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第68話 『お手伝い』







 翌朝、私たちは朝食を食べ終えるとナジームへ願い出た。この荒野で力尽きかけていた私達を、手厚い看護で助けてくれたナジーム。私達は、彼に少しでも恩返しがしたい――――――そう思ったのだ。


 ナジームは、「気持ちだけ貰っておく」と言っていたけれど、あんな苦しみから救ってくれたんだもん。簡単には引き下がれない。引き下がれる訳がない。それで、どうするか話し合っていたら、ルキアがそのことで妙案を出してくれた。



「ナジームさんは、行商人なのですよね。でしたらそちらの方で、何か私達にお手伝いできる事があるんじゃないでしょうか?」


「いい! それいいね! ルキア天才!!」



 この猫耳少女は、可愛いだけじゃなく、こんなに賢いだなんて。天は二物を与えてしまったんだね。うん。



「おー、やるなー。ルキア。まさかオレと、同じ考えを導き出すとはなー」


「嘘つけ――!! 森の知恵者と言われるエルフが、聞いて呆れるわーー!」



 私は、ルシエルを目にも止まらぬ早業で、ペシリと突っ込んだ。


 ナジームは、私たちのそのやり取りを見て笑った。



「ふむ。そこまで言ってくれるなら、お言葉にあまえてしまおうかな。それじゃあ、本当に俺の仕事を手伝ってくれるかい?」



 私は、「任せて!」と言って、ナジームの腕に飛びついた。これで恩返しができると思って、嬉しくなってしかたがなかった。ナジームは、微笑んでそんな私の頭を優しく撫でてくれた。


 早速、ナジームの仕事を手伝う事になった。



「じゃあ、これからクルックピーを捕獲しに行くから。本当に君達に頼んでもいいんだよな? クルックピーの捕獲は大変だし、危険だぞ」



 クルックピー? なにそれ? 聞いたことがないけど…………捕獲って言うからには、きっと生き物だよね。


 ルシエルが、私の肩を叩く。



「オレも昨日まで知らなかった生き物だったから、アレなんだけど。あれだよ、あれ――――」



 ルシエルが、そう言って指を指した。その先には、昨日ルシエルがテンションマックスで、跨って走り回っていた大きな鳥がいた。長い足と首。フサフサした羽に、クリクリっとした目。やだ! こっち見ている。可愛い!

 

 ナジームが説明し始めた。



「このガンロック王国に生息している鳥で、正式名称は、クルックピー。別名は、ロッケトバードと呼ばれている。主な用途は、馬の代わりにに移動手段としたり、俺のように行商人が荷を運んだりするのに使われている。あとそうだな……そう言えば、君らが向かうカッサスの街じゃ、レース用のクルックピーもいるぞ。高値で取引されて需要もあるから、俺はそれを何羽か捕まえて売りたいと思っているんだ」


「レ……レースだってええええ!!!!」



 ルシエルは、レースと聞いて身体を乗り出した。大興奮している。ヤバい。ルシエル、あなたまさかレースに出るとかとか言い出さないよね。



「スゲーー、スゲーー!! 聞いたか! 聞いただろー? アテナ、ルキア! 凄いなー。レース見てみたいなー」


「やーめーてー! アテナーー! 助けて下さいー!!」



 ルシエルは、ハッスルしすぎて、両手でルキアを持ち上げて、そのままその場でくるくると回っている。私は、ナジームに仕事の説明の続きを求めた。



「解ったわ! クルックピーの捕獲、私達も是非手伝いたい。それで、そのクルックピーは、何処に生息しているの?」


「ここから少し東に行った所に、小さなオアシスがある。この荒野の、オアシスには色々な者が集まる。なぜなら、水があるからだ」


「なるほど」


「集まるのは、旅人、行商、盗賊、動物に魔物。勿論、クルックピーの群れがいる可能性もある」


「じゃあ、これからそこへ行って、クルックピーを捕獲するって訳ね」


「俺は他の行商人や冒険者から、今の時期、そこでクルックピーの群れをよく見ると情報を得ている。でも、確証がある訳ではないからな。無駄足になるかもしれない。だから話を聞いてみて、やはり手伝えないというのなら、それでもいいよ」



 私達は、気合を入れてこう言った。



「任せてくださいっ!!」



 ワンッ!!



 カルビも返事した。ナジームは、ニコリとして「ありがとう」と言った。


 早速荷物をまとめると、そのクルックピーの群れがいるかもしれないと言うオアシスを目指した。




 

 

 ――――――キャンプしていた場所から東の方へ、二時間程歩いた所でオアシスが見えた。ナジームが言ったオアシスだ。



 ワンワンッ!



 先に行こうとするカルビ。ルキアが、それを阻んでカルビを抱き上げた。もし、クルックピーがいたら、カルビを見て逃げ出す恐れがあるからだ。カルビは一応魔物だしね、気を付けないと。


 カルビを抱きかかえたまま、ルキアが聞いてきた。



「どうですか? クルックピーは、いますか?」


「そうねえ――――もう少し、近づかないと見えないわね。ルシエル? なにか見える?」



 そう言うとルシエルは、付近の大きな岩に飛び乗った。軽やかにヒョイヒヨイヒョイと、大きな岩の天辺まで登る。見渡して、ルシエルが叫んだ。



「なんかは、いるぞ!  あっ! クルックピーだ! あれはクルックピーの群れだぞ!! オアシスに集まって水でも飲んでいるんだろうな」


「ちょちょ……ちょっと待って!! ルシエル! クルックピーが逃げたらどうするのよ!! ちゃんと聞こえているから、もっとボリュームを下げて言ってよ」



 やった!! これで、何匹か捕獲すればナジームに恩返しができる。ナジームと顔を見合わせた。



「情報通りだ。良かった。しかし、まだこれからあの鳥を捕獲しなくてはいけない」


「解った。これでも一応私たち、冒険者だから。任せて! こういう事には、慣れっこだから」


「心強いな、ありがとう」


「それで、どうやってあの鳥を捕獲するの?」



 ナジームは、「そうだ。肝心な事だった」っと言わんばかりに、人差し指を立てて見せた後、ピッチ―の背に乗せている荷から、何本ものロープを取り出した。



「それって…………」


「ああ。投げ縄だ。あいつらの首にこれを引っかけて捕獲する」



 まあ、この鳥の形状からして捕獲すると言ったら、それかなーってある程度予想はしていたんだけどね。ルシエルが早速、ロープ手を手に取りせっせと投げ縄を作りだす。



「フッフッフ! これは、面白くなってきたな! エルフの里時代に、よく投げ縄を使って鹿を捕まえたよ。走って逃げる鹿を追いかけて、投げ縄でこう……やあ! ってな。懐かしいなあーー。思い出したよ」



 おいおい。森の守護者とか知恵者と呼ばれるエルフが、森で投げ縄振り回しながら鹿を捕まえようと走り回っているってどんなんなのよ…………思わす想像してしまった。


 早速、渡されたロープで投げ縄を作って頭上でくるくると回してみせるルシエル。そんなやる気満々のエルフを横目に、私はもっとこう効果的な捕獲方法はないかなと頭を巡らせていた。








――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇野生のクルックピー 種別:魔物

別名をロケットバードと呼ばれる、超足の速いクルックピーを掴まれるのは容易ではない。コツと熟練した経験が必要。ガンロック王国では馬のように移動手段や荷運びとしても活躍できるクルックピーは、人気の商品だ。


〇オアシス 

荒野が広がるガンロック王国では、砂漠と同様にオアシスが存在する。大きさは大小さまざまだが、日中高温になる荒野が広がるこの国では、オアシスはとても重要な場所で旅人だけでなく動物や魔物、盗賊から行商人に至るまで色々なものたちが集まる場所。クルックピーも例外ではない。


〇行商人 

旅をしながら商品の取引をしている商人。村や街で店舗経営している商人と違って、ちょっと変わったものや掘り出し物を売っている可能性もある。例えばオリハルコンなど非常に価値のある鉱石など一般的な市場には出回ることが少ないが、行商人が持っている場合もある。売買価格も一般流通基準には乗っ取ってはいるものの、ノリや勢いで決めてしまう商人も多くいるので、そこは取引してみると面白い。ガンロック王国では、厳しい大地が続き街と街の移動も困難で危険な為、この国では行商人という商売は意外と儲かるのだそうだ。



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