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第716話 『VSバズ・バッカス その2』



「や、やるじゃねえか!! お前のような、娘っ子の何処にこんな力があるんだあああ!!」


「え、嘘? 倒れない!? ひい!!」



 バズ・バッカスの腹部に私の得意技、【方円撃(ほうえんげき)】が命中した。


 相手の攻撃に合わせてすれ違うように、さっとかわしながらもくるっと回転し、相手の力と自分の力に加えて遠心力も加えて、強力な攻撃力を生み出すカウンター技。


 本来は棒の先であったり、槍の穂先と逆側の石突部分を鳩尾や脇腹にめり込ませて倒す技だけど、威力も十分で、例え急所に命中しなくても大ダメージを与える事ができるはず。


 だけどバズ・バッカスは痛みで顔を歪めてはいるものの、それほどダメージを追っているような素振りはない。それどころか、彼の腹部にめり込ませた涯角槍(がいかくそう)を、今にも奪いとりそうな感じに両手で握っている。



「や、やめてください!! は、離してください!!」


「ええ、離せだって? そりゃあ、いくらなんでもねえだろ。こんな強烈な攻撃をブチ込んできといてよ。だがな、ウハハハ、確かにいい技だがこの俺様をノックアウトするには、すこーし威力が足りねえみたいだな」


「ふ、普通はこれで倒れます!」


「そうか? いや、普通なら確かにそうかもしれねえ、ガッハッハッハ。確かに普通の奴ならこれで、無様に蟹みてえに泡吹いて倒れるかもな。だが生憎俺様は普通じゃねえのさー。なんてったって俺様は、最強最悪の山賊頭領、截天夜叉(せってんやしゃ)のバズ・バッカス様だ!!」



 涯角槍を、思い切り引き抜こうとしたけど全く動かない。がっちりと掴まれて、これ以上刺し込む事も引き抜くこともできない。


 しかも尻尾の力も使っているのに……とんでもない腕力。こうなったら、仕方がない。2本……ううん、残る尻尾の能力3本使って脱出するしかない。それ位しないと、きっとびくともしない。やるしかない。やらないと、この男から逃れられないしシャノンにも会えない。


 気を集中させて――


 更なる尻尾の力を解放しようとした。すると何かを察したバズ・バッカスは、涯角槍を片手だけで握ってもう片方の腕を、こちらに向けて伸ばしてきた。


 掴もうとしてきているのは、首!?



「え? ひいいい!!」


「ガッハッハッハ!! どうやら、おめえその4本の尻尾を光らせて本気を出すみたいだな。って事は現在光っている尻尾は1本とすると、まだ3本分の余力があるって事だああ! 別に全力出されたからって、俺様にとっちゃ大した事じゃねえが、思い立ったが吉日。さっさとおめえを、俺様のもんにしてえ。っつう事で、おめえが本気を出すまで、親切に待ってはやらねえ」


「っく!!」



 涯角槍を手放して攻撃を叩きこむ……駄目だ。この男と腕を合わせてみてなんとなく感じる。


 この男は、武器を手にしても素手でも強い。涯角槍を、手放せばきっとこの男はそのチャンスを逃さない。涯角槍は奪われ、私はこの男に叩き伏せられる。



「ガッハッハッハ!! さあ、大人しくしやがれええ!! むしろ、これは喜ばしい事だぞ! なんつったってな、この外道山賊団頭領の女ともなれば、好き勝手わがままし放題の毎日を送れるんだぞ!!」


「べ、別にそんな毎日は送りたくないです!!」


「ああっ!? そんなの嘘だ!! 誰だって金や宝石、ご馳走に快楽。欲望には抗えないはずだ!! 俺様が見てきた女は最初はそう言っても、宝石や金貨を与えればすぐに俺様のご機嫌伺いを始める。そんな生き物なんだろ、おめえら女は。いや、野郎も同じだな、ガハハハハ」


「私はそんなものいりません!! もっと欲しいものがありますから!!」


「なんだ、そりゃ。糞の役にでもたつものなのか?」


「皆の幸せ、世の中が平穏になる事です。私はその為に、メルクト共和国に……この交易都市リベラルにやってきました!! だから、邪魔をしないでくださーーいっ!!」



 そう叫んで、渾身の右上段回し蹴りをバズ・にバッカスの顔面に蹴りこんだ。正確には、かなりの体格差というか身長差があるので、跳び上段回し蹴りだった。


 渾身の蹴りをバズ・バッカスのこめかみに見事にクリーンヒットさせると、着地して彼の反応を確かめる。効いた!? 


 思い切り涯角槍を、引き抜こうとしたがピクリとも動かない。嘘!!



「軽いな、軽すぎる。おめえの体重と脚力じゃ、この俺様にダメージを与える事なんてできやしねえんだ。オラア、いい加減に観念して俺様のものになれ。めいいっぱい、可愛がってやっからよ」


「いやあああ!!」



 バズ・バッカスが腕を伸ばす。抵抗しても無駄、だからといって涯角槍を失えない。これはゲラルド様が、こんな私の事を認めてくださった証。私の大切な武器であり、宝だから。だから失えない。でもどうすれば……


 この場は一度、バズ・バッカスに捕まるしかないのか。シャノンに再会できるというチャンスを逃して……そう思い項垂れえると、バズ・バッカスは勝利を確信してニタリとした笑いを見せた。


 仕方がない。この場は一旦仕方がない。私にもっとモニカ様やレティシアさんのような強さがあれば……そう思った刹那、大きな雷鳴が聞こえる。



 バリバリバリッ!!



「ぎょええええええ!!!! し、痺れるううううう!!!!」



 バズ・バッカスの悲鳴。そして強烈な落雷が、バズ・バッカスに直撃し彼を黒焦げにした。

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