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第729話 『ダニエル・コマネフ その5』



 ダニエルさんを信じた。ダニエルさんと、ここで安らかに眠るご家族を……


 だから私は、これまでの事をダニエルさんに話す覚悟をした。セシリアやローザに相談も無しにそうしてしまったのは、本当に悪いと思う。でもそれは、あとでちゃんと謝る。


 私はクラインベルト王国での事、ルーニ様誘拐事件の事やカルミア村とバンパの事、メイベルとディストルに救援を求められて、仲間と共にメルクト共和国へ来た事。


 そしてコルネウス執政官の救出と、彼らが首都グーリエに向かっている事も話した。だけど、レティシアさんとアローの事は、別にこの場で今すぐ言わなくてもいいと思い言わなかった。


 これでもしダニエルさんが、黒だった場合……その時は、私が全て責任をとる。その決心はできていた。今は、十三商人側にも強力な味方が欲しい。


 ダニエルさんは、私の話を聞いた後、客間に戻ると言った。そして新しい葉巻を取り出し火をつけると、それを吸って考える素振りを見せた。



「いいだろう、テトラ。君の目的や覚悟はよく理解した。商人は、私の取り扱うアーマーと同じく信用が大切だ。君は私の事を信頼してくれた。私もそれに応えよう」


「そ、それじゃあ……」


「私にとっても、『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』は仇だ。協力しよう。その代わり、賊を討伐する為の計画が進展する事によって、私の家族を奪った者達の名前が解ったら、それを即座に教えて欲しい。そしてもし、その者達を捕える事があれば、御上にではなくこの私に速やかに引き渡してほしい。それが協力の条件だ」



 私は大きく頷いて見せた。そして、アイスティーを一口ごくりと飲む。


 ダニエルさんは、そんな私を見てニコリと微笑むとペンを持ち、紙に何かを書き始めた。



「そ、それはなんですか?」


「なに、リベラル十三商人の名前を連ねてみた。私の名前も一応書いては置いたが、確認してほしい」




《リベラル十三商人》


●ダニエル・コマネフ 【アーマー屋】

●ミルト・クオーン 【コンサルタント商】

●イーサン・ローグ 【薬屋】

●リッカー 【情報屋】

●ババン・バレンバン 【武器商人】

●デューティー・ヘレント 【フルーツディーラー】

●ゴケイ 【トレーダー】

●キラウ 【魔獣商】

●ボム・キング 【興行師】

●アバン・ベルティエ 【宝石商】

●ゴーギャン・レイモンド 【美術商】

●ビッグマーサ 【売春屋】

●ロレント・ロッソ 【嗜好品専門家】




「こ、ここに記されている人達が十三商人なんですね」


「そうだ。私も含める十三人の中に君達が探している、『狼』が隠れているだろう」


「私達のまだ知らない人達の名前まで……でも確かに十三人います。ダニエルさん、凄く助かります。ありがとうございます」


「いや、なに。これくらいは別にどうってことはないよ」



 十三人の商人。ダニエルさんと、ミルト、ローグさんには既に接触済みだし、凄くよくしてもらっている。ダニエルさんは言うまでもないかもしれないけれど、ここにくるまでにミルトとイーサン・ローグ……ローグさんには、シャノンの事で凄くお世話になった。だから疑いたくはない。


 そして今、リッカーのもとにはアローがいて、ボム・キングのもとにはレティシアさんが入り込んで調べてくれている。


 セシリアとファーレは、今朝からフルーツディーラーのデューティー・ヘレントのもとへ行き、ローザとシェルミーも別の十三商人を調査すると言っていた。きっとシェルミーの方は、シェルミーの方で当てがあるのだと思う。



「それでテトラ。これで私の事は信じてもらえたかな?」


「はい、少なくとも私はダニエルさんを信じます」


「そうか。それじゃ、私の言った協力の条件は伝わっているな」


「はい、ダニエルさんのご家族の命を奪った者達が誰か解ったら、それを知らせればいいんですね。そしてダニエルさんに引き渡す」



 ダニエルさんは、頷いた。



「いいだろう。それじゃ、早速協力させてもらおう。テトラ……君は今、私が紙に書いてあげた十三人の中で誰が一番怪しいと思う?」


「わ、私には……正直まだ解りません。でも誰が『狼』か、今の時点でそうじゃないかと思うのは、情報屋のリッカーか、トレーダーのゴケイが怪しいのではと思いました」


「ほう、そうか」



 リッカーはとても怪しい。私達がリッカーの住処に情報を求めに行った時に、騒動になりリッカー達と争いになった。


 ゴケイは私達がリベラルに入る時に、門の前で他の盗賊と揉めていて、乱闘騒ぎを起こしていたスイコという男を味方につけていた。つまり盗賊団と繋がっている。


 だから怪しいと思った。だけど、真相は解らない。セシリアやローザなら、もっと鋭く物事を見抜いてくれるのに……



「私は武器商のババン・バレンバンとボム・キングが怪しいと思っているが……まあ、まだ憶測には過ぎない」


「え? ふ、二人もですか?」


「どちらかが『狼』かもしれないし、その両方かもしれない。形に拘らずに、柔軟に考えて炙り出さなければならない」



 確かにそうかもしれない。ダニエルさんが言うように、柔軟に考えてみる。そうすれば、驚く結果も浮かび上がる。例えば、実は『狼』は二人いるかもしれない事だとかも考えられる。



「で、でもダニエルさんが言ったその二人の事は、ダニエルさんやミルト、ローグさんのようにそれほど知っている訳でもないですし……バレンバンさんは、リッカーのもとを訪ねた時にたまたま会えただけで……」


「それなら私に考えがある。まずはボム・キングなら直ぐにでも会える。テトラ、君にはそのために私のアーマーを売り込んでもらう」


「え? アーマーをですか!?」


「そう、アーマーだ。テトラに似合うとびきり魅力的なアーマーを用意しよう」



 アーマーと『狼』の調査。どう繋がるのだろうと考える。だけどそれで何か手がかりがつかめるなら、やるしかないと思い私は大きく頷いた。

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