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第689話 『エドウィー村防衛戦 その2』



 デニルとジールが、血相を変えて村に戻ってきた。さっきまで偵察に行っていた二人だ。ルシエルが声をかける。



「どうだった、二人とも。オーク共はこの村に迫ってきていたか?」



 血相を変えて戻ってきたという時点で、そうなんだろう。二人はうんうんと頷いて、見たものを私達や村長を始めとする皆にも説明した。



「かなり数が多い。見つかったらヤバいと思ってあまり近づけなかったが、30や40どころじゃないかもしれない」



 さ、30や40じゃない!? それってもう魔物の群れとかってレベルじゃない。オークの軍団。ハイオークやオークリーダーも何匹かいるって聞いた時に、結構な数はいそうだとは思っていたけど……まさかそんなに……


 マリンが呟いた。



「ヘリオスさんが言っていた事だよ。最近、特に魔物の動きが活発化してきているらしい。ノクタームエルドで眠っていた地竜が目覚めて、ドワーフの王国へリザードマン達と押し寄せた事。それに冒険者たちの拠点ロックブレイクに、二度に渡ってかなりの数の魔物が押し寄せた事。全て、関係しているかもしれない」



 ロックブレイク――私達の時は、大量のアシッドスライムが押し寄せた。そしてその後にもあったという。


 マリンがロックブレイクに立ち寄った時には、大量のオオダマトゲヤスデが押し寄せてきて、師匠や他の冒険者と共に撃退したらしい。


 そのどちらも、キングアシッドスライムやデビルスパイクキングという大物がいて戦慄が走った。だけどなぜあんな数の魔物が、人の集まる場所に押し寄せてきたのか。理由は、未だ謎。


 マリンの話では、なんらかの原因があって、それを解決しないと大変な事になるかもしれないと師匠が言っていたという。それで師匠は、今もこのヨルメニア大陸を旅して調査を続けているみたい。


 なんにしても、今は直面している問題から解決しないといけない。このエドウィー村に攻め寄せているオークの数。それは異常で、あのロックブレイクやドワーフの王国の時と同じニオイがした。



「それでこの村には、あとどのくらいで攻め寄せてくる感じなのかな?」


「この辺りは俺達にとっては、庭みたいなものだからな。近道とかも知っているし、何処がどうなっているとか、もちろん隅々まで知っている。だから戻ってくるのも最速で戻ってこれるが、オークは軍団だし進むペースも普通に歩いて進軍していて遅かった。ここに来るまでは、どんなに早くてもまだ30分以上はかかると思う」


「それで親玉は見かけた?」



 私の質問にルシエルが首を傾げる。



「親玉ってその……オークリーダーじゃないのか? リーダーって名前ついてるし」


「ううん。オークリーダーは、本来群れを率いて行動しているんだけど、数が多すぎる。それに何匹かいたっていう話だから、きっと別に凄い親玉がいて、オークリーダーは軍隊でいう所の、単なる小隊長みたいなものになっているんだと思う」


「なるほど。そういう事か」

 

「それで……デニル、ジール。何か親玉っぽいオークを見かけた?」



 二人は頷いた。そしてデニルが言った。



「いた。ひときわトロルみたいにデカいオークがいたよ。あれはオークリーダーでもハイオークでもない。見た事のないタイプのオークだった」



 うーーん。おそらくはオークキングか、オークロードって所かな。だとしたら気を付けないと。ルシエルが言った。



「でもさー、親玉がいるんだったら解りやすくねーかな。その親玉やっちまえば、残っているオーク全部四散するんじゃねーのん?」


「そんな簡単にいくかなー。おそらくそのトロルみたいに大型のオークが親玉で間違いないと思うけど、きっとオークの上位種だよ。だとしたら、油断はできない。私達は、村の人達を全員守らなくてはならないんだから」



 ただ突撃していって、大将首を取ればいいってものでもない。敵は大勢だし、村に侵入されたらとても村人全員を守れないかもしれない。それにこちらもクロエとか、ルシエルの連れて来たバジャーデビルの子供達もいる。


 私達の会話を横で聞いていた村長が、真っ青な顔で言った。



「そ、それで儂らはどうすればいいでしょうか? 村と命、両方失わなくて済む方法があるのであれば、儂らエドウィー村の者は全て冒険者様に従いまず」


「うーーん、とりあえずあまり時間がないわ。村長さんは村人全員に指示して、村の周囲にバリケードが完成したらすぐに家に籠って。マリンとルキアも、先に言ったようによろしくね」



 デニルが手を挙げた。



「俺達もそうした方がいいか? できればマリン達と共に村の防衛にあたりたいが」


「デニルとジールは二人とも、この辺に詳しいのよね」


「ああ、もちろん。俺達が生まれ育ったところだ」


「それじゃ二人には道案内をお願いしたいわ。ここに迫ってきているオークの軍団は、きっと自分達が奇襲されるなんて思ってもいないでしょうから、こちらから仕掛けて少しでも数を減らす」


「え? そんな事ができるのか?」


「できれば一匹も、村に辿り着けないようにしてしまえればいいけど、それは流石に厳しいと思う。でもだからこそ、マリンにルキア、それにカルビがいる」



 名前を呼ばれた3人は、ニヤリと得意げな表情をしてみせた。マリンとカルビに交じってルキアもそういう自信のある表情をした事に、少し驚いた。


 ルキアはノクタームエルドで、冒険者としてかなりの成長をしてみせたし、カルミア村と重なってこのエドウィー村を救いたいって意気込んでいるんだと思う。



「時は一刻を争う。先手を打つのは、極めて有効な戦略だからね。それじゃ行動開始! ルシエル、ノエル、それにデニルとジールは私について来て!」



 エドウィーに村に押し寄せるオークの軍団。オーク達をエドウィー村に侵入させないように、まず私は最初にここに進軍してくるオーク達に奇襲をかける事にした。


 5人で村を出ると、早速チームを2つに分けた。


 敵は多い。奇襲をかけるなら、この手で仕掛けた方が、攪乱もできるかもって思ったので、それで行くことにした。

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