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第739話 『ダニエルの売り込み その2』



 ダニエルさんの用意してくれたビキニアーマーに着替える。客間に戻ると、そこではレティシアさんが待っていた。



「あらあらまあまあまあ、なんて可愛い狐ちゃん!! まあまあまあ、ちょっとよく見せて見せて!! 触ってもいいかしら」


「…………ちょっと、止めてください」



 ボム・キングに、私とレティシアさんが繋がっていると思われるとまずい。レティシアさんに目で訴える。するとレティシアさんは、物凄く残念そうな顔をした。



「ダッハッハッハ!! これは美しい、これは美しいぞ!! いいな、これならかなりの客を集めれるぞ!! 流石、ダニエル・コマネフだ!! 早速宣伝をしよう、ダハハハハ」


「それでは、この子を闘技場に参加させる件は……」


「もちろん、オッケーに決まっているだろーが!! これは凄いぞ!! きっと客がわんさと集まる。そうだ、リッカーにも宣伝に協力してもらおう」



 リッカーの名前が出た。リベラル十三商人の一人で情報屋。私達は最初、この街に来た時に、『狼』の情報を得る為にまず初めにリッカーのもとへ訪れた。そこで彼と揉め事になり襲われた。


 情報屋とは言うけれど、ガラの悪い者達を沢山従えていた。私は、彼の事も『狼』ではないかと疑っている。アローがリッカーに雇われて、調べてくれているからそのうち何か解るかもしれないけれど。



「それじゃ早速闘技場の日程が決まったら、連絡させてもらうとしよう。テトラには、それまでしっかりとコンディションを整えてもらおう。それで、テトラの事だがな」



 ボム・キングが言葉を続けようとするも、ダニエルさんは遮った。



「それは駄目だ」


「まだ何も言ってないだろ?」


「ボム、あんたのとこの選手として出場させると言いたいのだろ?」


「ダッハッハッハ、そうだ!! しかも今度はいくつか組を作って争う、チーム戦にしようかと考えている。テトラがワシのもとへ来れば、このレティシア・ダルクとデイク・ツーソンと組ませれば、とんでもない事になるぞ!! 既にレティシアには、ファンクラブのようなものもあるみたいだからな。テトラがこのお色気たっぷりのビキニアーマーで加われば間違えはない」


「お色気はおまけ程度だ。このビキニアーマーの最大の魅力は、その防御力と美しさにある。いや、話を戻そう。テトラは、あんたには渡せない。この私の選手として出場させてもらいたい」


「なに!? そ、そんな、これは大儲けできるチャンスだぞ。この子は一目見て解った。間違いなく客を呼べる原石だ」


「それはそうかもしれないが、これについては私も参加したいんだよ」



 ダニエルさんの言葉に、ボム・キングの顔がかなり険しくなった。



「おい、ダニエル。解っているのか? 優勝は1チーム。どうあがいても最後には、このワシのここにいるレティシアともう一人、デイク・ツーソンを相手せんといかんのだぞ。そうなれば、この子は確実に潰される」



 部屋にいる全員が私の顔を見た。レティシアさんは、私の胸元ばかりを見ているけど、アイシャはとても不安そうにしている。そしてダニエルさんも……毅然とした風には装っているけれど、本当に大丈夫なのかというそんな思いを秘めた瞳をしている。それが私には解った。だから――



「潰されるのは嫌ですし、潰されるつもりもありません。でも私には、自信があります。勝ち抜く自信が。だから私は、ダニエルさんのチームとして闘技場に選手として出場したいです」


「ほう……見上げた勇気だ。あるいは、無謀。まあ、それでも大儲けはできる。解った。テトラがそのビキニアーマーで出場するというのであれば、認めよう」


「ありがとうございます!!」


「決まったな」


「うちも精一杯応援させてもらいますわ。頑張ってや、テトラ!!」


「はい。ダニエルさんもアイシャもありがとうございます」


「それじゃ、ボム。試合の日程が決まったら、連絡してくれ。それでは、今日はこの辺でおいとましようか」


「はい。それではどうもお邪魔しました、キングさん」



 頭を下げて、ダニエルさんとアイシャと共に部屋を出る。その際に、レティシアさんの顔をチラリと見ると、今度は彼女の眼は私のお尻を直視していた。私は、「もうっ!」って顔をしてレティシアさんを睨むと、レティシアさんはボム・キングの目を盗んでウインクをしてみせた。


 ボム・キングが『狼』である可能性もある。私達が、そうではないかと予想している一人。だからレティシアさんが彼のボディーガード兼、闘技場の選手として潜入してくれている。


 それはとてもありがたいけれど、このままいけばレティシアさんは闘技場に間違いなく出場してくるだろう。そうなれば私は、レティシアさんと戦う事になるのだろうか。そうなった場合、私じゃとてもレティシアさんにかなう訳はない。


 仲間同士だからといっても、レティシアさんが手を抜いてくれるとは限らないし。ううーーーん。


 あれこれ考えていると、いつの間にか闘技場から外に出ていた。アイシャが言った。



「キングはん、チーム戦って言ってはりましたもんね。う、うち戦闘能力なんて皆無なんやけどあれやったら、テトラはんと一緒に闘技場に出て戦わせてもらいますけど」



 そう言えばそうだった。ボム・キングはチーム戦にすると言っていた。



「はい、ありがとうございます。それじゃもし一緒に出場してくれる人が見つからなかったら、アイシャにお願いします」



 アイシャはにっこりと笑って、力こぶを作るしぐさをして見せた。もちろん、アイシャに力こぶなんてない。


 その時だった。闘技場の直ぐ外の路上で、騒ぎが起きた。大勢の人達が声をあげて驚いている。いったいなにが……


 しかもその視線は全員、私の方を向いている。



「え?」



 ダニエルさんとアイシャがはっとして、私の背中を押した。そして、ダニエルさんと乗ってきた馬車へ、急いで私を押し込めた。


 私はとても露出の激しいビキニアーマーを着たままで、外へ出てきてしまった事にやっと気づいた。



「ダダダ、ダニエルさん!! わわわ、私の踊り子の服は!!」


「ああ、大丈夫、ちゃんとここに……」



 私はダニエルさんから、今まで着ていた踊り子の服を奪い取ると、馬車の中で急いでそれに着替えなおした。


 野次馬のように、人が集まる。その間、外からは馬車の中が見えないように、アイシャとダニエルさんが忙しく動いて壁になり、私の着替えを上手に隠してくれた。

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