベルにディストル他ビルグリーノの一団と共に、首都グーリエを奪い返す為にテラネ村へと進行している。


 途中、戦闘など面倒ごとに巻き込まれていなければ、今頃コルネウス執政官達はテラネ村に到着し、首都奪還作戦の為の計画を立案しているはず。


 この国を救う為、立て直す為にはリーダーも必要になる。幸いコルネウス執政官が無事でいてくれた為、彼しかその役目を果たせないと思っていた。


 ……でもデューティーは、会話の中で殺害された執政官は、3人だと言った。メイベルやディストル達の情報とは喰い違う。


 デューティーにその話をして、詳しく聞いてみた。すると彼女は、少し考える仕草をすると自分の考えを述べた。



「私の得たその情報は、リッカーから仕入れたものよ。リッカーはその性格はねじくれているし、気持ち悪いけど情報は確かなものよ。だって情報屋の情報っていうのは、信用が裏付けされていないと価値もないから。因みにそのコルネウス執政官と、別に生き残っている執政官の名前だって言えるわよ。トム・ハークス執政官よ」



 トム・ハークス……私はデューティーから、ファーレに視線を移した。



「ファーレ。あなたとシェルミーは、メルクト共和国を救う為にガンロック王国からやってきたレジスタンスよね」


「そうです」


「あなた達は、殺害された執政官の話は聞いていたのかしら? そして殺害されたのは3人で、助かったのはコルネウス執政官と、ハークス執政官だと情報を得ていたの?」



 ファーレは、首を横に振る。



「私達も執政官は4人、殺害されたと思っていました。リベラルに到着するまでに、ある盗賊団と交戦状態になって……その討伐した盗賊団からも、そういう情報を聞き出しました。メルクトに入国してから立ち寄った村でも、そういう情報を入手しました。だからそうなのだと思って、特に疑いもしませんでした」



 なるほど。ファーレ達と、私達の情報は一致している。なら考えつくのは、私達が間違った情報を得ていたか、デューティーかリッカーが嘘をついている。もしくは、リッカーが誤った情報を入手したとも考えられる。


 そんな事をぐるぐると考えている私の頭の中を覗き見たように、デューティーが言った。



「リッカーから仕入れたトム・ハークス執政官が生きている話は、本当よ。彼は武器屋のババン・バレンバンや、ボム・キングなど他の十三商人にもこの情報を売っていたわ。それも高額でね。それがその情報の、信憑性を物語っているわ」



 もしその話が本当なのだとしたら、私達のするべきことは『狼』を倒す事と、首都グーリエの奪還の他にもう一つ増える。


 それは、トム・ハークス執政官の保護。



「解ったわ。私達の情報に誤りがあったのだと改めるわ。デューティー、あなたのその話を信じましょう」


「ウッフッフッフ。それじゃあ、これでお互いに誤解も解けた事だし、この先は協力関係になれるわね。一緒に、あなた達がいう所の『狼』を倒しましょう」


「ええ。でもその前に、そのトム・ハークス執政官の居所を教えて欲しいのだけれど。理由は聞かなくても解るでしょ」



 デューティーは、また笑う。



「セシリア達には、リベラルに潜む『狼』を倒すお手伝いをして欲しいのよ」


「それなら心配は、いらないわね。だって、私達の目的も同じなのだから。だけど、メルクト共和国を救う目的意外に、もう一つやる事ができたわ。トム・ハークス執政官も、助け出すつもりよ。だから、彼の居場所を教えて欲しいの」


「居場所までは私は知らないわ。でも、丁度今ここに、その質問に答えられる者を呼んだから、彼から聞いてみるといいわ」



 デューティーがそう言ってダイニングの出入口を見ると、扉が開く。そして知っている顔が、入室してきた。



「な、なんだ!? どういう事だデューティー!! セシリア・ベルベットを捕えたと聞いていたが!!」



 情報屋リッカー、薬屋イーサン・ローグ。2人共、十三商人であり、リベラルの最高権力者。


 更にリッカーの肩には、見慣れたボタンインコがとまっていた。私達の仲間で、リッカーに取り入って、用心棒をしているアロー。彼は、リッカーのもとにいる私達のスパイだ。


 アローにさりげなく視線を送ると、彼は何か言いたげな様子で目を細めて見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ