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第691話 『エドウィー村防衛戦 その4』



 オークの攻撃を正面から受け止めるとノエルは、オークの頭を両手で掴んで跳び膝蹴りを入れた。5匹のオークを倒すまで一瞬の出来事だった。


 私はデニルの肩をポンと叩くと、ノエルに駆け寄る。



「流石は、アース&ウインドファイアのアース」


「よく言う。この位の芸当は、アテナにもルシエルにもできるだろ。それにマリンだってやってのける」


「まあね、それはそうなんだけどさ。でも頭突きは、私にはできないかな」



 そう、6匹のオークを一瞬で倒してしまえる冒険者が、エドウィー村に少なくとも4人はいる。会話からその事を読み取ったデニルは、驚きの表情を見せた。私はそんな彼ににこりと微笑みかける。



「とりあえず、斥候は片が付いたわね。計画じゃまず私達が、オーク軍団の本体とぶつからないといけないから――このまま案内してくれる、デニル」


「あ、ああ。もちろんだ」



 まずは、エドウィー村に向かって来るオーク達の出鼻を挫く。私とノエルは倒したオークをそのままにし、デニルに従ってまた森の中を移動した。もう間もなく着く。


 少し移動した所で、デニルが身を屈めて私達にも同じようにして欲しいと手で合図をしたので、身を低くした。


 かなり近い所で沢山の音がする。そして草陰へ。ガッチャガッチャという武器や防具の擦れる音の方へ目を向けると、オークの軍団が列になってこちらに向かって歩いて来ていた。


 デニルがその数に驚いて、動揺した。



「あ、あんなにいたとは!! あの列、もっと後ろの方まで続いているぞ。大変だ、これは全部で100匹以上になるかもしれない」


「100匹のオークか。ふーーむ」



 唸る私を見て、ノエルが言った。



「どうした、アテナ。何かあるのか?」


「え? ううん。ちょっと思ったんだけれど、100匹のオークって、なんとなく小説とかそういうののタイトルになりそうだなーって思って」


「は? なんだそりゃ。こんな時に、何考えてんだ?」


「エヘヘヘー」



 呆れた顔のノエル。確かに今の状況でこんな下らないことを考えているなんて、ノエルでなくても呆れる。だけど思ってしまったものは、仕方がない。私はあははと笑って誤魔化すと、再び真剣な顔つきに戻って言った。



「それじゃ、いい感じに和んだ所で、早速奇襲攻撃を仕掛けましょうか」


「ああ? 今ので和んだか? まったく意味が解らないぞ」


「いいの。ふと思って言っただけの事なんだから、気にしないで。それじゃ行くよ」



 そう言ってオークの方へ向かおうとすると、デニルが慌てて私の腕を掴んだ。



「ままま、待ってくれ!! お、俺はどうすればいい? このままあんた達と一緒にオークの群れに突撃する作戦なら、俺はきっと殺される」


「ううん、奇襲をかけるのは、私とノエル二人でやるつもりだったから。でもこの後、どう転がるか解らないから道案内は必要だと思うし、ここで身を潜めて隠れていて」


「いや、でもそれじゃ……」


「じゃあ、可能な限りで援護して。デニルはボウガンが得意でしょ。遠距離で、隠れてこっそりと援護してくれれば危険も少ないはず。でもオークに見つかるような事があれば、私達を置いて全力で逃げてね」


「わ、解った」



 それでいいと思った。攻撃を開始してオーク達が混乱すれば、今度は後方からルシエルが攻撃を仕掛ける。それで、オーク達の親玉をついでにルシエルが討ち取ってくれれば勝負はついたようなもの。



「それじゃ行くわよ、ノエル」


「おう!」



 デニルの顔をもう一度見て頷いて見せると、私とノエルはこちらに向かって来るオークの軍団の側面へと回り込んだ。


 身を隠して気配を殺し、見つからないようにして接近する。私がツインブレイドを抜くと、ノエルも背負っているバトルアックスに手を伸ばして、両手に握った。目前にはオーク達。


 私とノエルは揃って草場の陰から勢いよく飛び出すと、目の前を進軍するオーク達に問答無用で斬りかかった。奇襲なので、斬りかかる時にはもちろん声を発しない。



 ブヒイイイイイ!!



 2匹、3匹、4匹……先頭にいたオーク達を次々と斬り捨てると、他のオーク達が雄たけびをあげてこちらに向かってきた。私達、たった二人を相手にかなりの数。一度に10匹以上で向かって来る。



 ブヒイイイイイ!!


「いきなり奇襲された訳だから、ご立腹するのもまあ解るけどね」


「村を襲おうと仕掛けてきているのは、オークの方だ。だからあたしらの方がご立腹だ!」


「アハハ、そうね。それじゃしっかりと暴れて、できるだけ私達にオークの注意を惹きましょう!」


「おう! りょーかい!」


 ブギイイ!!



 一番近くまで迫っていたオークは、通常種の上位種でハイオークだった。ハイオークは大きな斧を片手に私とノエル、二人いっぺんに薙ぐつもりで振りかぶった。


 攻撃される前に仕留める。そう思ってハイオークの首をツインブレイドで刎ねようとすると、私の目前にノエルが素早く動き、ハイオークの放つ斧に合わせてバトルアックスで思い切りの一撃を重ねて放つ。粉砕――


 粉々になるハイオークの斧。その破片がハイオークの顔に突き刺さるとほぼ同時に、ノエルは跳躍して宙で一回転するとその遠心力と自分の体重を利用し、バトルアックスでハイオークの頭蓋を割った。



「喰らえええ!! 必殺!! 兜割り(かぶとわり)だあああ!!」


 ブヒヘエエ!!



 ノエルの強烈な一撃で絶命し、ドスーンと大の字で倒れるハイオーク。それに目を奪われる他のオーク達。


 ノエルは、何もなかったかのようにそのまま続けて周囲にいる他のオークへも襲い掛かった。

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