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第695話 『チャンピオンVSキング その2』



 オレが思い切り振った『土風(つちかぜ)』をオークキングは、左手に持つ大盾で防いで見せた。


 オークキングの眼光。や、やるじゃねーの。



「オークってのは、あまり素早い動きは得意じゃなさそうだからな!! スピードアップだ!! このままどんどん一方的に攻撃させてもらうぞ!!」



 ニヤりと笑みを浮かべ、連続でオークキングに斬りかかる。しかしオークキングは、持っている大盾で慎重に――それでいて丁寧に、攻撃を防ぐ。またも鋭い不屈の眼光。


 こ、こいつはやりづれえ!! オークっていうのは、もっとこう粗暴で荒々しくて力に頼った雑な攻撃をしてくるんじゃねーのか!? オークキングともなると、こんなにも違うんだな。



「おりゃああ!! こうなったら、これで仕留めてやる!!」



 やや威力に重さをおいた、渾身の一撃。しかしまたも、防がれる。かーー、かってーな!


 接近戦が得意なオークキングと、本来は遠距離で本領発揮できるエルフじゃ、この距離で勝負しつづけるのは得策じゃない。それに強敵だ。しかもこいつの使用している大盾、樫か檜かもしくはオークだけにオークの木って事もあるかもしれねーが……ぷぷぷ、ウケる。


 兎に角かなり丈夫な木で、『土風』を持ってしても簡単に貫けねえ。オレにアテナ程の剣術があれば、容易に両断してしまえるんだろうが、そう簡単にはいかねーからな。だからオレの距離で、オレのやり方で始末をつけさせてもらうぜ。


 更に打ち込むと、オークキングはまた攻撃をガードして、お返しとばかりに手斧を振ってきた。オレはそれを避ける動作で、オークキングの持つ盾に大きな前下蹴りを入れてそのまま後ろへ後転した。


 これで理想の距離ができた。


 オレの手には、先程まで使っていた太刀はない。愛用の『アルテミスの弓』が握られていて、既に矢を添えてオークキングを狙っている。



「これならどうよ!! 喰らえええ!!」


 バスバスバスバスバス!!



 矢筒から高速で矢を取り出して連射する。再び距離を詰めてくるオークキングに向かって放つ沢山の矢。


 それはオークキングの頬をかすめ、肩や足、そして大盾にも何本もの矢が突き刺さった。だがオークキングは怯みもせず、オレのもとにまで向かってくると腕を突き出してきた。



「うおおお!! これでも止まらねえのか!! まずい、手斧の一撃がくる!!」



 手斧の攻撃に突きはない。振りかぶって振ってくる。もしくは、投げるにしても振りかぶると思っていた。しかしオークキングの腕は、直線的に伸びてきた。な、なんでだ!? 


 刹那、その理由が解った。オークキングの右手にはいつの間にか手斧が握られていなかった。つまり素手。そのまま腕を突き出してきて、オレの胸倉を掴むと力技で地面に押し倒して、体重をかけてきた。大盾で押し潰される。



「ぐはああっ!! くそおお!!」



 つ……潰れる……このままじゃ、やられる。


 ま、まさかオレが太刀から弓へスイッチしたように、オークキングも手斧から素手にスイッチしてきてやがったとはな。流石、キングって名前がついているだけの事はある。


 そう言えばこんな時になんだが、アテナもノクタームエルドの地底湖で戦ったリザードマンの中に、ギーって人の言葉まで話す個体がいたって言っていた。かなり強い奴だったみたいだが、魔物も人間のように同じ種でも、様々な個性があり強さがあるんだよな。



 ブヒイイイ!!


「うっがああああ!! ほ、本当にこいつは、オレを押し潰す気だ!! 全体重と力と盾で、グショってなる……うぐぐぐ、これ以上圧迫されたら確実になんか出るぞ」



 遠くの草場から顔を出して、ボウガンをこちらに向けるジールの姿が見えた。オレは、ジールと目を合わせてブンブンと顔を左右に振った。


 撃つな! 決してジールの腕を信じていない訳じゃないし、助けてくれようとしているのは嬉しいが……こいつは、オレが一人で仕留めたい。声を発さずにそう言う思いでリアクションしてみせると、伝わったのかジールは呆れた顔でボウガンをおろした。


 オレとオークキングじゃ、体格も体重も力もぜんぜん違う。このままオレを圧し潰そうとするオークキングを、跳ね返す力はオレにはない。


 オレがエルフ名物、エルフ煎餅になるのも時間の問題!! 煎餅なんて、絶対嫌だ!!



「うぐぐぐぐ!! 確かにやる。だがなああ!! それは腕力勝負って話ならだ!! 個々の力は、オレのが強いんだよ!! 喰らえオークキング!! 必殺の精霊魔法、《突風魔法(ウインドショット)》!!」

 


 衝撃波のような風を放つ精霊魔法。強烈な突風が発生し、オレの上にのしかかるオークキングの身体を跳ね上げる!! そう思った!! 


 そう思ったがオークキングは、自分とオレの間に挟んだ大盾から手を離すと、両腕でオレの身体をしっかりハグして吹き飛ばされないように耐えた。



「う、嘘だろおおお!! こ、こんな【突風魔法(ウインドショット)】の防ぎ方する奴なんて見たことがないぞ!!」



 さ、流石オークキング!! 本当にこいつは、強敵! や、やるじゃん!!


 そう思った所で、オークキングはオレの顔を睨んだ。余裕があるようには見せているが、【突風魔法(ウインドショット)】で吹き飛ばされないようにオレに必死にしがみついているのはバレている。それなら、もう一発強烈な風をお見舞いしてやるか!!



「いくぜ!! 今度こそ吹き飛びあがれ!! ウインドショ……」



 再度、魔法を発動させようとすると、オレにがっちりと上から抱き着いているオークキングは、パカっと口を開いて唐突にオレの肩に噛みついてきた。



「ぎゃあああ!! いでえええええ!! こんちくしょーー!!」



 さっきまでこいつ、オークにしては驚く程冷静かつ慎重な動きをしていた癖に。こいつ、ラフファイトもできるのか。なんとか首のやべー箇所は避けられたものの、肩を噛まれた。クソ痛い!!


 しかしアレだな。魔物なんだから、ラフファイトをする方が本来は自然なんだよな。それならオレもそれに倣うまでだ!


 オレは腰に装備しているホルスターからナイフを取り出すと、オレの肩に噛みついているオークキングの首へ突き刺した。



 ブギイィィィィ!!



 いくぜ、反撃開始!!

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