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第684話 『ポカポカ陽気は、気持ちいいよね』



 まいった、かなりの時間のロスになってしまった。


 狩りをしてくると言って出はしたものの、アテナ達もそろそろオレの帰りが遅いと心配し始めている頃かもしれない。



 グウウウ、グウウウ……


「うるさい、黙れ!! あのままお前らを洞窟の奥に放置プレイしてきても良かったんだぞ! 少しは感謝しやがれってんだ、こんちくしょーが!!」



 バジャーデビルに怒鳴り付ける。そんなオレをじっと見つめたまま、黙って静かに待っていたデニルとジールに気づく。はっとして2人に言った。



「そ、それじゃあな。冒険を続けれいれば、また会う事もあるだろう」



 デニルが言葉を返す。



「ああ、ルシエルには世話になった。それはそうと、ルシエルには、仲間がいると言ったな。何処かへ向かっているのか?」


「向かっているぞ。パスキア王国を目指しているんだ」


「パスキア王国か……パスキアの何処へ行くつもりなんだ?」


「なぜそんなとこまで聞くんだ?」


「いや、誤解しないでくれ。変に探っているんじゃない。言ったろ? ルシエルには、俺達の命も救ってもらったし、バジャーデビルも倒してくれて、結果村も救ってくれた。だから、何か礼ができるとしたらしたいんだ」



 礼……お礼……うーーん。お礼と言えば、肉? え、肉! 脳内に盛大なご馳走のビジョンが浮かびあがる。



「でもな、オレに仲間がいるって言ったろ? 奴らは今頃、腹を減らして食料調達に出たオレの帰りを待っているんだ。デニルとジールを見つけたのだって、アレだぞ、アレ。それで狩りに出掛けた時だったんだぞ。だから早く戻ってやんないとな」



 ジールが、オレの背に目を向けた。



「もしかして、バジャーデビルの子供を食料にする気か。その為にわざわざ巣から連れて来たって訳か」



 ジールの的外れなセリフに、ずっこける!



「ちげーーっし!! オレは鬼か!! 流石にこいつらは食べないし、殺さない!! こいつらが大人になって、人間に襲い掛かるような事があれば、殺して喰うかもしれないけどな」



 デニルとジールはそれを聞いて、顔を見合わせるとワハハと笑った。ジョークのつもりじゃなかったんだけど、まあウケたしいいか。デニルが、言った。



「それなら、こういうのはどうだ? これからルシエルの仲間のもとに俺達もついて行く」


「え? ストーカー?」

 


 実は、オレもアテナにストーカー行為というのをやったことがある。



「ち、ちげーよ!! そうじゃなくて、恩を返したいって言ってるだろ!! 仲間と合流できたら、俺達の村に来ればいい。そしたら必要な分、食料でもなんでも用意しよう。宿泊するなら寝床もあるぞ。どうだ?」


「うおおお、マジか!! でもなーーー」


「なあに、俺達の村はここからそれ程離れていない。この大地の裂け目を巣にしているバジャーデビルが、毎日やってこれるくらいの距離だ。是非、立ち寄ってくれ」


「うーーん、解った。食料を何か分けてもらえるなら、願ったりだしな。とりあえず、仲間のもとへ行って相談させてもらうかな。あと、村はバジャーデビルに襲われたんだよな? オレが今背負っているバジャーデビルの子供は、村に連れていっても大丈夫なのか?」


「それなら俺達が、村の皆にちゃんと説明する」


「そうか。なら、問題ないか。じゃあ早速だけど、仲間のもとへ一緒に来てくれ」



 話がまとまった所で、オレはデニルとジールを連れてアテナの待っている場所まで引き返した。


 しかしちょっと昼飯調達してくると、軽い気分で狩りに出かけただけなのに、こんな事になるなんてなー。


 全く知らない狩人風の男2人と、この背中で今もオレの髪の毛を引っ張ったりして悪さしている3匹のバジャーデビルの子供と共に帰ってきたら、きっとまた驚くだろうなと思った。


 特にバジャーデビルの件については驚きそう。少し狩りに出て誰かと会うっていうのは、ヘルツ・グッソーとの出会いとかこれまでにもあった事だし、そう珍しい事でもないし。


 大地の裂け目のあった所から移動して、木々が少し生い茂った場所を抜けた所でジールが声をあげた。



「おい、ルシエル。あそこ見ろ! 煙があがっているぞ!」


「あっ、本当だ! 多分アテナ達だな! 急ごう」



 煙が立ち昇っている――この辺りに小屋など無い感じだったし、パっと考えてもアテナ達が焚火をしているのだと思った。


 おそらくお茶か何かを入れる為に、お湯を沸かすのに火を熾したか、もしくはオレの帰りを待ちきれなくなって先に飯の準備をして、焚火してしまっているかってとこだろう。なんせアテナ、ノエル、マリンと食いしん坊トリオがいるからな。間違えない。


 デニルとジールを連れて、焚火の方へ駆ける。煙の立ち昇っていた場所に到着すると、やはりそこには焚火があった。周囲には、アテナ達が転がっている。まったく、だらけすぎだろ! もしくは、腹が減りすぎて餓死してしまったアピールか!


 オレは叫びながら、アテナのもとへ駆け寄った。



「アテナーー!! 大丈夫か、アテナ!! オレの帰りが遅くなってしまったばかりに、全員餓死させてしまって、っっっとうううに、もうしわけないと思っているううう!!」



 転がるアテナに近づいて身体を揺すりに揺すると、閉じていた目が開いた。



「う……うん? ルシエル? 今、戻ったの? 随分と時間がかかったみたいね。何かあった?」



 周囲を見ると、ルキアやノエル、それにカルビとクロエも目を覚ましたようだった。


 皆起き上がってこちらを向いて、キョトンとしていやがる。マリンは、転がったまま。そんなマリンの顔を覗き込むと、こっちはこの短時間でちょっと頬がこけて見えるので、マリンに関しては本当に餓死寸前だったようだ。



「それで、アテナこそ何かあったのか?」


「ううん、何にも。ルシエルの帰りが遅いし、お腹減ったし……でも間もなく帰ってきそうだから。それでお茶でも飲んで待ってよっかってお喋りしながら、焚火の周りでダラダラしていたの。そしたら、この陽気でしょ? なんだか眠くなっちゃって、それでちょっとお昼寝をね」



 そう言ってウインクするアテナ。


 こんのーーー!! オレがえらいバトルを繰り広げている間に、こんなポカポカ陽気の中、お昼寝をしていたとは……こいつはメチャ許せんよなあああ!! フツフツと怒りがこみ上げるオレ。



「あれ、そっちのお二人は誰?」



 アテナがデニルとジールに気づく。すると2人は、皆に頭を下げて挨拶をした。


 オレはアテナ達皆に、狩りに出た後に何があったのかを話して聞かせた。

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