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第688話 『エドウィー村防衛戦 その1』



 エドウィー村、防衛線――始まる。


 私は村長と村人全員に、オーク達からこの村を守る最善の努力を尽くすと約束した。だけど同時に村を捨てて逃げる事こそ、一番の助かる道である事も説いた。だけど誰も、逃げるとは言いださなかった。ここは、村人達の全てなのだ。


 なので次に私は村人全員に、村を守るために約束してほしい事を伝えた。


 まず村人には全員、武器を携帯してもらうこと。


 武器は、ナイフや鎌などもいいけど、槍のような長柄武器をできるだけ選んで欲しいと伝えた。クワとかスキとか、そういうのでもいい。兎に角、リーチがあって普段から扱いなれているものがベター。


 私の経験上、戦闘の経験が乏しい者が武器を手に取るなら、リーチのあるものを優先させた方がいい。それでいて、普段から扱いなれたものなら尚更いいよね。


 次に村にあるもの。例えば廃材とか利用してもいいし、兎に角直ぐに利用できるもので、村全体を囲えるようにバリケードを作って欲しいという事だった。しかも村の全人力を総動員して、今すぐに完成させてほしいという事。既に村人達は、総出でその作業にとりかかっている。


 ノクタームエルドを冒険した時に、ドワーフの王国で私達が経験した事。あの時は、街までリザードマンやドゥエルガルに攻め寄せられて大変な事になった。だから村への敵の侵入は、絶対阻止したかった。


 村人達によるバリケード造りがスタートすると、私は自分の仲間を集めた。すると、ルキアがまず聞いてきた。


 私の予想では、こういう事になってしまって……ルキアやクロエは、物凄く不安気な顔をすると思った。だけどいざこうなってみると、ルキアはとても気力に満ちている。


 私は、はっとした。ルキアは、以前住んでいたカルミア村を『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』という盗賊団に襲われた。


 このエドウィー村は、盗賊ではなく魔物に襲われている訳だけど、その時の事を思い出したのかもしれない。それで絶対に村と、村の人達を救いたいと……ルキアは、オークが襲撃してくる不安よりも、そちらの事の方が心の中で勝ったのだろうと思った。



「アテナ。それで私達は、どうすればいいですか?」


「うーーん。とりあえず、オークが攻めてくるのも時間の問題だと思う。村人達には、オークが襲撃してきたら武器を手に取って、直ぐにそれぞれの家に立てこもってもらう。外には出ないで、自分と家族とか身近な人をお互いに守ってって伝えてあるわ」



 ルシエルが声をあげた。



「なるほどな! それでその間に、オレ達がオーク共を退治するって寸法だな」


「うん、だけど全員でオークに対して応戦すれば、守りが手薄になっちゃうからね。ルキアとクロエ、それにカルビは村長さん達と一緒にいて」



 クロエとカルビは頷いた。でもルキアは、納得のいかないという表情をしてみせた。



「アテナ! 私もオークと戦います! 戦ってなんとしてもこの村を守りたいです」


「ちゃんと解っているよ。だからお願いしたんだよ」


「え?」


「村長さんはこの村の……言ってみれば、国でいう王様だからね。ルキアがきっちりと守ってあげて。もちろん、カルビもサポートしてあげて」


 ワウッ!


「それに村長さんだけでなく、他の村の人達やクロエの事もお願いね」


「それは、アテナが村の外へ応戦しに出て、私達が村の守りにつくって事ですか?」


「そう言う事だよ。ルキア達は村長さんの家を拠点にしてもらって、その上で村全体を守って欲しいって頼んでるんだよ。もちろん、ルキアの事を信用してるからこそ頼めるんだけどね」



 ドワーフの王国での事でもそう。ルキアはヴァレスティナ公国のドルフス・ラングレン男爵や、ドワーフの歴戦老戦士ギブンを相手にあんなに戦ってみせた。ドゥエルガルだってルキアが説得をして、戦いをやめさせた。


 私にとってルキアは妹みたいな存在である事は変わらないけれど、もう立派な一人の冒険者として扱っている――それをルキアにしっかりと解るように伝えた。


 他の皆もそれに気づいたようで、ルシエルがルキアを茶化す。



「おーーっと、これは責任重大だぞ! 大丈夫かなー? ルキア一人で大丈夫かなー?」


「だだ、だ、大丈夫ですよ! ちゃんと私は承知しました! 間違えなくアテナの言った通りに、私が村の皆を守ります!!」


「助けがいるんじゃねーのか?」


「い、いりません!! 絶対私が皆を守ります!!」


「こーらー。過信しない。やる気になるのはいい事だけど、自分の都合でもしもの事が起きたら駄目でしょ。ルシエルも、ルキアにちょっかいださなーい」



 「はい、すいません」と言って、シュンとするルキアとルシエル。これからこの村にオークの群れが攻め寄せてくるかもって時なのに、本当にこの二人は元気だなーって思って笑っちゃった。



「それと、マリン」


「え? なんだい?」


「マリンにも村の守りについて欲しいの」


「え? ルキア達についていろって事かい? それならこのボクが……」


「ううん、ルキアは大丈夫。私やルシエル、それにノエルはオーク達を迎撃しにでるけど、それでも討ち漏らしはあるから」


「なるほど、それをボクに片付けて欲しいと?」


「そうよ。そういうの、マリンが一番適役かなって思って」


「まあ、適役だね。解った、それじゃその役目、ボクが任されよう」



 よーし、これで準備オッケー。


 今、デニルとジールには偵察に出てもらっている。いざオークがやってきたら、すぐ知らせて欲しいと伝えているから、そしたら私とルシエルとノエルで討って出る。


 後方はルキアやマリンがいるから、これは戦闘に集中できそうだなと思った。そしてルシエルとノエルに、絶対村を守ろうねと言って視線を送る。


 すると、ルシエルの背中に背負われたままの3匹のバジャーデビルの子供が目に入った。私は驚いてルシエルに言った。



「ちょ、ちょっとそれはそうと、その子たちどうするの? まさか戦闘に連れていかないわよね!」


「あっ! そう言えばそうだった。もう一心同体みたいになっていたよ。はははは。仕方がないからルキアとクロエに預かってもらおう。いいよな、ルキア、クロエ」


「っもう! ルシエルったら! 仕方がないってなんなんですか!? 魔物と言えど、ちゃんと最後まで面倒を見てあげてくださいね」


「わーってるって、わーってるって! うるさいなーー」


「わ、わたしは大丈夫です。ただ、魔物の子供の面倒をわたしがちゃんと見れるかどうか……」


「あー、大丈夫大丈夫。クロエだって魔物とのお友達のなり方、しっかりもう心得ているじゃねーか」



 そう言ってカルビを指すルシエル。そのルシエルの行動はクロエには見えないけれど、ルシエルの言葉の意味をしっかりとクロエは理解しているようだった。


 よーーし、やっるぞーーー!! オークを迎え撃つ計画はちゃんとできた!

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