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第765話 『武器集め』



 たまたま逃げ込んだ家で手頃な服を見つけたので、それに全員着替えた。これからどう行動するか、今は4人で考えている。


 ボビーは、捕えて情報を聞き出す予定だった男をついうっかりと絞め殺し、もう少しで危うくハルを殺してしまうところだった。


 ハルは、もう気にはしてない様子だけれど……先走ると言うか、ボビーの危険な行動には注意を払わなければならない。



「ボビー、ちょっといいかしら」


「なんだい、セシリア。もしかして、俺の女になるという話、真剣に受け止めてくれたか」


「は? そんな訳ないでしょ。そんなどうでもいい事よりも、さっきのハルに手斧を投げた事だけれど」


「ああ、その事かよ。もう謝っただろ? 素直に謝ったんだから、いい加減許してくれよ」


「そうじゃなくて、はっきり言っておきたいの。あなたは危うくハルを殺しかけた」



 私の言葉を聞いたハルが、パカっと口を開いて顔色を青くする。すっかりと忘れてしまっていた恐ろしい記憶が、蘇った顔。



「その前には、盗賊の男を絞め殺したわ」


「そりゃ、盗賊だろ? 別にいいじゃねえか、これまで随分悪さをしてきたはずだ」


「ええ、そうよ。でもそういう事じゃないわ。その男からは情報を聞き出す予定だった。なのにあなたは、殺してしまった」


「それはつい……って言ったろ。暴れたから」


「そうね。でも私が言っているのは、立て続けにハルの事があったからよ。盗賊を絞め殺しただけなら、その時に言った事以外は責めなかった。この際、正直に言わせてもらうけれど……あなたの先走る行動に、少なくとも私は危機感を覚えているわ」


「おいおい、マジかよ」


「本当よ。だからこれ以上は勝手な真似はしないで。慎重に行動して。それについて、もし自信がないのであれば、ここからは別行動よ」



 私があまりにもはっきりとボビーに思っている事を言ったので、ファーレとハルは驚いた様子で、そのまま余計な事は言わずに成り行きを眺めていた。



「わかった、わかったよ。今度はポカをやらかさないように気を付けるわ。それでいいんだろ?」


「そう、じゃあ一緒に行動をするのね。解ったわ」



 ボビーにもう一度視線を向ける。笑顔ではなく、きつい視線。そうしておかないと、またがあるかもしれない。その時には、再びハルやファーレ、私にも手斧が飛んでくるかもしれない。


 面白がる目的以外で、ここまで人の失敗を責める性格ではないと自分の事を解っているつもりだけれど、ボビーにはやはりなんというか危うさのような気配を感じていた。


 どんよりした空気を打ち破るかのようにハルが、明るく手を挙げて言った。



「よーし、それじゃ次は武器だねー。一応、この家の中をくまなく探して出てきた物は、こういったものしかなかったけどー、それでもないよりはマシでしょ」



 手斧、草刈鎌、包丁、ナイフ、金槌……そう言えば、ボビーがハルに放った手斧。今、ハルが持ってきたものと同じもの。つまりボビーは、この家に入った時点で手斧を見つけてそれを持っていた。


 なぜ武器を手に入れた事を言わなかったのか……冒険者というのは、日ごろから旅や冒険をして、危険と隣り合わせの毎日を送っていたりする。だから無意識に武器になるものを見つけて、サッと手に持っていたのかもしれない。けれど、やはりボビーについてはそういう行動も引っかかる。


 そもそもボビーは、果樹園に向かって馬車に乗る途中にいきなり現れて、相乗りをお願いしてきた男。それだけの関係で、そのまま成り行きで行動を共にしているだけで信用はしていない。でもそれについてはハルも一緒だけれど、ハルに対しては何か安心できるものを感じる。



「いいじゃねーか。色々あるねー。それじゃ、俺は俺の大切な戦斧を取り返すまで、これを使わせてもらおうか」



 ボビーはそう言って、手斧を1本腰にぶら下げると更に金槌を2本手に取り、それぞれ両手で握った。試しに交互に振ってみる。



 ブンブンッ


「いいねえ、こりゃいいねえ!! 金槌なんて、単なる大工道具だと思っていたけど、こうやって使ってみると、なかなか破壊力がありそうだ。考えてみれば、振り下ろす為に作られたもんだもんな。槌の部分は、金属だ」



 続けてファーレがナイフを手に取ると、ハルも鎌を2本手に取って、それをボビーと同じように両手に持って構えて見せた。そこから繰り出される、左右の鎌攻撃が空を斬る。



 ヒュンヒュンッ


「とお! やあ!! せいやっ!!」



 …………



 物凄いドヤ顔で私を見るハル。



「どう?」


「え? どうって?」


「キマってる? 強そう? あたし、強そうに見えない?」


「え? ええ、とても強そうに見えたわ。思わず、お漏らししてしまいそうになる位だったわ」



 一気に顔が赤くなったハルは、2本の鎌を腰に差すと両手で拳を作ってポカポカと私の肩を叩いた。



「もうもうもう!! セシリアって結構意地悪な性格してるよねー!!」


「フフフフ、そうかしら?」



 こんな時なのに、一瞬戯れる。見ていたファーレも笑顔になり、緊張がほぐれる。服も着たし、いよいよ行動開始。



「それしゃ、行動開始よ。ファーレ、助けはくるのよね」


「間違いなく来ます。時間から考えても、もう間もなくここへ突入してくると思いますよ」


「そう。それじゃ、それまで私達で一人でも多く賊を倒して行きましょう」



 さっきの賊みたいに、一人で行動している者はいる。それに2人3人程度なら、4人がかりなら苦も無く倒せるはず。


 そしてもしも見つかってしまったなら、この廃村の中を逃げ回ればいい。それで盗賊達を混乱させる事に繋がれば、ファーレの護衛達が攻め込んできた時に大打撃を喰らわせる手助けになるはず。


 私達4人は隠れていた家を出ると、そのまま物陰から物陰を移動して、倒すべき相手を探して回った。

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