表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
704/1350

第704話 『メロを仕留めろ その2』



 オーク達からは、既に腐臭のようなものが漂ってきていた。口からは唾液が垂れ流されて、鼻や目からも同じように体液が滴っている。


 目も黄ばみがかり濁っていて、生気は完全に失われている。だけど凶暴性は、残存している。ただただ人を襲う為に存在しているような……人工モンスターであり、それはゾンビそのものだった。


 ボクは襲い掛かってくるオークを得意の水属性魔法で、次々に討ち倒した。それでもメロは助かりたい一心でゾンビースト化したオーク達をボクにけしかけてくる。



「オーク達よ、マリンを止めてー!! その間に自分は逃げるから!!」


「逃がさないと言っている。いい加減に観念すればいいよ。《水泡散破ウォータースプラッシュ》!!」



 翳した手から大量の泡が放出される。一見柔らかそうで、触れるとパチンっと簡単に割れて弾けてしまいそうなこの泡は、特殊な弾力性を持っていて岩をも穿つ破壊力を持っている。


 いっそこれで、オークごとメロとルチルを消し去ってしまえばいい。一方的に命を奪うのは、少し心苦しいものもあるけれど、メロは危険な存在だとボクは判断した。


 それは何も、知られたくないボク自身の事や、過去などを根掘り葉掘りと調べて回られているというだけではない。


 ブギャアアアッ


 【水泡散破ウォータースプラッシュ】を連続で放ち、メロを守るように立ちはだかるオーク達を全滅させる。更に後ずさりするメロ。



「ひいいい、た、助けてよ! 自分とマリンの仲じゃないか、ね? 後生だから」


「君とボクの仲はこんな感じだよ。ボクは最初から君が気に入らなかった。君は、ボクが殺したクライド・ゴート達をゾンビースト化させて、ボクにけしかけたよね。ロッキーズポイントの時も、あそこにいたゾンビーストは君が造ったもので君が放置したものだよね」


「そ、それは……も、黙秘します……」


「どうして君はボクにここまで執着するんだろうか」


「それはアレに決まってんじゃーーん。マリン・レイノルズ。君にすっごーーい興味があるからだよ」


「それは君の研究に関する事でのことなのかい?」


「そ、それは……も、黙秘します……」


「もうどうでもいい。やはり、君をここで始末する。それで解決だ。ボクが善人では無いことや、アテナのように慈愛の精神を持っていない事は証明済みだしね。今更、見せかけの優しさを振り撒こうとは考えてはいない。まあ、そういう事だ。それじゃお喋りもここまでにして、君達を始末するよ」



 【水泡散破ウォータースプラッシュ】をメロに放つ為に、彼女に手を翳す。恐怖で顔が引きつるメロディ・アルジェントに対して、ボクはなんの躊躇もしなかった。


 しかし魔法を放とうとした刹那、メロの前にマシンゴーレムが飛び出してきた。そしてボクに狙いをつけると、そのゴツゴツとした金属の腕でパンチを放ってきた。



「やってやるっすううう!! マシンゴーレム!! あたしの大切な同僚、メロ姉さんを守るッスよーー!!」


「うぐうっ!! そう言えば、いたな。マシンゴーレムの存在を忘れていたよ。迂闊だった」



 咄嗟に魔法詠唱を諦めて、後ろへ跳ぶ。そのまま地に落ちて転がる。


 でもそのお陰で、マシンゴーレムの強烈なパンチを喰らわなかった。もしまともに喰らっていたら、ボクなんて一発でペシャンコだろう。


 慌てて起き上がると、身体についた土を払う間もなくマシンゴーレムが続けて突っ込んでくる。その後ろでは、助かったと胸を撫でおろすメロと、反撃だと勢いづけてハッスルしている白衣を着たバニーガール。



「メロ姉さん!! マリンをやっちまっていいッスか!? ここでやらないと、ずっとあたしらを追ってくるッスよ!!」


「うーーん、困ったねえー。でもマリンなら大丈夫なんじゃん? いいよ、手加減しないで、やっちって。っじゃないと、自分らが危ないもんねーー。ついさっき自分、殺されるとこでしたしオスシ、ちょっとマリンにお灸をすえるつもりでもいいかもしんないよねーー」


「了解ッス!! ゆけ、マシンゴーレム!! マリンを叩き潰すッス!!」



 ルチルが叫ぶと、マシンゴーレムは呻くような声をあげて、身体中から煙を噴射した。そして身を屈め、一気に突撃してきた。思い切り腕を振りかぶると、ボク目掛けて、再び強烈なパンチを繰り出す。



「くっ!! 喰らったら終わりだけど、だからといって何度も避ける真似はボクにはできないし、そんな体力もない。だけど防ぐ事なら可能だ。《噴水防壁(ウォーターウォール)》!!」



 足元から水が噴射し壁となって、ボクを包み込む。マシンゴーレムの強烈なパンチを防いだ。



「ええええ!! な、なんスかあの魔法!! 凄いッス! あたしのマシンゴーレムの一撃を、あんな風に防ぐなんて想像もしてなかったッスよーー」


「自分は、すると思ってたよーん」


「マジッスか、メロ姉さん!!」


「うん、だからやっちゃっていいって言ったんだよーーう。ブイ!」


「流石っす、流石がメロ姉さんッス! それじゃあ、もうこなってしまったら是が非でも、マリンをグチャグチャにしても、ドルガンド帝国に連れ帰らないといけないッスよねー」


「うーーん、まあそうね。でもあれは、マリン本体じゃないんじゃないかなーーって」


「うん? どういう事ッスか、メロ姉さん」



 戦闘中だというのに、メロとルチルがそんな他愛のない話をし始める。その隙に、ボクは【噴水防壁(ウォーターウォール)】の陰から、マシンゴーレムをじっくりと見て観察していた。


 そしてマシンゴーレムが大きく腕を振りかぶった瞬間を見計らって、水の壁からサッと飛び出してマシンゴーレムの足に片手で触れた。



「え?」


「なっ!?」



 メロとルチルが気づいた時には、もう遅い。ボクは既に魔法を詠唱している。



「随分頑丈そうなゴーレムだけど、これ程の至近距離で、ボクお得意の水属性の爆発魔法を喰らえば無傷ではいられないと思うよ。水よ、弾け飛べ! 《水爆弾(ハイドロボム)》!!」



 ボクの突き出した右手とマシンゴーレムの足、僅かにある隙間にフヨフヨっとした宙に浮かぶスライムのような液体が発生する。そしてその液体は、爆発をした。


 衝撃でメロもルチルも吹っ飛んだが、怪我も無く起き上がる。


 ボクはそれを横目に、片足を失って横たわるマシンゴーレムの上に飛び乗ると、その頭部にもう一発【水爆弾(ハイドロボム)】をお見舞いした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ