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第69話 『またの名は、ロケットバード その1』






 群れから少し離れた所に寂しく1羽でいるクルックピーを見つけたので、それを狙った。


 まずルシエルと、ルキアが目標に忍び寄っていって同時に襲い掛かった。投げ縄を準備。二人でロープをしっかりと握りしめ、ルシエルがそのクルックピーの長い首を狙ってロープを放り投げる。



 ギャギャギャーー!!



 見事に、クルックピーの首に縄がかかった。



「はっはっは! やったぞ! ルキア! どんなもんだいって感じだな!」


「はい! やりましたね!」



 けれど…………束の間の喜びだった。



「うわああああ!! たーすけーてくれーーー!!!!」


「ふえええええ!! 助けてくださーーーい!!!!」



 クルックピーは、逃走した。しかも凄まじい脚力。ルシエルとルキアが、クルックピーに縄をかけたまま、大きな砂煙を巻き上げて引きずられていく。カルビは、その引きずられて悲鳴をあげる二人の後を、必死になって追いかけている。止まらないクルックピー。



 クエエエエ!!



「ええーー!! ルシエル、ルキア!! 今助けに助けに行くからーー!!」」



 私とナジームもその光景を見て驚く暇もなく、引きずられていく二人の後を追いかけた。


 暫くして、二人は砂まみれになって帰ってきた。


 ちょっと考えてみたけど、これは普通に首に縄をかけても捕まえるなんてできないような気がする。ナジームは、そもそもどうやってこの投げ縄で、クルックピーを捕獲するつもりだったのだろう。



「ナジーム…………」


「すまない。君達を危険にさらしてしまった。完全に俺の考えがあまかったよ。クルックピーの生息場所の情報を聞いた時に、一緒に捕獲方法も教わったんだがな。確かに、縄を首に引っかけて捕まえればいいって言っていたんだが……だからもっと簡単に行くと思っていたんだ」



 え? 捕獲方法を教わった? どういうこと? それって……



「ひとつ聞きたいんだけど、ナジームはピッチーをどうやって捕獲したの?」


「ピッチ―か。いや、俺はピッチーを捕獲していない」


「へ?」


「ピッチ―は、俺がクルックピーの売買を専門としている商人から金を払って買った鳥だ。俺自身で捕まえた訳じゃないんだ。つまり俺は、クルックピーを捕まえた事はない」


「うそーーー!!」


「な……なにぃーー!!」



 ええええ!!!! てっきりナジームは、クルックピーの捕獲の経験があるものだと思っていた。まさか素人だったとは…………


 これには、ルシエルとルキアも私と一緒になって吠えた。



「すまん。俺は、見ての通り何処にでもいるただの行商人だ。ピッチーの背に乗せている荷が実際の売り物で、本来はそれを売って生業にしている。クルックピーは、捕まえた事がないし、売買したこともないんだ」


「じゃ……じゃあどうして、クルックピーの捕獲なんて……もしかして、お金になるとか? でも、結構大変だよね」


「ああ。簡単に考えていたみたいだ。……正直言うと実は、ちょっと金が必要でな。それで、オロゴの街に寄った時に、高くクルックピーを買い取ってくれる商人がいると聞いたんで、なんとかクルックピーを捕獲できれば、沢山稼げると思ったんだ」



 うーーん。お金が必要だったりするのは、それぞれ事情があったりもするのだろうけど。そんなつもりは無かったかもしれないが、まさか出たとこ勝負だったとは。



「なるほどね……そうなると……どうやってクルックピーを捕まえようか?」


「捕獲に詳しい者にその捕獲方法を聞いたら、彼はクルックピーの首に縄をかければ捕まえられるとだけ言っていた…………でも、実際は違ったわけだ。まあ……これ以上は、リスクが高い。残念だが、怪我人が出る前に諦めよう。君達には、頼んでおいてすまなかったな」



 ナジームは、申し訳なさそうにそう答えた。出来ればナジームには借りがあるし、力になれる事があれば力になりたい。でも、クルックピーの捕獲は想像以上に難しかった。


 うーーん、困った。どうしよう。…………だったら。



「じゃあ、私がナジームにそのクルックピーを捕獲して売った場合の利益分を、お支払いするっていうのは、どうかな? 助けてくれたお礼って事でね」


「いや、それは受け取りたくない」


「なんで? だってお金が必要なんでしょ?」


「そうなるから、話そうとしなかった…………そういうつもりで、君達を助けたわけではないし、今必要としているお金は、自分自身で稼ぎたいんだ。君達の力を借りていて、おかしな事をいっているかもしれないが、気持ちの問題なんだよ。わがままを言ってすまないが、そういうことだ」



 うーーーん。きっと、ナジームは、ナジームで何か理由があるんだね。それなら、仕方がないか。無理強いは趣味じゃないし。


 ――――でも、このままっていうのもね。私たちは、普段こういう依頼を専門としてこなしたりもする冒険者な訳だし。



「ルシエル!」


「おう!」


「ちょっと手を貸してくれる?」


「おっ! さては、何かいい考えが浮かんだな」



 私は、ルシエルにウインクしてみせた。ナジームは、何か始めようとする私を見て慌てた。



「おいおい! もういいぞ! ありがとう。もう諦めよう!! 本当にもういい。これ以上は危険だ」



 ナジームは、危険を感じて私を止めようとする。だけど、笑ってみせる。



「大丈夫。フッフッフ。良策を思いついたから。ルキアとカルビはここで、ナジームと待ってて」



 ルキアも、ナジーム同様に心配そうな顔をする。



「アテナ……大丈夫ですか?」


「うん! まあ、多分上手くいくと思う。まっかせといて!! それと、ナジーム! ピッチーをちょっと借りるよ」



 私はルシエルと一緒にピッチーに騎乗した。二人乗り。そして、ルシエルには、縄を持ってもらう。



「あそこ。ちょっと遠いけど、見える?」


「しっかり見えるぞ! あいつ…………さっき、オレとルキアを引きずったやつだな。あいつめ……みてろよー」


「よし! じゃあ、行ってきまーす!! 3人とも、期待して待っててね」



 ワンッ



 不安そうに顔を引きつらせる二人の横で、カルビが代わりに返事をしてくれた。私たちは、ピッチーに乗って、さっき逃したクルックピーに向かって走り出した。


 






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇クルックピーの捕獲方法

この国で野生のクルックピーを捕獲し、販売している商人達の捕獲方法はそれなりの人員を使い一気に包囲して捕獲するという方法をとっている。使用している捕獲道具も投げ縄を使うものもいるが、最近は投網や麻酔を使用した矢を使っているようだ。アテナ達は、その事を知らないのでナジームを含め4人だけで野生のクルックピーを捕獲しようとしているが、果たして上手くいくのだろうか……





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